20世紀夜話
阿部2
第1話 夜の口笛
「夜に口笛を吹くと鬼が来る」というフォークロアがある。鬼でなく蛇や泥棒が来るとした類話もある。口笛は身近な道具であると同時に畏怖の対象でもあった。昼と夜でその性質がコインの裏表のように反転する音楽というものが想像できるだろうか。これと較べると今日の音楽はただ耳と脳を刺激するだけの甚だ散文的のものにすら思える。しかし、口笛がどのような楽器だったのかはわかっていない。写真の技術が十分に普及して以降も、どういうわけか口笛の写真だけは見られない。このような「見るなの禁忌」と総称されるタブーは世界中に見られ、聖なるものはおおっぴらに公開できないという感覚は、多くの人類が共通して持つようだ。聖なるものが身近なものでもあり、また時には牙を剥いて邪悪なものであるかのようにも振る舞うという点も多くこのタブーに共通している。芸術の起源をディスプレイに求める仮説は根強い指示を受ける。口笛を一つの求愛行動、ないし敵を威嚇する示威行動だと解釈すると、このようなタブーの意味もあるいは腑に落ちるのではないだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます