ついてくる女③
「あれは確か……同僚と飲みに行った日だったと思います」
ベロンベロンに酔っ払い、ふらふらの足取りで帰宅した恵子は、自分の部屋のドアノブに何かがかかっていることに気づいた。
それはただのスーパーの袋で、中身は空っぽだった。
「悪戯かなと思って捨てましたよ。それか、風で飛んできて引っかかったのかなあと」
部屋に入り、冷水を飲んで酔いを覚ました恵子は、ふとある事に気づいた。
「カレンダーが、新しい月になっていたんです。私ってズボラだから前の月のまま放置しちゃうことがあって、あーそろそろ変えなきゃとは思っていたんですけど」
自分で剥がした記憶はない。
が、確かに新しい月になっている。
前月のカレンダーは、丁寧に折り畳まれた状態でゴミ箱に捨てられていた。
「やっぱりおかしい。だって私、カレンダー捨てる時はぐしゃぐしゃに丸めるんですよ。そんな丁寧に折り畳んだりしないですから」
家に来たことのある友達の仕業だろうか?
しかし、ゴミ箱のゴミは一応毎日まとめて大きなゴミ袋に移動させている。
となるとゴミ箱に入っているゴミは、今日中に捨てたものでないと辻褄が合わないのだ。
「この日からですね、変なことが気になるようになったのは」
窓の鍵がいつの間にか開いている。
玄関に置いてあった靴が下駄箱にしまわれている。
傘立ての傘が一本なくなっている。
まだ捨てていなかったはずのトイレットペーパーの芯がごっそりなくなっている。
恵子は自分の部屋にいるのが恐ろしくなり、会社の友達の家を転々としたり、ネットカフェや漫画喫茶に泊まるようになった。
しかしそんな生活が長続きするはずもなく、体調を崩した恵子はやむを得ず自分のアパートに戻った。
「とりあえず、引っ越しのことは考えてました。親に相談したら絶対、だからマンションにしとけと言ったんだと怒られると思ったので、親には何も言ってません」
ベッドに潜り、ぼーっと考える。
この部屋に誰かが入ってきている。確実に。
しかし誰が、何のために?
どうして私なの?
どうやって入ってきているの?
考えているうちに、深い眠りについてしまった。
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