訝るといぶりがっこって似てない?
「ドクペといえば、スロのシュタゲ打ちたかったなあ……」
「あれ、すげえつまんかったぞ」とジローちゃん。「パチのほうはなかなか面白かったけど、スロはなあ」
「違うんですよ!」
輪駆は力説した。
「一度スロで出たんですけど、あれと違うのが違うメーカーから出るとかいう噂があって」
「メーカーってどこよ?」
「いや、そこまではわからないんですけど。山佐かユニバみたいな噂が」
「おお、山佐か。山佐といえば俺が初めて打ったスロはニューパルだったなあ。あれ、音が良くてさあ。ツレは3号機ばっか打ってたし、勧めてきたりもしたんだけど、ニューパルばっか打ってたわ」
「あっはっは。積もる話もあるだろうが、腹ごしらえをしたまえ!」
サーク第二王子が例のバスケットから出したであろうサンドイッチ様の食べ物を差し出す。おう、とジローちゃんが受け取り、一口パクッと――
「旨ェな、これ!」
はっはっは、とサーク。「うんうん、貴公らにこちらの食事は少し物足りないだろうと思って、特別に料理長に作らせた。気にいってもらえたなら何よりだ」
輪駆も受け取って、食べる。
「――!」
美味い。いや、旨い。
ローストビーフサンドかパストラミサンドか。ああいった感じの、薄切りの肉のサンドイッチで、ピリッとした辛味が効いている。夢中で食べながら、なるほど、こちらの世界の食事は薄味なだけではなく、いわゆる香辛料の類いに欠けているのだ、と気づく。辛子やわさびとは違う、少し青臭いような、けれど舌を刺すような辛味。
見ると、ぽん太もガツガツとサンドイッチを食べていた。
「なんか酒飲みたくなってくるなあ」
ジローちゃんがしみじみという。
「あるよ」
サークがバスケットから取り出す。
銀色の缶――
「おお、スーパードライ!」
ジローちゃんの目がキラキラと輝く。
「俺もさあ、ずっと黒ラベル一辺倒だったし、スーパードライ苦手だったんだけども、暑い夏の日にキンキンに冷えたのを喉で飲んだら、すっかり虜でさあ。そうなると飯と一緒にいくのはやっぱスーパードライってなっちゃうんだよなあ。わかってるよ、おまえさんわかってるよ!」
「あ、俺も酒欲しい」
と、ぽん太。
「氷結の無糖レモンある?」
「あるよ。度数は?」
「やっぱ7でしょ。あれ、もしかして9度もあったりする?」
「あるが、私のお勧めも7度だな。ほら」
ヒョイと取り出して、サークがぽん太に手渡す。プシッとリングプルを押し込み、目があったジローちゃんと乾杯。
喉をごくりと鳴らして、輪駆がいう。「もしかしてストゼロの無糖ドライは」
「飲む福祉はちょっと――」
顔を曇らせたサークに、いやいやいやさっき無糖レモン9度あるとかいってたよね⁉ とツッコミを入れようとしたとき、モグラの声が届いた。
(
「!」
サークが王様によく似た顔に満面の笑みを浮かべて、バスケットから取り出した缶を差し出していた。
「サンガリアのみっくちゅじゅーちゅさわーだ!」
「わーい、みっくちゅじゅーちゅ。輪駆、みっくちゅじゅーちゅ大好き」
受け取ってから、心に響いたモグラの声を反芻する。
目の前の愛嬌のある顔と隆々とした筋肉を持つ男を見ながら、俺は本当にここにいていいのだろうか、と輪駆は思った。
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