黒に染った7の先

海羽柚花

第1章 罪

道に迷った。学校までの通学路で。

「まただ、ここさっきも来た」

三山悠希16歳、高校2年目にして道に迷いました。


とりあえず記憶通りに学校に向かって歩いてみる。ここを曲がって、もう1回曲がると…

「やっぱり」

また2つ前の曲がり角に戻ってしまう。これで7回目だ。

「流石に疲れてきたな」

というかなんで学校に向かってるんだろう。そのまま8回目に入ろうと2つ目の角を曲がると1つだけ変化が…

「松山先生?」

今まで自分以外誰もいなかったのに。先生がこちらに気がついた。

「ん?悠希か?」

「本当に松山先生ですか!?」

「俺を忘れたのか悠希、先生傷つくぞ。この松山恵翔、通称松山先生を忘れたのか?」

先生はニカッと笑った。呆然としていると先生が近づいてきた。

「久しぶりだな悠希。お前が小学生の時以来か?大きくなったな」

「お久しぶりです先生」

「何歳になったんだ?」

「16歳です。高校2年生になりました」

「そうかそうか。学校は楽しいか?」

「まぁそれなりに」

「ははっ。そうだよなそうだ。お前はそういうやつだった」

先生は1人で納得すると学校へと歩き出した。こちらのペースに合わせながら。それから学校までの時間先生の質問攻めにあった。そして今度久しぶりに小学校に行くという約束もした。

「それじゃっ頑張って来いよ!」

「え?あっ学校」

「またな!悠希!」

「はい。それでは」

先生はそう言うと歩いて行ってしまった。先生の姿はすぐに深い霧の中へ消えていった。


深い霧が立ちこめる中、校舎へと歩く。不思議なほど人の気配がない。これほどまでに不気味な学校は今まであっただろうか。緊張しながら歩いていくと、不意にガサガサと音がした。

「何!?」

自分の口から普段では考えられないほど大きな声が出た。そこにいたのは…

「狐?」

なぜこんな所に狐が?いくら田舎だからといっても野生の動物なんてせいぜい猫ぐらいだ。狐なんて見たことがない。狐は何も言わない。ただ座ってこちらを見ている。狐はスっと立ち上がるとニヤッと笑った。どうやらこちらに来いと呼んでいるようだ。狐について行ってみる。最初は歩いていたのに狐はどんどんスピードを上げていつの間にか走らされていた。狐をおって2つ角を曲がるとまた学校の前に戻って来る。そんなことを繰り返して7回目、なぜかこれが最後だと悟った。8回目、2つ目の角を曲がるとそこに狐はいなかった。

「あれ?」

不思議と息は上がっていない。霧は一層濃くなった気がする。大きな風が吹いた。飛ばされないように身を縮める。

ドンッ!!

何かに押された。状況を理解する間もなく辺りが真っ暗になる。何か大きな、とてつもなく大きな穴に落ちたみたいだ。穴の入口で狐が嘲るように見下ろし、笑っていた。死ぬんだ、そう思った。意識が遠のいていく。

冷たい、痛い、怖い、苦しい、辛い、いやだ、助けて助けて「助けて」


「悠希!!」

「え?」

「大丈夫か?」

「松山先生?」

「お前小学校の前で倒れてたんだぞ。約束の時間から1時間過ぎても来ないから心配で見に行ったらこれだ。とりあえず保健室に連れてきて寝かしていたんだ。うなされてたぞ、大丈夫か?」

「あっはい。大丈夫です」

いつの間にか先生と小学校で会う日になっていた。

「もう7時か。4時にお前を見つけたから少なくとも3時間は寝てたぞ」

「そんなに…」

「どうする?帰るか?それとも学校の見回りついでに一緒に来るか?」

「じゃあ後者で」

今を逃したらもうここには来れない気がしたから。先生の夜の見回りについて行くことにした。

「じゃあ行くか」

「はい」


高校まで行った時同様学校を見て回る間先生がずっと質問をし、会話を繋いでくれる。1階からゆっくり全ての教室を見て回る。7つ目の質問が終わる頃6年生の時、松山先生と自分たち6年1組が通っていたあの教室にたどり着いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る