アラサーの俺が死神の手によって高校生に戻った!?死ぬ運命を変えるために青春するしかないらしい

長月紅葉

さぁ、青春を始めよう

生きるために過去に戻ろう

第1話 はあぁぁ、今回の死人は面倒くさいな

 俺の名前は白倉夏輝しらくらなつき。つい最近アラサーになったごく普通のサラリーマンだ。今日もいつのように仕事をしてきた。

 生きていて困っていることは2つだけある。

 1つ目は会社がブラック企業と言われてもおかしくないくらいの労働環境になっていることだ。今日も休日出勤で残業代はもちろんなし。労基署に突入されたらどうするつもりなんだろうか。

 2つ目が年齢=彼女なし歴のことだ。年齢的にSNSで同級生の結婚報告や出産報告を見ることが多くなった。見るたびに虚しくなる。最近母さんには「孫を見ることなく死ぬことになりそうだ」と言われて少し罪悪感があったりもする。

 まぁ、困っていることになるが気にしても意味のないことだ。

 今日のような毎日を繰り返す。明日、明後日、明々後日。死ぬまで繰り返すだろう。

 俺にはお似合いの人生だ。

 何でこんなことになったんだろう。学生の頃は自然と恋人ができて、結婚ができて、子供ができて、幸せに生きるものだと思っていた。それは幻想だったことを思い知らされている。

 さて、横断歩道を渡ろう。もちろん信号は青だ。赤で渡るような自殺行為はするわけない。こんな人生でも死ぬのは嫌だからな。


「ぐへぇ!!!」


 最初に感じたのは大きな衝撃だった。次は宙を舞う感覚。最後には地面に激突したようだった。視界に入ったのはボンネットがへこんでいる車だった。

 なんだこれは。

 俺は車にひかれたのか。

 体が動かない。

 急に眠くなる。

 目が閉じていく。

 なんか悲鳴がうるさいな。

 静かにしてくれよ。

 これじゃ寝れないじゃないか。

 やがて意識は薄れていった。


「お……な……い!」


 何かが聞こえる。


「おき……い!!」


 女性の声だ。

 しかし、何を言っているのかは分からない。起こされている時に話しかけられているようだった。まだ意識が覚醒していないことを実感できる。


「いい加減に起きなさい!」

「ぐへっ!」


 わき腹を思いっきり蹴られた。

 痛みを感じて意識が覚醒する。声の主を確認するために起き上がると、目の前にはコスプレのような格好をしている少女がいた。

 腰くらいの長さの髪。俺よりも小さい身長で、ぱっと見150前半くらいだろう。そしてコスプレのような恰好。マントがあるし、漫画とかの貴族が着ている動きやすそうな赤色のドレスを着ている。それに大きな鎌を持っている。

 正直、めちゃくちゃ怪しい人だ。


「え、コスプレイベントでもあるの?」

「第一声がそれなんかい」


 コスプレの怪しい少女は呆れているようだった。その証拠に冷たい視線を感じる。若い子にそんな目で見られるとは思ってもいなかったため、気が引けるものがある。


「えっと、何がどうなってるの?」

「えっあんた直前のこと覚えてないの?」

「直前……?」


 直前ということは意識を覚ます前のことだ。

何があった。会社からいつものように帰っている途中だった。確か青になった信号を渡った時に大きな衝撃を感じて────あっ!車にひかれたんだ。


「車にひかれたってことはどうなったの!!ここ死後の世界なの!?俺死んだの!?詳しく教え……ぐへっ!」

「落ち着きなさい」


 今度はチョップされた。蹴りよりはマシだけど地味に痛い。


「はあぁぁ、今回の死人は面倒くさいな」


 しかもため息をつかれた。

 いや、待てよ。死人?


「ちょっと待って、どういう意味?死人?誰のこと?」

「死人っていったらあんたしかいないでしょ」

「俺か………………えっ…………俺?」

「はい。あんたです」

「ええええええええええええええええええええ!!!!!!!」

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