第12話 事件のあらまし9

 茜部とシバは花屋を外から見る。


「シバさん、あの花屋にいるんでしょうか。でも行方不明、連れ去られているのか。捜索願い出した家族も連絡取れてないって」

 シバはうーむと唸る。


「多分今度は死人出るぞ」

「……次はこの花屋で?」

「麻美さんは夫とその親からモラハラを受けていた。市役所にも相手にされず最後に辿り着いたのが闇サイト……マッチングしてしまったのは恋人に暴力を振る男だ。麻美さんの命も危ない」

「てか花屋でドカンて来られたらこの周辺やばいじゃないですか……」

「鈴菜はそれなりに爆弾に関する知識はあるから必要以上に被害は出さないかもな、ほら。今またサイバー班たちが調べた結果、怪我人と闇サイトの書き込みの名前が数人一致してるが書き込みでは『死ね』じゃなくて『痛い目に合わせたい』としか書いてない。書き込みしてる人たちも死ぬよりも痛みを負わせたいだけ、か……殺してほしいとなると罪の意識ができて依頼者自身も苦しむ」


「……なるほど。でも麻美さんは確実に夫と義親を殺してほしいとありますね。だから……忠実に殺す……」

「てか普通の主婦がなぜこの闇サイトに辿り着いたか……おおっ、きたきた」


 サイバー班から逐一連絡が来る。麻美のSNSアカウントが発見され、一部投稿に位置情報がついてありそれをもとに麻美のものと断定された。


 そしてハッキングをしDMの中身を開示したとデータがきた。

「ビンゴ。麻美さんはストレス発散のためSNSに愚痴を書いていた。夫と義理の親たちの。逐一書いている。これは後日証拠になって離婚に有利になるのに、畜生」

「あくまでも麻美さん主観の書き込みですがどう見ても酷いっすね……それをみた鈴菜が麻美さんに三人を消したいかと尋ねて闇サイトに引き摺り込む。で、別人を装って麻美さんが依頼して書き込みに鈴菜が乗っかった……」


 シバはデータを素早く読んでいる。が途中で手が止まった。


「……麻美さん、もうあの男に」

「会ったらもうおしまいっすよ。きっと暴力を」

「なんで麻美さんは辛い思いをしてるのにさらに辛い思いをしなきゃいけないんだよ」


 シバは思い切りハンドルを叩く。茜部が体を抑える。

「なんだよ、茜部」

「……瀧本さんや上の人からはシバさんはこういう類の事件になると執着しやすく情を持ちやすいから気をつけろっ、抑えろって言われてるんです。一旦は落ち着いて……署に戻って」


 シバは茜部の手を振り払った。しかし茜部は元機動隊ともあって力がさらに強い。シバは警察内の剣道の腕前日本一だが茜部も警察内の柔道部では優秀な方である。


「落ち着いてください。今度は死人が出るかもしれないって……言ったのはシバさんですよね?」

「……そうだよ、だけど麻美さんにこれ以上辛い思いをさせてはいけない!」


 全ての力でシバは茜部を突き放して車を出て花屋に向かった。

「シバさん!」

 茜部はシバに追いかける前に本部に連絡しシバの跡を追った。


「……はぁ、なんであんなにも」

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