白い太陽

エレジー

第1話

今から25年程前、私が25歳頃の話。


Kグループ社長Kさんの付き人をしていた私。丁度、私がKさんに付くという時に先代が亡くなった。


42歳というこの業界では異例の若さで跡を継ぐ事になったKさん。Kさんのプレッシャーは相当なものだっただろうと思う。


その反動からか、週に2、3回は北新地に飲みに行っていたKさん。行くメンツは、大体、Kさん、Kさんの片腕だったOさん(50代)、私の3人だった。夕食をとってからKさん行きつけのクラブをハシゴする。


夜10時くらいから始まり、帰りは空が明るくなってカラスがカーカー鳴いている朝5時くらいというのがいつものパターン。


それを毎週繰り返す。


今考えてもタフな生活していたなぁ~と思う。


Kさんが行く店は座っただけで数万円という高級店ばかりだった。なので私が店のホステスさんを口説いてとかは一切思わなかった。口説いたところで私が店に通うなんて出来るわけないとわかっていたからだ。


だから、私がKさんと飲みに行くのは何が入っているか分からない重厚なセカンドバックを無くさないように持ち続けるという使命感のみだった。高級店だけあってイイ女ばかりだったけれど私自身のモードは切り替えていた。


そんなある日、いつものように飲んでいたクラブで一人の物好きなホステスが私にこう言ってきた。


「エレジーさん、よかったら連絡先教えてくれないかしら?」


そのホステスさんはR子さんという名前で私より10歳ほど年上だった。萬田久子さんのような雰囲気の上品さを醸し出していた。


「え?あ、ああ・・・別に良いですけど・・・」


私を客として引っ張っても、こんな高級店自腹で行けるわけないし、メリットほとんどないのになぁ・・・


不振に思いながらも、断るのも失礼かと思い携帯番号を紙に書いた。


「ありがとうございます~!これ、私の番号です!良かったらかけてきて下さいね!」


R子さんはそう言って、折り畳んだ紙を手渡してきた。次の日、R子さんから渡された紙を思い出し見てみた。


紙には市外局番からの番号が書かれていた。


え?家電話?なんで?


普通、携帯番号なのに、自宅であろう番号が書かれていた事に違和感を感じた私。R子さんがめちゃくちゃタイプだったら、その違和感を打破してでも番号をダイヤルしたかもしれない。


しかし、綺麗な女性だとは思うけど私のタイプではなかった。


番号をダイヤルする事なく、数日が経過したある日。私の携帯に着信があった。


「エレジーさん、覚えてる?R子です。」


R子さんからだった。


「もぅ~!エレジーさん、全然電話かけてくれないんだから~!」


「え?あ、あの、仕事が、い、忙しくて・・・」


取って付けたような言い訳をした。


「フフフッ、エレジーさん、お食事でもどうかしら?」


大人の魅力全開やな~と、R子さんに少し魅了されてしまった私。そして、数日後、R子さんと食事に行く事になった。


待ち合わせ当日。


待ち合わせ場所はR子さんのご希望で全日空ホテルのロビーにしてほしいとの事だった。私にとって、こんな場所での待ち合わせなんて初めての経験だった。一応、スーツを着て待ち合わせ場所のロビーに向かった。


約束の時間より早く着いた私はロビーにある高級そうなソファーに座っていた。すると、エントランスから一人の女性が入ってきた。


火曜サスペンスドラマでしか見たことないようなツバの大きな帽子を被っていた。その女性は立ち止まり、少し辺りを見渡し私を見つけたのか私の方に向かって歩いてきた。


「エレジーさん、待ちました?」


R子さんだった。


「あ、いや、今来たとこです。」


私が今まで付き合ってきた女性とは異世界の住人に思えた。ホテルに停まっていたタクシーに乗った。


ツバの大きな帽子はどうするのだろうと、小学生のような疑問を抱いていた私。もし、そのまま乗るんだったら、俺、助手席乗らなアカンのかなぁと、要らぬ心配をしていた。


勿論、帽子を脱いでタクシーに乗ったR子さん。ホッとした自分が妙に滑稽に思えた。


下調べしておいたフランス料理かなんかのレストランに行った。ワインで乾杯し、コース料理を二人で食した。


「私、エレジーさんの隣にずっっと座りたかったの!」


R子さんは私の存在を前から知っていたようだった。勿論、私があの店に行くのはKさんの付き人としてしか行くわけはない。R子さんによると、若いのに付き人としての立ち振舞いが見てて格好良かったらしい。


