賭け

あおぞら

第1話

あの時、君なんでいなくなったかわからなかった。

ある日突然、君はボクの前から姿を消した。

本当に突然で、いつからいないのかさえわからない。

いなくなったことだけが、唯一わかってた。



「小説を書くんです」

その会話が初めてだった気もする。

小説を書く、文字を綴る。

それが僕らの共通点だった。

思ったこと、体験したことなどを書く。

それを共有する。

そうして毎日を過ごした。

他人を理解するのは大変だ。

でも、文字を通してある程度わかることができる。

それがどこか面白くて、不思議だった。

たまに通話をしたり、話したり。

ずっと一緒ってわけじゃなかったけど、まあまあ仲良くしてたと思う。

そんな君が突然消えた。

音もなく。

どこに行ったのかもわからない。

消息不明だった。

またいつか会えると思ったけど、世界はそんなに甘くない。

始まりがあれば、終わりがある。

出会いがあると、別れがある。

でも、終わりから始めることはできる。

相手が望んでなくても、やる価値はある。

文字を綴ることしか僕にはできない。

けど、そんな僕だからこそできることもある。

自分の思いを文字として表すこと。

君は今どこにいて、何をしてるだろうか。

また話したい気もする。


それはきっと、君が僕に何かをくれたから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

賭け あおぞら @bluesky0308

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る