第六章
第68話
頂上決戦
『
「さて、みんな集まったわね」
ここは
「それじゃあ、作戦会議を始めるわ。まずは、状況の説明から」
紅がそう言って、組織について、知り得た情報を伝えた。
「それで? 敵の数はどれくらいかしら?」
藤堂咲が聞くと、
「あら、その情報は聞き忘れたわ。誰か知っているかしら?」
紅の言葉に、咲は呆れた顔をしたが、誰かが答えるのを待った。
「おおよそ、三百人ほど。常に増えたり、減ったりしているから、正確な数ではないが、多く見積もってもそれくらいだ」
と
「意外と多いのね」
紅はそう呟いて、
「こちらの戦闘要員は……」
と集まった面々を見回した。
「パパとおば様は、
紅が言うと、
「当然よ」
と咲が鼻を上に向けて、ツンとした表情で高飛車に言った。呼び出されたことが、余程お気に召さなかったのだろう。そんな咲の態度に、紅は少し苛立ったが、いつものことと聞き流し、
「榊、如月は無能力者だから待機。りっちゃんは弱いから待機組よ。もちろん、
と皆に告げた。それから、
「次に、戦闘部隊の構成を言うわ。後衛部隊に光の能力を持つ今井さん。あなたには死なれちゃ困るの。もちろん、
と構成の発表と共に、皆の意見を聞いた。誰も答えないのは、異議はないという事なのだろう。
「それで? 決戦はいつ?」
咲が聞くと、
「明日、夜が明けたら敵地へ向かうわ。みんな体を休めて、明日に備えなさい」
紅が言った。
明朝、陽が昇り始めた頃、全員、食堂で朝食を取ったあと、エントランスに召集された。
「さあ、決戦の開幕よ」
紅の号令に、戦闘部隊は出発した。とはいえ、彼らの向かう場所は、避暑地で有名なリゾート地の更に奥。そして、戦闘部隊の人数は二十七人。藤堂の会社の専用バスを使って、まるで社員旅行。紅は遠足気分でお菓子とジュースを持ち込み、バス旅行を満喫していた。
バスに揺られること三時間。高原のリゾート地に着くと、大きな屋敷の前にバスは止まった。
「さあ、みんな、着いたわよ」
まさか、敵地へバスで乗り込んだのかと、一部の者は警戒していた。
「何しているのよ? さあ、降りなさい。ここはうちの別荘よ。ほら、入って」
と皆を急き立てた。
「みんないるわよね?」
紅が見まわして、全員いることを確認した。
「ここを戦闘要員の本陣とするわ。後衛部隊はここで待機。前衛部隊と中衛部隊で敵陣へ向かう。みんないい? あたしたちは死にに行くわけじゃないわ。敵を殺しても、あなたたちは死なせない。後衛部隊は怪我人の救護が主な任務よ。さあ、戦いの準備はいいかしら?」
紅はそう言って、前衛、中衛部隊を引き連れて本陣を出た。木々が生い茂る高原地帯。夏も終わりかけ、心地よい風が流れる。しかし、紅たちは既に多くの気配に囲まれていた。敵であることは間違いないが、彼らはまだ何もしてこない。三十分ほど歩くと、いかにもという程の大規模な施設が見えてきた。
「ここね?」
紅が聞くと、
「ああ」
と王鬼は答えた。その時、それまで隠れて紅たちを包囲していた敵が、姿を現した。
「紅き悪魔、これ以上は進ませない」
一人の男がそう言って、紅と対峙した。しかし彼らだけでは、紅たちの足を止められないことは明らかだった。敵の施設からも数十人の援軍が加わり、戦闘が開始された。
「おじいちゃん、あたしたちは先に進むから、ここはお任せしたわ」
紅はそう言って、施設の閉じられた門を、強風で吹き飛ばして、歩みを進めた。
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