紅鏡に燃ゆ ~討魔剣奇譚~

水面ひかる

荒々しくうねるあおい海に

白い波しぶきが立つ。


大陸から海原うなばらぎ出せば、

その先に悠然とした姿で浮かぶ島国があった。


人々は礼を重んじ、恥を知り、

和をたっとぶという。

移ろいゆく季節は鮮やかに彩られるがゆえに、

情緒は豊かに育まれ

他に類を見ない文化を生み出した。


しかしながらかの地には

人ならざる妖異がうごめき、

闇を闊歩かっぽする魔がはびこる

裏の姿があると噂される。


対して古来より自然神を信仰し

その子孫たるすめらぎが治め、

白刃のわざを自在に操る守護者たちによって

人々は護られている。


東の果てに水平線から昇る真紅の太陽は

円い鏡のごとく光り輝き、

故にその象徴たる国として

人々はこの神秘の国をこう呼ぶ、


— 『紅鏡こうきょう』、と。




アンリ=W=フレクト著 

『異邦探求録』 紅鏡の章 序文より

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