第31話 久しぶりの対面

第31話


電車に揺られ、俺の地元へ辿り着く。


そして、俺と陽…だったか?


二人は田舎道を並んで歩いていた。


「此処、お母さんの地元じゃない。」

「何だ、知ってたのか…」

「勿論よ、何度も来てお婆ちゃんに可愛がって貰ったし…」

「そうか…」


まだ、健在なんだな元お義母さん…


元お義父さんはどうなんだろう?


いや、止めておこう。


あんま深堀したらダメージを喰らいそうだな…


「ねぇ、えっと…たーくんだっけ?」

「止めてくれ、巧望で良い。」

「…解ったわ、巧望くん。何で、そんなに私達…特に私を気にかけるの?」

「…それは後で一緒に話すつもりなんだが、しいて言うならまぁ…」

「しいて言うなら?」

「単純にお前達(主に陽)がほっておけないだけだよ。」

「何それ、意味不過ぎるよ…」

「ははっ、だろうな。」


まぁ、俺にとっては有り得たifなのだ。


それに元からこっそりと元お母さん達を通じて可愛がろうとは思ってたからな!


前世はその前に死んだからな…


ふふ、色々と終わったら可愛がり倒してやるから覚悟してろよ?


何しようかな?


好きな服でも買ってやるか?食べ物も良いな。今時の子は人形とか喜ぶのだろうか?


楽しみだなぁ…


「何か気持ち悪いよ…」

「ああ、すまん。ちょっと幸せな妄想してた…」

「本当に大丈夫なの、貴方…」

「そうだな、多分俺はとっくの昔に大丈夫じゃなくなってるかもな。」

「えっ、それって…」


陽葵と訣別した時から、俺は何かズレてしまっている様な気はするのだ。


それが悪い事なのか、それとも良い事なのか…


…その答えは未だに見つからないままだ。


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数分間歩き続け、やっと目的地に辿り着く。


「…此所にお母さんが?」

「そうだ、ちょっと待ってろ。」


俺はチャイムを押し、反応を待つ。


少し待つと…


『大丈夫だよ、ひーくん。』


と、返ってくる。


そうか、覚悟は決めたんだな…


なら…


「行くぞ、陽。」

「う、うん…」


陽は少し緊張した感じで、俺に着いてくる。


まぁ、そうだろうな。


母親とはいえ、急に離婚して離れ離れになった存在なのだ。


緊張も戸惑うのも無理はないだろう。


それに…


「陽…」

「何、巧望くん?」

「此処から先は、お前にとって非情な現実が待ってるかもしれない。引き返すなら今の内だ。それでもお前は…」


「陽葵に会うか?」と、俺は陽に問う。


その問いに彼女は戸惑いながらも…


「会う。私は知りたい!今、お母さんに何が起きてるのかを!そして、貴方とお母さんがどんな関係なのかも!」


成程、俺は無駄な問をしたらしい。


「じゃあ、行くぞ。」

「うん!」


扉を開け、中へと入る。


其処には正座して待っている陽葵が居て…


「ごめんなさい、久しぶりになるかな。えっと…陽ちゃん。」


続く

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