第83話 ゴーレムとにょきにょき
「いや、めっちゃ伸びてんじゃん!?」
俺は思わず叫んだ。そうせずにはいられなかった。
なぜなら……裏庭の畑が緑であふれていたからだ!
「ジャガイモは立派な葉っぱがたくさん、トマトは支柱に
マホロも口をあんぐりと開けて驚く。
裏庭の家庭菜園はほとんどマホロが管理していた。
それだけに植物たちの急成長が驚きなのだろう。
「バナナの木は葉っぱが傘に使えそうなほど大きくなって……! 種から育てていたリンゴの木は私の身長くらいまで伸びてます!」
「こっちの薬草はもう収穫出来る状態だ! 早めに刈り取って天日干しにしておかないと!」
俺とマホロは興奮して裏庭を駆け回る。
そして、中央に植えられたとある木の前で足が止まった。
「私が大好きな黄色い花の木……すっごく伸びてます!」
「裏庭で満開の花を見られる日は近いかもしれないな」
マホロの髪色に似た淡い黄色の花――
その花を咲かせる木の枝を、教会のシンボルとして裏庭の中央に植えた。
まだしっかりとした根も張れていなかったであろう木の枝が、こんなに早くマホロの身長と並ぶほどに伸びるとは……!
しかも伸びた何本もの枝には、小さな小さなつぼみが付いている。
たとえ数が少なくとも、見た目が立派でなくとも、裏庭に咲く黄色い花はマホロを笑顔にしてくれるはずだ。
そして、マホロの笑顔は街中に笑顔を広げてくれる。
「ずいぶんとはしゃいでいるようだが、そんなにここの植物たちが様変わりしたのか?」
そう言いながらシルフィアが裏庭の中央までやって来る。
「ごめん、シルフィア。置いてけぼりにしてはしゃいでしまった」
「それは別にいいのだが、私のブーメラン……あっ、ラブルハートをラブルアースと
確かに
でも、命のブーメラン――ラブルハートは決して大きな魔法石ではない。
ブーメランとして飛ばすために薄く作られているから、表面積はまだしも体積は小さい。
それでここまでの効果が現れるものなのか……?
〈異なる波長を持つ魔宝石を
俺の疑問にすかさずガイアさんの補足が入る。
「つまり、ラブルアースとラブルハートは波長の違う魔宝石なんですか?」
〈魔宝石は産出地によって波長が異なることがあります。今回の場合は天然の魔宝石と高度な技術によって加工された魔宝石の違いも
ラブルアースと灯台のラブルフレイムの産出地は同じ廃鉱山……。
だから、この二つを
「ダメもとで聞きますけど、その波長の違う魔宝石同士の
〈波長は接触するごとに同調し、やがてお互いを受け入れられる状態になります。現在はすでに複数回の接触を行い、小規模な
「あはは……。やっぱり、そう何回も取り出せるエネルギーではないですよね」
起こせるだけの
つまり、最初の大きな一回と複数回の小規模
〈現在、より効果的に命の魔宝……ラブルハートの性能を引き出すべく解析を行っています〉
ガイアさんが魔宝石の名前を間違えてから
まだ慣れないよねぇ~、魔宝石の新しい名前。
それはガイアさんも同じなんだと思うと、何だか気持ちがほっこりするなぁ~。
〈命の魔力の及ぶ範囲は防壁外の畑と教会の裏庭、教会隣の樹木の土に限定しています。それ以外の土にはわずかな雑草しか存在しませんので、命の魔力を送り込む必要はありません〉
「命の魔力を送る範囲を絞ることで、送られている場所への効果は高まるというわけですね」
〈その通りです〉
「ま、待て待てっ! その……ガイアさんとやら!」
シルフィアが慌てて会話に入って来る。
「教会の隣の樹木というのは、おそらく私の家がある木のことだろう? それに関しては命の魔力を送り込んで急速に伸ばす必要はない! 急に伸びるとツリーハウスが崩れる……! そこそこの栄養さえあれば良いのだ」
〈……ッ! 了解しました〉
ガイアさん、今日はちょっといつもと雰囲気が違う。
ポンコツという言い方は失礼だが、少し抜けている部分を見せてくれる。
あくまでも地属性の専門家だから、命属性の植物を相手にするのは苦手なんだろうな。
だから、ツリーハウスがある木を急速に成長させてはいけないことは気づかなかった。
「うちの裏庭の家庭菜園はいくら成長させてもいいですから! お願いします、ガイアさんっ!」
マホロはぴょんぴょん跳ねてアピールする。
早く黄色い花の木を成長させたくてしょうがないんだろうな。
〈了解しました。防壁外の畑と教会の裏庭に命の魔力を集中させます〉
「やったー! ありがとうございます、ガイアさんっ!」
ラブルピアでは一番手に入れにくかった食料。
それを果物と野菜の高速栽培で
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