月並みな月の裏側

佐久間コウ

星降る夜のこと

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思い浮かべてほしい

星降る夜のことを


地上には透明なしじま

頭上には闇色のとばり

此方こなたから彼方まで

無限遠をどこまでも

どこまでも


何処いずこへと

何処いずこへと目を凝らすまでもなく

その瞳に映る 数多の輝きは

遥かの時を越え

久遠の旅を経て

ようやく 君にまで届いた


そうして編まれた天蓋てんがいの揺り籠で

生まれたばかりの一条の光が

今 一度だけ瞬いて流れた

ここにも そこにも

あそこにも


息つく間もなく

伸ばした指先を駆け抜けていく

それは あまりにも儚い

この星の小さな命にも似て――

けれど それでいて

悠久の輪をめぐる星と星が

幾星霜の再会を果たした 

その証でもある


そんな奇跡のような夜空の下

まさに奇跡が織りなす日々を

君は、生きている













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