第22話 予知の反響

 午後の授業も終わり、公介は寄り道をせずに真っ直ぐ家に帰宅した。


 地震が予知通りの時間に来たが、来ることが分かっている揺れに驚くことはなく、寧ろ予知スキルが本当に的中したことの方に驚いた。


 そのままベッドの上で時間を潰していると、いつのまにか時刻は19時を回っていた。


 風呂に入り、夕食は冷蔵庫の物を適当に漁った公介。

 結局その日はだらだらと過ごし、就寝時間になったら寝るという普通の1日を過ごした。


 翌朝、公介が学校へ行く支度をしていると、通話アプリから通知が2件来ていることに気付く。

 相手は千尋と凛子。


 もうすぐ学校で会うのにわざわざどうしたんだと思いつつも、スマホを手に取り確認すると、内容はどちらも同じ。




 今、テレビの◯番で取り上げてるSNSの投稿、おまえが挙げたやつだよな




 今、テレビつけたらあんたが昨日SNSに投稿したやつ、◯番でやってるわよ




(SNSの投稿?...!?、まさか)


 自分が昨日SNSに投稿したと言えば1つしかない。

 急いでテレビを付け、リモコンを操作すると、テロップには、




 地震を予知!?

 正体は予知スキルか!?




 と書かれており、キャスターが専門家と、画面に映っている公介の投稿について意見を述べていた。




「ズバリ、この投稿者は何故、地震が来て、電車が遅延することを予言出来たのでしょうか。やはり予知スキルを使ったということでしょうか」


「いや、正直予知スキルを使ったとは考えにくいですね。投稿者が投稿した時間帯から予知するには、必要な魔力量が多すぎます。しかも予知スキルは予知した瞬間の出来事しか分からないため、複数回スキルを使う必要があります。仮に運良く1回目で分かったとしても、現実的とは思えません」


「なるほど、ではネットでの意見と同じで、複数のアカウント所持者が当たるまで同じ様な投稿をし続けていた、という説が有力ということでしょうか」


「はい。恐らくは」




 公介が投稿を確認すると、数万のいいねが付いていた。

 まさか、ここまで大きく話題を生むとは思っていなかったが、投稿した時間と実際に地震が起きた時間がかなり離れていたこともあり、予知スキルだとは思われなかった様だ。


(名前ニックネームにしといて良かったぁ。安易にこんなことするもんじゃないな。興味本位で予知スキルを使うのは当分やめよう)


 ひとまず安堵した公介は情報社会の恐さを身を持って知ったのだった。






「あぁ、地震と電車の遅延を予言したっていう投稿のことですか?」


 総理は部下との会話でそう答える。

 議員の1人に、ニュースでやっていた予知スキルの件を聞かれたのだ。


「はい、総理のご意見も伺いたいと思いまして」


 やはりあのニュースは皆気になっているのだろう。

 他の議員達もチラチラとこちらを見ている。


「私もニュースで言っていたことと同意見ですよ。投稿された時間から予知するには必要な魔力量や熟練度が高過ぎます。しかし...」


 独自の見解ではなかったことに、やっぱりそうですよね、とでも言いたげな笑みを浮かべる議員だが、最後の言葉でまだ話が終わっていないことを悟り、次の台詞を待った。


「もし本当に予知スキルなのだとしたら気になりますね。魔力を消費せずに使える手段があるのか、それとも本当にそれ程の魔力量があるのか」


 総理の発言に少し考え込んでしまう議員。

 本当にそんな力があるなら、世界中で話題になる程のビッグニュースだ。


「冗談ですよ。番組内でも複数のアカウント所持者ということで結論付けてたじゃないですか」


 総理がそう説明した後も、議員は気になっている様子だったが、会議が迫っていることもあり、話は終わりとなった。

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