腹黒女は泣いて笑った

猫の集会

腹黒い?

 私は、とても性格が悪い。

 

 自分がよくわかっている。

 

 でも、周りの人は私がそんな奴だとは思っ

 

 ていないだろう。

 

 なぜならいつもニコニコしているから。

 

 私の名前は、ユキ。

 

 小学校の頃、気の強い女の子が私に絡んで

 

 きた。

 

 私のカバンは、大きいからじゃまだと。

 

 自分のカバンがあんたのせいで隠れてしま 

 

 う。

 

 だから、カバン掛けからどかせっていつも 

 

 床に落とされていた。

 

 私より、嫌な女がいた?

 

 ま、私はあまり人に強く言えない人間。

 

 だから、心でぶつぶつ騒ぐのかもしれない。

 

 私は、カバンの両端を折り畳むようにして

 

 カバン掛けに掛けた。

 

 でも、やっぱり戻ってしまう。

 

 お友達が

 

「カバン大きいのは、ちょっとあれだけどで

 

 も買っちゃったし仕方ないよね。床に落と

 

 すなんて酷すぎる。」

 

 とかばってくれた。

 

「う ん。次から小さいバック買う。ちょっ

 

 と、大きすぎたかも。」

 

 ニコッ。

 

 お友達にそう言って笑顔を見せた。

 

 カバンが大きいってバックを落とす女の子

 

 にも

 

「ごめんね。いつも迷惑かけて。」

 

 といい、ちょっと申し訳ない顔をした。

 

 ですが‼︎

 

 心の中では、

 

 きったねーから落とすなよ。うざい女だな

 

 と思っていた。

 

 ある日、私のバックがなくなっていた。

 

 クラスで問題になった。

 

 きっと、カバン掛けに掛けてなかったから

 

 どっかに蹴散らされて迷子になったのだろ 

 

 う。

 

 クラスの女の子が言った。

 

「ある女の子がユキちゃんのカバンが大きい

 

 からっていつも床においていました。」

 

 と発言した。

 

 それでバックがなくなったんだとみんなが

 

 口を揃えて言った。

 

 その女の子は、泣き出した。

 

 私は、心の中で

 

 フッ、ばかめ。今まで私をいじめてたから

 

 バチが当たったんだよ。ざまぁーみろ‼︎と 

 

 思った。

 

 それから、数時間後バックは隣のクラスの

 

 廊下で発見された。

 

 あーあー、もう見つかったのか。

 

 残念。

 

 もっとあの女が苦しむの見たかったなぁ。

 

「見つかってよかったね。」

 

 友達に言われて私は、

 

 ニッコリしながら

 

「うん!」と答えた。

 

 ニコニコしながらも、腹の中は真っ黒だ。

 

 私をいじめてなくても、道路を歩いていて、

 

 転びそうな人をみて転べ。

 

 そして、どうなるかたのしみだなんて思う。

 

 人の不幸が大好きだ。

 

 心配そうな顔をして心で笑う。

 

 そうやってずっと生きてきた。

 

 中学になった私は、腹黒のまま大きくなっ

 

 た。

 

 勉強は、嫌い。

 

 特に国語が嫌いだった。

 

 なぜかって、国語の先生学年主任で凄く厳

 

 しいの。

 

 年配の女性なんだけどね。

 

 ある日、その先生が言った。

 

「だいたい、嫌いだなって思っている人は、

 

 相手も自分の事をよく思っていない事が多

 

 いです。なぜなら、態度や雰囲気でだいた

 

 い伝わってしまいますから。」

 

 と。

 

 その言葉にハッとして顔を上げて先生を見

 

 た。

 

 思いっきりこっちを見ていた。

 

 もしかして、今の話私に言ってる?

