傘がなくてよかった

ジュン

第1話

雨が降っていた日だった。

「好きだ」

灰谷くんに告白された。うれしかった。

「霧島は俺のこと……」

わたしは恥ずかしくて、照れた。

「雨よ、止まないで」

わたしは、心の中でそう呟いた。

雨に嬉し涙を隠し、雨にほてる体を冷まし、雨に色気を増し、そして、雨に彼に抱きしめられた温度を感じる。

寒さのなかの温かさに

「もう少しで立春……」

とわたしは気づいた。

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傘がなくてよかった ジュン @mizukubo

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