第33話 誰が一番辛いのか?
第33話
陽side
私は怖くなった。
私は「貴方に何が
でも、無理だった。
私を落ち着かせようと肩を掴んできた彼の目は真っ黒に染まっていた。
今にも怒りや悲しみが吹き出しそうな顔だった。
巧望は一体、何を抱えて…
確か、お母さんは形式上だと元カレとか言ってたけど、何か関係あるの?
「よく聞け、陽。それに、陽葵も始めるぞ。」
何を始めるかは
唯、一つだけ
…もう逃げられないという事だった。
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巧望=人識side
と、格好つけて言った物の何を話すとするか…
まず、置かれてる現状を話すか…
「陽、今の状況をよく解ってるか?」
「…ううん、お母さんが急に離婚した原因が記憶喪失だって、今知ったばかりだし……。ずっと、事故に遭いかけたショックだと思ってた………」
「あながち間違ってないのが酷い。なぁ、陽葵?」
「…そうだね。陽ちゃ…陽、私はね。昔にも事故に巻き込まれた事があるの。そこに居るひーくん、巧望くんに庇われる形で。」
「えっ…」
「だが、そこで不幸な事が起こった。その時のショックなのか、それとも別の原因があったのか、陽葵は今と同じ様に記憶喪失になった。」
「後の展開は何となく解るよな?」と、俺は陽に告げる。
すると、彼女は青ざめながら…
「巧望くんとじゃなく、お父さんとお母さんが付き合った…」
「そうだな。俺は知らない人&不審者扱いだ。お前の父親なんか問答無用で殴りかかってきたんだぜ?右頬にストレートだ。痛かったよ、本当に。本来なら別に負ける気はしなかったし、喰らう事も無かった筈なのにな。いやぁ、本当に痛かった。」
ふと、陽葵達の方を見る。
陽葵は自らを抱え、泣きながら震えていた。
陽に至っては、大量の涙を流して、此方に恐怖の表情を浮かべていた。
おいおい、大丈夫か?
それじゃあ、俺がまるでお前達を虐めてるみたいじゃないか。
「もしかして…」
「ん?何だ、陽?」
「もしかして、私達…いや私を構うのは復讐の為なの?私を一体、どうする気…」
成程、そう解釈しちゃったか…
全く、陽葵と違って鋭いと思ったが、やはり鈍感な所は似ているらしい。
俺は少しずつ、少しずつ彼女へ近付いていく。
彼女は後退りするが、直ぐに壁にぶち当たる。
「いやっ、やめて!」
「はぁ、バカだなお前…」
「えっ…」
俺は思いっきり彼女を抱き締め、頭を撫でてやる。
泣いてる奴を宥めるのはこれが一番良い。
これは陽葵や真宵、暦、雫で実証済だ。
「大丈夫、俺はお前に何もしないよ…」
「何で、何で……」
「だって、これは俺達の問題だ。お前達は唯それに巻き込まれただけの話だからな。」
だから、お前は気にするな。
「だから、安心しろ。お前は今お前がやるべき事をやれば良い。」
「やるべき…事……?」
「泣くんだ。誰かの事を考えなくて良い。自分の事だけを考えて泣け。今此処で一番辛いのは…」
…お前自身なんだから。
続く
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