冬月シバの事件簿(第9回角川文庫キャラクター小説大賞エントリー)
麻木香豆
プロローグ
「終わった……」
1人の男が爆風と共に宙に舞った。
彼の名は冬月シバ。
宙を舞った際に走馬灯が如く記憶が蘇る。
彼の最初の記憶は小学生の頃。低学年の頃か。両親はおらず児童養護施設で数年育ったのちに彼の兄と共にとある里親に引き取られた。
その里親はとても陽気で、彼の人格のほぼ半分は彼らによって作られたような性格であるかもしれない。本当の親の記憶は全くない。
幼馴染のまさ子とともに小学校に毎日通う日々。それから彼女とは何十年も共に過ごすことになるなんて思いもしないだろう。
そしてシバたち兄弟が本当の父親に暴力を受けていていたのを救ってくれたのはとある若い警察官だった。それをシバが聞いてから子供の頃から夢は警察官になる、と決意した。
今こうして生きているのも警察官のおかげ、彼が警察官になった理由はただそれだけである。
シバは何かの映像が頭をよぎった。
「……あなたの取り柄は」
その質問に笑った。そして髪の毛をわしゃわしゃっとさせる。
「取り柄っすか。そうだなぁー……とりあえず生きているってことかな」
そんな彼の半世紀にわたる物語。
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