第11話
「お前は学生だろう。学校へ行ってろ」
「今日は体調不良で早退しましたよ。貴方がたの動きが気になったものでね」
「暇なのか?」
「僕は今を楽しんでいるんですよ。しばらく封印されていましたからね。都合よく使われるのは不本意でしたが、術で縛られているので仕方なく高一郎の身体に入りました。でもまあ、今は快適に過ごしています。悪魔が現れるまではね」
「それは悪いことをしたな。だが、古の者にも秩序はある。それを守らない者を許すわけにはいかない」
「あなたの役目、あなたの性、それを僕が止めることは出来ないのも分かっている」
高一郎から、笑みが消え、悲しみの表情が見て取れた。
「このままだと、俺はあいつを始末することになる。中臣紅も死ぬ」
「それは困るね」
「これ以上、人を殺させるな」
「これまでの事をチャラにしてくれるなら、僕は全力で止めてみせるよ」
「チャラには出来んな。あいつは罪を犯した。それを俺が知っている。罪は償わせる」
「それなら、償いはさせましょう。でも、妹は僕に返してほしい」
「何か策はあるのか?」
「身代わりを用意してください。あれを引きずり出して、別の者に依り代となってもらおう」
「愚策だな。罪のない者を犠牲には出来ん」
「それじゃ、今回の交渉は決裂だね。妹には手を出さないでくれよ。これは警告だ。貴方がたに、あれは止められない」
高一郎はそう言って、姿を消した。
「警告って、どういう意味ですかね?」
「紅の中の古の者の事ではない。中臣紅自身が、力を増してきているんだ」
佐久間は、危機感を覚えた。
この焼死事件を人の法で裁こうと奮闘してきた佐久間たちだったが、もうその範疇には収まらないことを知った。しかし、警察ではこれを人の犯罪として捜査をしている。それに決着をつける方法などあるのか? このまま、お宮入りとするのか? 佐久間は深く悩んだ。
「佐久間さん。これは難事件ですが、これ以上犠牲を出したくはありません。高一郎も、紅の犯罪を止めようとしている。彼と手を組むことも選択肢の一つとして考えてもいいと思います」
「それは、依り代の身代わりを立てるという事か?」
「他に方法があるかもしれない。それを模索しましょう。彼の協力を得られれば、何か策が見つかるかもしれません」
佐久間たちは、一旦、紅の見張りを止めて署に戻った。
「これから策を練るんですね」
「ああ。中臣紅自身が力を増し、古の者を支配しているとしたら、紅を説得して、殺しを止めさせる」
「そうですね。彼女はまだ精神の幼い少女。心理戦で何とかなるかもしれないですね」
「中臣紅と話す機会が必要だ。お前の言うとおり、兄に協力してもらえば円滑に話が進むかもしれない」
「それじゃ、高一郎とまた、会う必要がありますね」
「ああ」
佐久間たちがそんな作戦会議をしている中、紅はまた、罪の種を見つけてしまった。
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