 

 慌てて目を逸らした。

 

 その後も、先生は話を続けた。

 

「ですから、私は出来るだけ苦手な人にほど

 

 笑顔を向けるようにしています。」と。

 

 ふーん。

 

 そうですか。

 

 それから、数年が経ち私は色々な人に出会

 

 った。

 

 結構、同じ本を読む女性がいて、その人を

 

 気が合うし、いい人だなと思っていた。

 

 私とも、仲良くしてくれている。

 

 だけど、なんだかその日イライラしていて、

 

 その人が仕事で褒められたって喜んでいた

 

 のに、でも基本仕事できてないよね。

 

 なんて言ってしまった。

 

 なんであんな事言ってしまったのか…

 

 心でいつも嫌なこと思っていたからつい声

 

 に出してしまったのだろうか。

 

 後悔している。

 

 すごく…

 

 それからしばらくして、私は、その会社を

 

 辞めてしまったので謝ってすらいない。

 

 思い出すと、心がズーンと重くなる。

 

 別の会社に入った。

 

 仕事仲間にこの人私の事嫌いだろうなって

 

 思う女性が一人いた。

 

 その人は、あまり挨拶すらしてくれない。

 

 ま、別にいいけど。

 

 そう思いながらもなんかモヤモヤ。

 

 モヤモヤするものの、あまり気にしないよ

 

 うにしている。

 

 そもそも、私はいちいち人にムカついたり、

 

 怒ったりして揉めるのが嫌いだ。

 

 なぜなら、一度火がつくと自分を止められ

 

 る自信がないからだ。

 

 ヒートアップしすぎて、何か大事になった

 

 ら、なんて思うとばからしすぎる。

 

 嫌いな奴の為に、大事な時間を潰されたく

 

 ない。

 

 だから、はじめから相手にしない。

 

 それが一番いいと思っている。

 

 そんな毎日を送っていたある日、

 

 私を嫌っている女性が仕事でミスをした。

 

 だから、そこはまた腹ん中で笑えばよかっ

 

 たのだけれど、なぜか中学の先生の話を聞

 

 いてから少し自分が変わりつつあった⁉︎

 

 とっさに、その人のミスをカバーしてあげ

 

 た。

 

 その女性は、え⁉︎なんであんたがこの私の

 

 フォローを⁈みたいな顔を一瞬した。

 

 それから、仕事が落ち着きその人が私にお

 

 礼を言ってきた。

 

 それ以降、普通に接してくれるようになっ

 

 た。

 

 別にどうでもいいと思っていたけど、やっ

 

 ぱり普通に接してくれる方が心は、穏やか

 

 だ。

 

 なんだか、優越感に浸れるようなきもする。

 

 接客業をする事になって、私はよりいろん

 

 な人と出会った。

 

 表情が少し違うだけで相手の態度がまるで

 

 かわる。

 

 一言申し訳ないと言うのと言わないのでも

 

 また全然お客さんの怒りも変わる。

 

 人間は、わかりやすいのかもしれない。

 

 そんな、ある日

 

 酷いことを言ってしまったあの人が偶然、

 

 デパートの出口から出ようとしていた。

 

 私は、お店に入る所だったから、思いっき

 

 り鉢合わせ。

 

 その人に無視されて当然の私。

 

 なのにその人は、

 

 笑顔で

 

「あれー、久しぶり。」

 

 と話かけてくれた。

 

 なんて器の大きい方なんだろう。

 

 向こうの笑顔につられて私も笑顔で

 

「あ、お久しぶりです。」

 

 と答えた。

 

 お互い家族といたので挨拶程度だったが、

 

 あの人に会ってしかも笑顔で挨拶をしてく

 

 れて、私は少しだけ救われた気がした。

 

 傷つけておいて勝手に救われるなんて虫の

 

 いいはなしかもしれない。

 

 でも、一人の態度で私の心は動かされる。

 

 だから、これからは腹黒いことなんか考え

 

 てないで、少しでも自分と同じ空間で同じ

 

 時間を過ごした相手には、幸せな気持ちに

 

 なってもらいたい。

 

 だから、困った人がいたら声をかけてあげ

 

 たいし、人と関わる時は極力嘘じゃない、

 

 本当の笑顔で人と接していこうと思う。

 

 そうして数年がたった。

 

 今でも、笑顔を絶やさない。

 

 自然と向こうも笑顔になる。

 

 少しでも多くのひとと優しい時間が共有で

 

 きたらいいものだ。

 

 あの人のように素晴らしい人間に。



 おしまい

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