第18話 冬の国国王様

風月が言っていた通り、一瞬で冬の国国王様の元に辿り着いた。


弓月君が可愛らしいので、ゆっくりと国王様への心配は薄れていったので来てくれた意味は大いにあった。


国王様は高級なガラス細工の椅子に鎮座して、こちらを見下ろしていた。


私が頭を下げて

「夜に申し訳ございません。春の国より参りました月雫と申します。これから冬の国にある白露の城に越してきますので、何かとよろしくお願い致します。」

と春の国より授かった習慣で言った。


「えっと頭を上げて。冬の国では春の国より格式が低い。だからそんなことしなくて良いよ。」

とニコニコしながら国王さまが仰った。


冬の国の国王様は3年前に会ったことがある。

しかし代替わりされたらしい。

冬の国の国王様は大体若い方でいらっしゃる。体力仕事があるため、体力が低下したら冬の国の王には限界があると父上に聞いた。

例にも漏れず国王様は20代であることはほぼ間違えない。いやもしかしたら10代かも知れない。

ニコニコ優しそうな雰囲気のいい顔だ。

銀髪にアクア色の瞳をしている。前の国王様にそっくりだ。


聞いた話では冬の国では元国王様が国王を辞めても仕事から離れないらしい。

知識を使い色んな仕事に振り分けられる。

そもそも国民的に死ぬまで役割が無くならないと言われている。

それにしても以前に増して穏やかな人になったな。


「風月おかえり。十分と短い旅であったね。」

風月に優しそうに言った。

「何も言わず飛び出てしまい申し訳ございません。春の国の国王様の命により、月雫様をお迎いしていました。」


風月は気まずそうに言った。

父上の命というのは本当かしら。それとも嘘か。


「私は構わないけど、次からは気をつけなさい。」


と相変わらず優しくお叱りしていた。

国に報告せずに旅に出るとは、この人凄いな。


「キリは初めましてかな?」

「はい。月雫様の移住にお供することになりました。月雫様専属馬車士のキリと申します。」


月雫様専属って知らない情報だな。

余計なことは言わない方がいい気がする。


「仕事に困ったら何時でも相談してね。」

と微笑み返した。


「月雫とは久しいね。覚えているかい?春の国の城の中で何度かあったのだけど。君の父上にはよくお世話になっていてね。」


見覚えのない国王様は私に言った。

私が答えるより先に風月が答えた。


「陛下月雫様は移動により大変お疲れになっているようです。」


「はは、無神経だったかな。それに殆ど顔を合わせてないしね。月雫もすまないね。」

「いいえ。」と私は答えた。


「これからは冬の国の国民であるのだから、困った事が有れば直ぐに城へおいで。建前とかではないからね。」


と優しく申して、私達は城を後にした。

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