第89話 『ドラゴンの決意』って重すぎるんですけど!?

 俺達は“ドラゴンの巣”を発って、魔大陸に向かっている。

 ユロレンシア大陸から“ドラゴンの巣”、より“ドラゴンの巣”から魔大陸、の方が近いので割とすぐに魔大陸が見えてきた。


 ただ、ピルムがついて来ている。


「おのれ~! 何でついてくるんじゃ! 撃ち落とすぞ!」

[やっ! やめてください~。ドラゴンの決意なのです。どうかお願いします~!]


 事ある毎にドラゴンの決意って言ってるけど何なんだ?


「さっきから聞いておれば、決意決意……、その『ドラゴンの決意』って何なのじゃ!」

[えっ!? ご存じなかったのですか?]


 ドラゴンの表情については詳しくないが、ピルムが「えっ?」というような顔で聞いてきた。


「知るわけなかろうが! 『ドラゴンの決意』はドラゴンのモノじゃろ! 我らに関係あるまい」

「「うんうん」」

[…………]

「ユウトよ、お主もなんか言え!」


 俺に振るなよ……。


「俺も気になってたんだよ。何だ? 『ドラゴンの決意』って」

[あの……その……ですね、我々ドラゴンが戦闘で完敗した時とか、命を救われたりして恩義を感じる出来事があった時にですね。――――]


 ピルムが言うには、そういった時にその相手を自分が従うに相応しいと判断し、実際に従うと決めた場合、『ドラゴンの決意』が発動するそうだ。


 何を言っているのか解らんが……。


 俺達は、ピルムらドラゴンをいとも簡単に倒した上に、溺れているところを全員助け、治療まで施した。

 だからピルムは、最大限の恩義を感じ『ドラゴンの決意』をしたそうだ。


 で、『ドラゴンの決意』が発動して、その決意を相手が受け入れた場合、決意が叶ったとしてそのドラゴンは1段階強くなれるそうだ。


「叶わなかったら?」

[……生命の終わりを迎えます]

「はっ!?」

[死にます。……死んじゃうんですっ!]


 順調に飛びながら話していたが、自然と止まってしまう。

 そして、俺達4人はみんなピルムを見る。



「「「「……重い!」」」」


「思いっきり重いじゃねえか!」 

「貴様ぁー! そんな大事なこと、なに勝手に決意しとるんじゃーー!」

[だってぇ……皆さん知ってると思ってぇ]


 なんたる行き違い。


「ニア、本当なのか?」


 俺のポケットの中のスマホからニアが現れると、ピルムが驚いた。


[め! 女神ディスティリーニア!]

「ユウトさん、本当です。ドラゴンには本能的に備わっているようです。多くの場合は発動する機会さえ訪れませんが、事実です」


「お姉ちゃん、ピルム死んじゃうの?」

「う、うん」

「かわいそ~」

「う、うん」


「流されるでないぞ、アニカ、アニタ! こ奴はメスじゃぞ?」

「「あ、そっか……」」


 メスだから何だってんだよ?


[あの~、これでも私、ドラゴンで一番のベッピンさんと言われているんです!]

「余計ならん!」

「「うんうん」」

[え~~~]


 ……もし断って死なれても寝覚めが悪いしなぁ、しょうがないな。


「わかったよ、連れていくよ。みんなもいいな?」

「うぬ~、仕方なかろう」

「そうですね」

「いいよ~」


 みんなの同意が取れたところで、ピルムの身体が光りだした。


[わぁ~! 力がみなぎってきました!]


 どうやら本当に1段階上がったようだ。


「どれ、ピルム。《アナライズ》してもいいか?」

[はい、どうぞ]



 名前 : ピルム

 種族 : ハイドラゴン種

 年齢 : 1

 レベル: 〈1〉

 称号 : 決意の成就せしドラゴン

 系統 : 大地

 スキル: S・人化〈1〉 A・大地のいばら〈5〉



「おお! おっ? ハイドラゴン? レベル1?」

「おのれ~! 我が0歳なのに……」


 レベルの事や、ドラゴンとハイドラゴンがどう違うのか、ニアに聞いてみる。


「さきほど『ドラゴンの決意』が叶ったことで、1つ上の存在に成ったようですね。厳密にはダンジョンのモンスターが“成る”のとは意味が違いますけども」

「それで“ハイ”で、レベルも1なのか。でも括弧は?」


「括弧はスキルと同じで上限が10だからですが、ここからの上昇幅は大きくなるでしょう。今までのパワーやスピードを元に更に強くなるという事です」

「ピルム、今までのレベルは?」

[知りません。見てませんでしたから]

「……。ま、いいか。ついでだ、俺達もステータス確認しよう」


 そういや3人のステータスって、こっちに出て来て以来見てないんじゃないか? ひと月くらいか?



 名前 : ユウト ババ

 種族 : 人族

 年齢 : 24

 レベル: 77

 称号 : 世界を渡りし者 英雄

 系統 : 武〈長剣〉 魔〈全〉 製作 商

 スキル: S・聖剣技〈10〉 SS・魔法大全〈9〉

      A・言語理解 A・魔力回復‐大‐ A・使用魔力低減‐大‐ 

      B・探知〈7〉


 名前 : ミケ

 種族 : 白狐

 年齢 : 0

 レベル: 80

 称号 : 世界を渡りし者 異界の神の眷族

 系統 : 武〈拳・爪・獣〉 農 

 スキル: SS・操雷〈10〉 A・言語理解 A・感知〈4〉

      C・火属性魔法〈8〉


 名前 : アニカ クマル

 種族 : 人族

 年齢 : 10

 レベル: 78

 称号 : 世界を渡りし者 

 系統 : 武〈長柄〉 知識 魔〈光〉

 スキル: A・言語理解 A・強靭〈10〉

      C・槍技〈10〉 C・光属性魔法〈10〉

      B・探知〈3〉 C・水属性魔法〈1〉


 名前 : アニタ クマル

 種族 : 人族

 年齢 : 7

 レベル: 79

 称号 : 世界を渡りし者 

 系統 : 武〈短剣・弓〉 農 魔〈無〉

 スキル: A・言語理解 A・感知〈10〉

      C・短剣技〈10〉 C・無属性魔法〈10〉

      C・風属性魔法〈1〉



「なっ!? レベルが超されてる~!」


 確かアニカとアニタはレベル76だったはず……。その高レベルから2つも3つも上げるって、“氾濫”の時に倒しまくったのかな?


「それに別属性の魔法まで使えるようになってるのか?」

「できれば内緒にしてたかったですけど……」

「ミケちゃんみたいにビックリさせたかったのに~!」

「お、おう。なんか……すまん」

[ひゃ~! こんな化け物に無謀にも突っかかっていったんですね。私達……]


 ピルムがばけも――モンスターだろ!


「それにしても、3人とも凄いな。ミケは順調過ぎるくらいに適性のない火属性魔法を上げているし。特にアニカとアニタは新しい魔法だもんな」


 3人に言葉をかけると、照れくさそうにしている。

 言ってて難だが、適性のない火魔法を上げるって……えげつない使い方してたんじゃないよな? ……聞けない!



「さて、残る問題は1つじゃ」

「どうしたんだ、ミケ?」


 問題なんてあるか?


「ピルムの人化じゃ!」

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