第42話

 くれないたちは、有名なロリータファッションブランドのショップへ入店した。

「いらっしゃいませ」

 ロリータファッションに身を包んだ女性店員が、にこやかに出迎えた。どう見ても二十代、顔のレベルもそこそこで、お世辞にも似合っているとは思えなかった。紅は手に取った服を四之宮に当てては返すを繰り返していた。

「りっちゃんにはやっぱり、水色が似合うかしらね?」

 独り言のように言いながら、物色をしていると、

「こちらはいかがでしょうか?」

 店員がバックヤードから、淡い水色の超甘ロリドレスを持ってきた。

「ですが、ちょっとお値段が張りまして……」

「あら! 可愛いじゃない。りっちゃん、これを着てみて」


 一人で着るには難しいらしく、店員が着替えを手伝い、いざお披露目。


 試着室のカーテンが引かれると、超甘ロリ四之宮の可愛い姿。着替えを手伝った女性店員でさえ、その可愛さに、

「本当に可愛いです! お写真とか、撮っちゃだめでしょうか?」

 と少し興奮気味の様子。

「だめです」

 紅はきっぱり断った。

「やっぱり、りっちゃんに良く似合っているわね。これを買うわ」

 と店員に言った。

「こちらのお値段ですが、三十万円になります。お支払いはどうされますか?」

 店員は、まだ十代の紅に、その金額を払えるのか心配した。

「カードで」

 十六歳の紅には、クレジットカードの契約は出来ない。これは藤堂が契約している家族カードだ。店員はそれを確認した。

「お名前をうかがってもよろしいでしょうか?」

「中臣紅」

「確認が取れましたので、こちらでお会計させていただきます」

 子供がこんな高額な買い物をしても良いものか? と疑問もあったが、本人が買うというのだから、その責任は本人にあるという理屈付けで、女性店員はカード決済処理をした。

「お買い上げ、ありがとうございます。そのまま、着て帰りますか?」

「とんでもない。こんな可愛いりっちゃんを連れて歩くなんて出来ないわ。さっき着ていた地味なワンピースに着替えさせてくれないかしら?」

 超絶可愛い四之宮が、超甘ロリファッションなど、目立ちすぎてしまうだろう。道行くけだものたちのいやらしい目に晒されてはたまらない。

 四之宮は、紅のお下がりの地味めなワンピースに着替えた。とはいっても、これも高級ブランドで品があって、可愛い四之宮によく似合っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る