天川 悠人の休日


 ……気まずい


 待ち合わせ場所の直ぐ近くの公園に俺と桜花は二人で立っていた。


「「……」」


 いやおかしい。


 桜花と二人でいるだけなのに、何だこの空気は。


 茜の提案で三人で遊びにきた筈なのに、今現在 茜はこの場所には居ない。

 俺のスマホには茜からのメッセージで。


『ごめんねハル君。 ちょっと用事ができちゃったからわたしは午後から合流するね、それまで桜花ちゃんをしっかりエスコートしてあげて!』


 茜さん…?


 桜花にも似たようなメッセージが届いていたらしく真っ白になっている。




 朝、茜の家に迎えに行ったら


『あ、ごめんねハル君。 もうちょっと準備に時間がかかりそうだから、先に行っててくれる?」


 普段、俺が来る前には完璧に準備してる茜にしては珍しい。


「ん…? 大丈夫だ待ってるから」



「……先に行っててくれる?」


「あ、はい」


 また茜の発作が…一体何を企んでるんだ…。


 で


 現地に着くとまだ待ち合わせ時間の30分前なのに、既に二人のチャラそうなのにナンパされている桜花を発見した。


 来るの早くない? というブーメランを投げつつ桜花の方へ走る。


「しつこいですね。 今日は友達と遊びに行く約束をしているのです。 何度誘われても無理です」


「待ち合わせってお友達でしょ? お友達も君みたいに可愛いの? なら俺達とも遊ぼうよ~、絶対そっちのが楽しいって! 」


「だから無理だと…」


「桜花、待たせた」


 俺が声をかけると桜花とチャラ男×2が同時にこっちを向く。


「あ…悠人…」


「んあ?」


「ああ? 何だお前……え、もしかして友達ってコレか? ハハハ、おいおいマジかよ、こんな陰キャが友達ぃ? 」


「いやいや、よくて財布かパシりだろ」


 俺を見て明らかに見下した声をあげるチャラ男AとB


「……あ?」


 それなりに長い付き合いの俺が、聞いたことのないような低い声をだす桜花。


「ひッ…?!」


 チャラ男達が小さな声で悲鳴をあげる。

 お怒りですね間違いない。


「どうした、まだ待ち合わせの時間より大分早いぞ」


 俺はこの状況を無視して桜花に話かける。


「いや、その……楽しみでつい…」


 頬を赤く染めて、恥ずかしそうに微笑む桜花にチャラ男達も口をポカンと開けて見惚れている。


 とてもではないが、さっきの声をだした人間と同一人物と思えない。


「え、あ…そうか」


 何? もっと気のきいた台詞は無いのかって?


 無いぞ(即答)


 コミュニケーション能力って日々の積み重ねだと思うんだ。


「うん…あ、そういえば茜は一緒じゃないのか?」


「ああ、茜なら…」


「お…オイオイ! さっきから何無視してんだよ!」


 意外と早く我に返ったチャラ男A。 因みにBはまだ桜花に熱い視線を送っている。


「五月蝿い黙れ」


「え…」


 底冷えするような声が響く。

 因みに今の俺じゃないぞ。


「お前達いい加減にしろよ? 私は悠人と話をしているんだ。 …折角今日まで楽しみにしていたのに台無しだ」


 チャラ男Aは、その台詞と桜花の雰囲気に気圧されて後ずさる。

 しかし直ぐにこっちを睨みながら、何かを言おうとしたので、チャラ男AとBの頭を掴んで顔を近づける。


「しつこいな。 これ以上何か言うなら……送るぞ?」


 何が、とか何処へ、とかは言わない。 ただ本気で威圧してみる。 これ以上コイツ等に時間を使いたくない。


 二人が静かになったので、ゆっくりと離れると二人共白目を剥いてズボンを濡らしていた。


 Bの方は後半静かだったから悪いことをした気がしなくもない。


「行くぞ桜花」


 ちょっと目立ち始めたので、桜花の手を引いて場所を移動する。



 その際に視界の端にちゃんと居ることを確認する。

 ま、この距離なら何かあってもすぐ動けるな。



 で。


 移動途中で茜にメッセージを送ろうとしたら、先に茜からメッセージが届いていたことに気づいた。


 そして冒頭に繋がる…





 ……いつまでもココに居てもしょうがないか。


「そろそろ行こう」


「あー……いやしかし」


…いや、茜が何を企んでるかは分からないけどこうしていても始まらないだろ」


「いや、まあ…そう…だな」


 桜花はかなり微妙な顔をしている。

 まあ、茜と桃花が何故か見え見えのをしてるのが気になるのだろう。 俺も気になる。



 ………はぁ



 ――――――――――


 最近メインヒロインが奇行に走りすぎている気がしているでしょうが気のせいです。


 気のせいです。








































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