第21話
「ただいま」
「
「シャワーを浴びて寝るわ」
翌日、藤堂と昨夜の少年が紅の屋敷を訪れた。
「あら、今日は何の御用かしら?」
「紅、パパにそんな冷たい事を言わないでよ」
「誰がパパよ!」
夕べは紅がパパと呼んでくれたことを喜んでいた藤堂だったが、冷たくあしらわれて淋しそうな顔をした。
「旦那様、お帰りなさいませ」
榊が出迎えて、部屋へ通した。
「紅、彼の事を覚えているかね?」
「ええ、もちろんよ。夕べ、あたしたちが追っていた
「そうじゃない。いや、そうだけれど、その前にも、彼に会っていることを覚えているかな?」
「知らないわ」
「彼の名は、
その言葉に紅は驚いた表情をした。彼が古の者となったのが、自分の責任であることを知ったのだ。
「あたしが……。あんな風に死んでしまうなんて理不尽だと思ったの。だから……。彼も生きたいと言った。だから……」
藤堂はそれが紅の優しさだと知っていた。
「分かっている。それを責めているのではないよ。彼だって生きたいという気持ちがあった。そして、紅に蘇らせてもらった事に感謝しているのだよ。けれど、急な変化に戸惑っているのだ。怖かったのだよ」
「分かったわ。あたしの責任だもの。君の支援はあたしに任せて。それで、あたしは何をすればいいの?」
「山本君の力は縛りによって、ある程度の制御がある。しかし、力を失ったわけではない。紅が力の使い方を教えて、始末屋の助手とするといい」
「はぁー? 助手って? それより、あたしのこと始末屋って? 悪魔と呼ばれるのもなんだけど、始末屋も恰好良くはないわね。他に何かいいネーミングはないかしら?」
紅は顎に手を当てて、上を見ながら考えた。
「『レッドデビル』と言うのはどうでしょうか? 紅き悪魔=レッドデビル……。やっぱり嫌ですかね?」
山本が初めて口を開いた。
「嫌よ。何でも英語に言い換えれば恰好良く聞こえると思うのは、日本人の悪い癖だわ。呼び名を自分で決める事が、むしろ恰好悪いわね。誰がどう呼ぼうと、勝手にしたらいいわ。それより、助手君。今日から、みっちり特訓よ」
紅は、自分に助手が付いたことを、ことのほか喜んでいる様子だった。
「紅、それなんだが、山本君はまだ中学生だからね。学校に通ったり、宿題やテスト勉強があるから、彼の時間に合わせてやってほしいのだよ」
「何よそれ! あたしが助手の時間に合わせないといけないの?」
「まあ、それも紅の責務ということだ」
藤堂にそう言われると、紅も渋々了承した。山本を古の者にしたのは紅で、その責任を取らなければならない事を痛感していた。
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