17.運営・後 ゠ 統治と性質の話
そして少女の、国の運営についての説明はまだ続く。
続くはいいが、その説明は例によって、例によった言葉から始まった。
「そうやって
「ん? いや、いや。そう聞けばまあ、本当に単純な事のように、聴こえるがな。しかし何と言っても、ひとつの国だろう? 実際にはもっと、複雑になりはしないだろうか。いろいろと難しい問題を、どこの国でも抱えているものと思うんだが」
「そんな事は有りませんよ。手始めには最小の状態で、考えてみればいいんです」
「最小の、状態?」
「はい。それが例えば、ものの五人くらいで構成された国だったとしたら、どうでしょう」
「それはまた、随分と小さな国だな。国というより家のような規模だが、それなら
「人を
「そうか」
「その個々の役割ですけど、
「ふむ。まあそれで、不足は無さそうだな」
「役割は兼任でも交代制でもいいですけど、労力が
「ああ。こう洗ってみれば
「それなら、ですよ? じゃあもう一人ここに加わって、六人の国になったとしたら、どうなりますか?」
「……」
少女が何を言いたいのか、私は察することが
「ふむ、そういう事か」
「
「ああ。要は五役だけでも、国としての基本的な機能はすでに
「当たりです。五人を治めれるんなら、六人も同じ。六人が治めれたら、八人も十人も同じ。その調子で百にも千にも、万にまで膨れあがってもその延長線上でしかない。ってわけですね」
「つまり物量が
「だから
「とすると、高度な判断がどうのと
「うーんまあ、外交だけは、別々の意思同士での腹の探り合いになったりしますから、そういう一面も有るでしょうね」
「それもそうか。しかし、それ以外だと?」
「有りませんね。有ったとしたらそんなの、本分からはずれて利潤を
「ああ。本分からはずれた利潤、なあ」
「何かの
「なるほど、な。ただまあ、そういう悪意から逃げきるというのも、実際には難しい話ではないだろうか」
「そうですね、現実的に無理でしょう。でもさっき、組織作りは人の
「ん、ああ。病気に
「はい。人物を
「そうだな。
「ただまあ、複雑じゃあ
「む。それはもしかして、研究がそのまま統治の一環になる、という事か?」
「そうなんです。それに、問題の都度に協力をして
「ほう。それはお
「それに国力が高まってれば、軍事にだって
「なるほど。あれだ、国の
「ええ。生き物って元来、単独でどうにか生きるものですけど、それじゃあ
「ふむ、話は
「はい。国力が低迷してるのって大体は、研究に
「いや、
「ふふ」
そういう事であれば、この
あれらも行政文書や軍事機密と言うよりは、研究のための資料や論文あたりが大半なのかもしれない。
「それでも、ある程度くらいはまず
「どうでしょう。
「ああ、考えに入ると一見、
「ですね。ところでその、人の集団に動いてもらおうって場合ですけど。これがまたちょっと、不思議な性質が有ったりしまして」
「ほう、何だ?」
「集団のうち一割くらいがですね、
「ほう、そんな事が有るのか。それは本当に不思議なものだな。というかお前は、本当によく観察をするなあ」
「ふふ。どうしてそうなるかは、
「いや、不思議と
「あ、きっとそれですね。まあこれって、人が集まると
「なにか性質が有るのであれば、それに合わない型を押しつけるほうが、むしろ
「ですね。それとほかにも、もう一つ。人って必要な労力や期間を、どうも二割か三割くらい、少なく見込んじゃう傾向も有るみたいなんですよ。そういう所を踏まえたうえで予算してかないと、計画ってものは間違いなく倒れますね」
「それか、そういう事か。
「あら。
「いや、これくらいはな」
「いいですね。そんな感じでまあ、すごく当たり前な話ではあるんですけど、
「ああそれは本当に、そのとおりだ。全員が同じことを
「ええ。ただその、性質って物はちょっと、見つけるか見落とすかって話ですから。
「ふむ。いや、本当にいろいろ難しい、というか面倒なものだ」
「ふふ。そうですね」
いや、そうだ。
きっと私は、この少女と話をするのが、
場を変わらず、
その柔らかな光を目に感じつつ、その芳香を鼻に感じつつ。
悪い時間では
そんな事をなんとなく、思った。
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