第二話
実は須藤は晴海を洗脳して、彼女に殺害させていたのだ。
須藤は晴海にその人間は自分を傷つけたと同情させ、憎しみを持たせ、殺害方法を教え、その通り従って晴海は人を殺した。
あろうもことか死んだ人間は全員、晴海と認識が無い。
須藤は中学の頃、同級生たちに虐められていた。最初は物を隠されただけであったが、無視、水掛け、次第にエスカレートし、主犯格の奴らの前でズボンを下ろされて性的ないじめもされた。
さらに家では母親から罵倒される日々。母親は父親からモラハラを受けていてそのストレスの吐口は全部須藤にいっていたのだ。父親はもちろんその姿を見ても須藤を助けてくれなかった。須藤自身も父親による母のモラハラも見て見ぬ振りをしていた。
家でも居場所がない彼は図書館に入り浸った。
社会人になってから家を出て、須藤は営業マンとなり、図書館で読んでいた本の知識をベースに、会社で成績を上げるために話術、マインドコントロール、心理学などを実践で学んだ。
そして成績も上がり、ようやく自分の居場所が見つかったと思ったが、それを僻む同僚に嫌がらせを受けて、退職に追い込まれた。再び須藤は居場所を失う。
30歳の頃、通い詰めていた居酒屋で自分が誘われていない中学の同窓会が行われていた。
一人孤独に呑んでいた須藤に対して、自分をいじめた同級生たちが何事もなかったかのように話しかけてきたのだ。
あの頃は、いじりやすかったから、ふざけてただけだったからと大笑いする姿。
彼らは仕事にプライベートに充実していて中には結婚をし子供を持っている者もいた。
あの頃に心の傷を負った須藤は同級生たちを見て殺意を覚えた。
しかし、自分が殺してしまったら……自分の人生は終わりだ。その時よぎったのは、父親が母親にモラハラをしている姿であった。
父親が母親を言葉で追い込む姿を、思い出したのだ。
だが誰に頼むのか……昔の恋人に頼んでもよかったが、それでは足がつく。
そんな時にふとドライブをして道に迷った際に通りがかったこの場所で晴海と出会ったのだ。
晴海は景色をただぼーっと眺めている。顔色は悪く、目は虚であった。
「夕日、綺麗ですね」
彼女の腕にはリストカットの跡が。これは、と思い、
「良かったら、話を聞きますよ?」
と誘った。
彼女は助けられ、なおかつ話を聞いてくれた須藤に対して恋心を抱き、彼の言いなりになるのには時間がかからなかった。
「僕が鬼だってすぐバレると思ったけど……」
という須藤。シバはタバコの煙を吐き出した。
「たく、マスコミもさ。あれを「鬼」だって騒ぐからなあ」
と冬月が笑うと須藤も笑う。
「笑うところじゃねぇだろ。……須藤才二」
二人目の被害者は同級生の夫でライターだった。一人目の女性が殺された際に、独自で調べていた。
須藤を割り出し近づいていたが、須藤は口封じのために殺した。
「彼は殺すつもりではなかったが……たまたま同級生の夫だとわかったからねぇ。僕のことを助けてくれた子の……夫だった」
その時に彼が死ぬ間際に書いたのが「才二」→「オニ」に見えたわけで。それで世間は大騒ぎしたのであった。
四人目は須藤の母親。母親が殺されたら容疑者から外されると思ったのであろう。
「……本当の1番の目的はお母さんを殺すことだったんでしょ」
シバがそういうと須藤は黙った。
「ストレートにいじめられた同級生を殺せば良かったのに、何故、関係のない同級生の大切な人を殺してカモフラージュしたんだ。……三人目の子供なんてまだ小学生だったのに」
「あの子の親が僕をいじめたからだ。」
「だからといって何も知らない子供を殺して……最悪だな。本当に鬼だ。お前はあの遺体を見たのか? そしてそのご遺体を見た親、つまりお前の同級生の泣き叫ぶところを見たか?!」
シバが怒りを表した。しかし須藤は笑っている。
「お前に洗脳された彼女は……どんな思いで殺めたんだろうか……あんな小さな子を……」
シバは拳をぎゅっと握り震えている。殴りたいのであろう、しかし殴ってはいけない。と堪えていた。手はかなり震えている。
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