思いがけないR子さんの告白に、男として悪い気がするわけなかった。


「だからもぅ~嬉しくて嬉しくてテンションが上がっちゃった!」


「あ、ありがとうございます。」


世の中には物好きな女性がいるものだと妙に感心した。いつも思うんだけれど、店外で会うと店で会っている時の雰囲気と違う。当たり前なんだけれど、それがプラスになる方と、そうでない方に別れる。


R子さんは・・・店でそんなにじっくり見てなかったし、私に興味を抱いてくれていたみたいなのでプラスに感じた。R子さんは、銀座でもホステスとして働いていたとの事だった。政治家の愛人として何年か過ごしていたらしい。


2軒目は落ち着いた感じのバーに行った。3、4時間経過しただろうか。そろそろ帰ろうと思った私。


「じゃあ、帰りますか!」


「え~もう帰るんですか~?」


今考えると、R子さんの目は妖しい光を放っていたなぁと記憶している。Kさん行きつけの店だし、ややこしくなったらマズイと思い帰ろうと思った。


今考えると、この時から「据え膳食わぬは・・・」の言葉が頭の中をぐるぐる駆け巡っていた私。


それでも、Kさん行きつけの店だからと強い意志を持ち店を出た。タクシーを拾おうと辺りを見渡していると、R子さんが私の腕を掴みながら言った。


「え~本当に帰っちゃうの~?」


今考えると、この時「据え膳食わぬは・・・」の言葉が.私の脳を侵食しきっていた。もう何やったら「据え膳食わぬは・・・」と呟いていたかもしれない。


10歳くらい年上のR子さんは、酔いのせいもあったのか甘えた声で私に言った。


いつも思うんだけれど、女性はいくつになっても、男に可愛いと思わせる術を持っていると。仕事で60代のお客さんと接していても、可愛いなぁと思ってしまう瞬間がある。


この時のR子さんも可愛いと思った。


「じゃあ、もう一軒どっか行きますか?」


「もう私、休みたいなぁ~。」


もう女の武器全開で来られて、拒絶できる意思を私は持っていなかった。


「・・・じゃあ、行きますか。」


風雲急な展開。ピタッと寄り添ってくるR子さん。ホテル街へと歩いていった。


部屋に入りR子さんが先にシャワーに行った。続いて、私も浴びに行く。


「あ、石鹸で手を洗ってね!」


シャワーから出てきた私にR子さんが言った。


え?俺、今、シャワー行ったのに?ってか、泥ん子か俺は!


「は、はい・・・」


気持ちとは裏腹に、私もシタい気持ちになっていたので素直に従った。


過去に不潔な手でされて、性病かなんかになったんだろうか?


そんな事を考えながら、石鹸を泡立てて手を洗った。流石、政治家の愛人を何年かしてただけあってテクニックが凄かった。


私は一回のセックスに一球入魂ならぬ一発入魂する。必ず、女性がイクのを確認してから自分もイク。だから、続けてしても2回くらいしかした事なかった。それくらい一回にかけるパワーたるや・・・


一回目が終わり、横たわっていた私の股間にR子さんが・・・すると、若かった私は、瞬く間に復活。


2回目が終わり、横たわっていた私の股関にR子さんが・・・すると、若かった私は、瞬く間に復活。


3回目が・・・以下、同文。


R子さんにカポッとやられると、面白いくらい復活した。結局、朝までの数時間で私が入魂した回数は実に7回。翌日も仕事だった私は、朝早くホテルを出た。


その時、見上げた太陽。


























白かった・・・




















一発入魂7発の代償は、私から色彩という感覚を奪ってしまった。勿論、色彩感覚は数時間後、元に戻った。


その後、R子さんとはもう一度会い、また7発くらい抜かれた。3回目は、しきりに自宅に誘うR子さんに何か恐怖を感じて会わなくなった。


あれ以来、私は白い太陽を見ていない・・・

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