第4話 魅了されてしまった彼ら
入学式の日に迷子になっていた女子生徒の名前は、ディアヌ。ラファルグ子爵家の令嬢であることが、後で判明した。
王立学園に入学してから、アンセルム様とディアヌの二人は、私に隠れて会うようになった。それとなく指摘したけれど、彼は会うのを止めてくれなかった。
アンセルム王子は夢中になると、周りがよく見えなくなるような人だった。下手に干渉してしまうと、機嫌を損ねてしまう。
それで私は、ディアヌという女のことを詳しく調査した。王子には内緒で。
ディアヌの母親は平民で、幼少期を貴族社会の外で過ごしていたそうだ。そして、学園に入学する少し前にラファルグ子爵家に引き取られた。そのせいなのか、貴族の常識には疎かった。王族であるアンセルム様に対して、身分の差など全く気にしないで、ディアヌは平気で話しかける。
学園内では身分平等。とはいえ、必要最低限の礼儀を知っておかないといけない。なのに、ディアヌはまるで気にしなかった。
注意するべきアンセルム様も、彼女の無礼な振る舞いを受け入れてしまった。他の令嬢とは毛色の異なるディアヌを珍しがって、熱を上げてのめり込んでいった。
王族のプレッシャーから逃避したかったアンセルム様は、ディアヌと触れ合って、癒やされていた。婚約者である私とは別の女に、癒やしを求めた。
私の性格や外見とは違い、可愛らしい仕草に庇護欲をそそる顔立ちをしていたのも彼が気に入った理由だろう。
気付いたときには、アンセルム王子はディアヌに心を奪われていた。そして彼女に心を奪われたのは、アンセルム王子だけじゃない。
アンセルム様の取り巻き連中。大司教様のご子息であるクライド、伯爵家の当主であるアンディ。そして、騎士団長のご子息であるウォーレン。彼らの他にも、多くの男達がディアヌと接触して、次々と夢中になっていった。
他の令嬢とは違って、感情を包み隠さず自由に振る舞うディアヌ。令嬢らしくない彼女に、男達は惚れ込んでいったようだ。
特にウォーレンは、王子と同じぐらい彼女に夢中になった。王立学園では、無垢で可憐な美少女を守る騎士になりきって、毎日を過ごしていた。
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