第17話

協会レギオンにこれまでに発見が報告された異常は、

『ありえない場所での火龍種の発見』

『死黒キノコの群生』

『一つ目狼の群による大移動』


である。細かいものも挙げられてはいたが、緊急性が段違いであるこれらは異名持ちの探求者シーカーたちによって、調査がなされた。



その結果として、

高位の火龍種からは調査の協力を締結。

死黒キノコ発生の元凶と思われる新種を討伐。

一つ目狼の群は全滅。


しかし、高位の探求者すらも手傷を負い、『赤猿』に至っては体を精霊に乗っ取られた上で満身創痍になり、即時戦線復帰は難しいとされた。


数少ない調査チームから早くも脱落者が出たことは少なからぬ波紋が起きたが、今回の異常全体の原因と思われる人物及び物品が確認されたことは大きな収穫であった。



「事前に『身代わり石』を渡し合ってて良かったです」

「肝が冷えましたな」


戦闘不能となった『赤猿』たちを救助したのは『白刻』の探求者だった。



『身代わり石』という霊装があり、致命的なダメージを受けるとそのダメージを肩代わりして砕ける、という効果をもつ。

もちろん非常に、どころか非常識的に高価な代物ではあるが、高位の探求者は危険な場所へ赴くことも多いため全員が所持していたのだ。


逆に言えば石が砕けたときは非常に危険な状況に陥っているということでもあり、チーム内では各班の危険察知として渡し合っていた。


すぐに動くことができた『白刻』が駆けつけ一つ目狼ともども倒れている『赤猿』『赤牛』『黄晶』の3人を回収したのだった。



「とりあえず全員の生還ですね」

「実行部隊が先のメンバーだったから何とかなったな。正直経験の浅い者には手伝いすらも危険なのではないか?」


そうなのだ。

手練れですら危ういやもしれない現状、実力のない者や経験の浅い者を調査に向かわせるのは大変危険であるといわざるを得ない。

というより、足手纏いにしかならない。



喫緊の問題はなんとかなった。

しかし、ローブの男と男が持っていた水晶を確保しなければ際限なく異常は起こり続けるだろう。


異常が起こり続ければ、今度はその異常が通常の状態となるだろう。


そうなった場合、例えば爬虫人たちの集落はどうなる?例えばそれまでの生態系はどうなる?



何よりも、ローブの男に探求者が襲われ、そこに怪物が来ていたら?




被害は甚大に過ぎる。



「そこで、なんとかしたいので手を貸していただきたいのです」

「是非もない。しかし、その手段があると?」



「はい、あちらから出てきてもらって、我々で倒しちゃいましょう」


怒れる『白刻』の探求者シーカーがにやりと笑った。

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