ある日、惰眠を貪っていたら一族から追放されて森に捨てられました〜そのまま寝てたら周りが勝手に魔物の街を作ってたけど、私は気にせず今日も眠ります〜
白波ハクア
第1章
1.追放されました?
──私は睡眠が大好きだ。
──私は行動が大嫌いだ。
昔から私は、やる気というものが完全に欠けていた。
何かをしようとしてもすぐに面倒になり、全てのことを途中で放り出してしまう。食事中だってそう。前は食べている途中に眠っていた、なんてこともよくあった。
そのくらいの堕落者が私、クレアだ。
パパは「クレアの好きにやりなさい」と言って、いつも優しく笑いかけてくれた。
ママは……何も言わなかった。私を産んだ時に死んでしまったから、私に何も言葉を残してくれなかった。
私のやりたいことは、眠ることだ。
永遠に眠り、世界が眠るその時まで、静かな場所で眠り続けたい。
だから私は、眠り続けた。
この身が朽ちるその時まで、私は眠り続けると決めたから。
「お前を一族から追放する!!!」
眠り続けてきた、ある日のこと。
そのような怒号が小さな部屋に轟き、屋敷全体を震わせた。
「…………ん、……んにゅぅ……」
なに、うるさい。朝からギャーギャーと、耳障りな声だ。
私は瞼だけを開いて、最低限の動きで声の発生源を探す…………見つけた。私と同じ白い髪の、なんか、よぼよぼのお爺ちゃんだ。突っつけば倒れそうなくらい弱そうなのに、意外と元気そうに杖をバシバシと地面に叩きつけている。
元気には見えない、元気なお爺ちゃん。
面白い人が、そこに居た。
「もう我慢ならない! 我らの一族から追放する! 今すぐ出て行け!」
手に持っていた杖の先端をこちらに向けて、なんか怒った様子のお爺ちゃん。
「大旦那さま! お嬢様を追放だなんて、それだけは、それだけはお許しください!」
そんなお爺ちゃんに縋り付くのは、なんかどっかで見たことあるような人達。お爺ちゃんの腕に引っ付いて、何度も許しを乞うている。
でも、お爺ちゃんは顔を真っ赤にして、話を聞く様子はない。
「えぇぃ! うるさい! こいつが『
──使用人が何人か居なくなったところで、何も変わらん!
お爺ちゃんはそう言い、同じような服を着た人達は言葉をなくしていた。絶望しているのか、それとも話を聞かない老人に呆れたのか。…………そんなの、考えることが面倒臭い。というか、さっきからうるさいなぁ。
なんか偉そうに……まぁ、偉いからこういう態度が取れるんだろうけど、それでも人の迷惑ってものを考えてほしい。お爺ちゃんは老害なのかな? 滅ぶ?
「おいクレア! わかったら、さっさと出て行け! ……出て行けと言っているだろう! どうしてここまで言われて、動こうとしないのだ! …………まさか、この儂の決定に逆らうつもりではないだろうな!」
「…………だれ……?」
「「「「……………………」」」」
私がポツリと漏らした言葉に、お爺ちゃんだけではなく、他の人達も驚いたように目を丸くさせていた。
「ふっ、ふふっ……言うに事欠いて、儂を、誰と……この儂を、誰だと言いおったか……」
それまで騒いでいたお爺ちゃんは、俯き、その体を小刻みに震わせていた。寒いのかな?
「早く出て行け──この穀潰しがァアアアアアアア!」
その瞬間、今日一番の怒号が響き渡った。
私の名前はクレア。
クレア・クリムゾン。『高貴なる夜の血族』という分類? の吸血鬼だ。
パパの言う通り、私がやりたいことをやり続けていたら、知らないお爺ちゃんに家を追い出されちゃいました。私が捨てられたのは、知らない森。
多分、お爺ちゃんの部下? みたいな人に運ばれて、ポイされた。私は粗大ゴミじゃないのに、酷い人達だ。
「………………」
私は、ただボーッとその場に座っていた。
ああ、もう……動くのも面倒臭い。ここは何処だろうとか、あのお爺ちゃんは誰だったんだろうとか、なんで追放されたんだろうとか、考えるのも面倒臭くなってきた。
「…………すやぁ………………」
とりあえず、眠いから寝よう。
私はそう思い、その場に寝転がった。
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