第二話
「でも俺の方が被害者だ」
男は取調室でそう言う。でも……? その言い方に引っ掛かる。まだ抵抗するつもりか。シバは睨みを効かせる。
「マフラー……どうした?」
いきなりマフラーのことを……。
「鑑識に回した」
「ならわかるだろ。あいつが編んだマフラー、俺にプレゼントとして、送ってきた」
恋人のことを思って彼女が編んだものでは無いだろうか、シバはそう思ったのだが。
「マフラーの毛糸、よく見たか?」
シバは茜部に鑑識に連絡を取ってもらう。
「あんな気持ち悪いものをよこしやがって……もう限界だった」
男は頭を抱えた。
「シバさん! 鑑識に問い合わせたら……マフラーに髪の毛が……死んだ女性の髪の毛が一緒に編み込まれていたと……」
あの女の子のか? シバは男を見た。
「何度も警察に相談したんだよ……あいつのしたことを! まだ他にもされてたんだ。跡をつけられたり、無言電話とか!!! なのに警察は相手にしてくれなくて。だから、俺がやるしかなかった……」
他の捜査員がやってきた。男が警察に来て何度か相談していた記録が残ってた。もう5年前から。
男は机に頭を打ちつけ叫び暴れ出した。茜部らが抑える。
「なんてことだ……」
シバはあの女性の髪の毛の長さを思い出した。とても長くて緩やかなパーマを。
その後シバは帆奈と共に女性の家に再び向かい、両親の制止を振り払い彼女の部屋に入る。
「勝手に入らないデェえええええ」
母親の叫び声。そしてシバらは絶句した。
部屋の中には一面、あの男の写真だらけ、机の上には赤い毛糸玉、編み物の棒、編み物の本、失敗したマフラーのいくつか。そのマフラーたちの中にも彼女の髪の毛も編み込まれていた……。
そう、あの女性は男のストーカーであった……。
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