第2話 今後の対応
崖田総理は会見後、首相官邸地下危機管理センターにて、国家安全保障を担当する補佐官や林産副総理、内閣危機管理監、防衛大臣、自衛隊統合幕僚長と今後の対応を検討していた。
早々に会見を終わらせ、不満を漏らすマスコミや、興味本意で官邸前にやって来た野次馬は他の職員に相手をさせている。
「陛下御一行は?」
「既に避難シェルターへご出発済みです」
「分かりました。ではまず解明すべきなのは、あの穴の正体、そしてどこの国が仕向けたものなのか。この2つでよろしいでしょうか」
総理が口を開くと他の者達もそれに賛同した。
それを確認し、総理は話を進める。
「しかし、残念ながら現状ではどちらも解明するのは困難です。穴の正体は調査をしてみない限りは何とも言えない上、これだけ大規模な事をやってのける国家は限られてきますが、アメリカやロシア、中国のような大国も同様の現象が起きているとなると...」
世界中が同時に攻撃を受けている。そんなことができる程の力を持っている可能性のある国家ですら攻撃の対象に入っているとすれば、一体どこの国の仕業なのか。
開始早々静まりかえる一同に、待ったをかけたのは、への字に曲がった口元がチャームポイントの副総理、林産だ。
「別に穴の出現が起こった国が全部被害者というわけじゃないでしょ。むしろそう思わせる為にわざと自国にも穴を出現させた可能性もあるんじゃないの?」
確かに世界中に穴が出現したにも関わらず一国だけ何も起こらなかったら、どう考えてもそこの国が疑われる。
そうならないように自国にも穴を出現させ自分達も被害者だということをアピールすることは十分考えられる。
「なるほど、ですがそうなってくるとこの段階で主犯格を特定するのはほぼ不可能ということになります。これではますます会議が進みません。やはりまずは穴を調査させるしかないということですか」
「調査と言っても、穴を出現させた方法もそうですが、穴は地面では無く垂直に出現したそうです。ならその穴は一体どこへ繋がっているのでしょう?」
敵性勢力の技術力に不安を募らせる防衛大臣。
「先にドローンで入り口付近を撮影し、場所を特定するのはどうでしょうか」
対策案を出す統合幕僚長。
主犯格が分からない、穴が危険かどうかも分からない。
であれば直接穴を調べるしかない。
だが、何の情報もないまま、そんな穴を調査するなど危険過ぎると、声が上がる。
「確かに危険ではありますが、このまま放置していいものでも無いと私は思います。危険なのは我々も含め、全国民も同じです。敵性勢力がわざわざ無害な穴を世界中に無許可で出現させるとは思えません。あの穴が侵略行為である可能性が捨てきれない以上、何らかのアクションを起こす必要があります」
我々も危険という言葉で彼らも納得した。
「私は日本中に出現した穴を敵国からの侵略行為、またはそれに近いものと判断し、自衛隊による防衛、及び調査活動を要請することを提案します。異議のあるものは手を上げてください」
首相の言葉に異議を唱える者は居ない。
彼らだって人間だ。
自分に危険が及ぶ可能性があるのなら、自分達と関係無い場所で処理してほしいと思ったのだろう。
主犯格の正体は不明だが、国民の安全の為、穴に自衛隊を派遣し、調査するという決定により会議は終了した。
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