虚
緋乃狐
プロローグ
パニックを起こしていた。息が苦しい。過呼吸なんだか息を止めているのかわからない。ただ眼前の猟奇的な光景を享受し続ける。狭くて暗い小屋の中は生臭い血と吐瀉物の悪臭で満たされている。何度目かの吐き気を催して体を折り曲げると、卸したての白いスニーカーにドス黒い体液が染みているのが見えた。この古い小屋はやや傾きがあるのか、濁流のような血液は足下をすり抜け流れ行く。それが吐瀉物と混じり合うと得体の知れない臓物のように見え、またも吐き気を催す。だがもはや吐けるのは胃液だけのようだ。
瞼は開いているのだろうか、目を凝らしても視界は真っ暗だ。キーーンという次第に高く、小さくなる音を聴きながら、それでも足元の地獄には横たわるまいとする最後の抵抗、かろうじて壁にもたれかかる。
乱暴なノイズ混じりの意識の中で、フラッシュバックするのは親友との思い出。あぁ、以前にもこんなことがあったなぁ。
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