第七話
私は、静かに告げた。
「そうだ、君が犯人だ……。君は優秀な編集者だ。そして
だから出来れば自分の罪を認めて、
井口君は反論した。
「僕は認めませんよ……。そんな状況証拠や物的証拠じゃない、決定的な証拠でもあるんですか?」
「ああ、あるよ」
「え?」
「君は言ったね、被害者はジェリス女子高校の制服を着ていたと。なぜ、それが分かったんだい?」
「ですからそれは、週刊誌の記事を読んで……」
今度は私が反論した。
「いや、それはあり得ない。なぜなら、この事件を報道した新聞、週刊誌等の全てに私は目を通したが、ジェリス女子高校に通っていたと報道したものは無かった。
全て、『都内の女子高校に通う土村愛海』としか報道されていなかった。
永山に確認したが、警察は学校名を伏せていた」
井口君が、
「じゃあ、何で市村先生は被害者が、ジェリス女子高校に通っていたことを知っているんですか?
ひょっとすると市村先生こそが、犯人じゃないんですか?!」
私は思わず
「殺された土村愛海は、私の娘だ!」
「ええ?!」
「小説にも書いた通り、私の
そして
この前、会った時には、
だから愛海が殺されたというニュースを聞いたときはショックだった。さぞかし無念だろうと。
そして私は
「それじゃあ、この小説は……」
「君は原稿を読む時、必ずタバコを吸う。そして原稿を読めば指紋が原稿に付着する。君はここで飲食をしないから、コップや食器から指紋を取るのは不可能だ。
そうだ、私はそのためにこの原稿を書いた。そして君が原稿を読み、出頭してくれることを望みながら……」
井口君は、言い切った。
「出頭なんて、しませんよ……」
「そうか……」
井口君は、左腕の絆創膏をはがして告白した。
「確かに彼女を殺したのは僕です。あの夜ビールを飲み過ぎて、八月の暑さもあってムラムラしていましたからね。
だから彼女を見つけた時、後をつけたんです。ジェリス女子高校の制服が可愛かったですからね。
そして人通りが少なくなった所で声をかけたんです。援助交際をしないかって。
でも、『キモい』って断られましたよ。
だから力づくで、と思い制服を脱がそうとしたら、もみ合いになりました。その時、彼女に左腕を引っかかれましたよ……。
ほら、二週間経っても、まだ傷あとが残っています。
そしてその時、『かっ』となって彼女の首を絞めて殺したという訳です……」
私は、確認した。
「それは自白と受け取っても、構わないかね?」
井口君は私に、にじり寄って言った。
「ええ、もちろん。でもこのことを知っているのは市村先生ただ一人……。
小説にも書いてあった通り僕は昔、柔道をやってまして腕力には自信があるんですよ。まさか親子そろって絞め殺すことになるとは……」
「そうか、残念だよ。君とはもっと良い仕事がしたかった……」
「僕もですよ、市村先生……」
私を殺して真相を知る者を無くそうとするする井口君に、私は告げた。
「だが井口君、君は一つ間違っている」
「何ですか? 彼女を殺したことですか?」
「いや、そうじゃない。君の自白を知っているのは、私だけではない」
「え? どういうことですか?!」
私は、テーブルの上のスマホを指さして言い放った。
「私のスマホは、まだ電話を切っていないんだ」
「な?! まさか?!」と、井口君が叫ぶと同時に、刑事と警察官三人が私たちがいるリビングに突入してきた。
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