ダンジョンと罠
俺が治療を初めてからだいたい1週間ほど経った。
俺は毎日のように魔力暴走の患者さん達の治療を行っていた。
俺が治療を始めた翌日には既に真司さんは他の病院と連絡をし合い協会にも連絡をして、俺が魔力暴走の患者さん達を治療する事を許可してくれるのと同時に魔力暴走についての情報も共有したらしい。
そして、俺の情報を元に国と協力して【魔力操作】のスキルを取得している人を捜索しているらしい。
どうやら既に何人かの人は見つかっているらしく、現在俺の練習メニューを参考に魔法を使って【魔力操作】のスキルを練習させているそうだ。
そして、なにより一番働いたのは俺だと思う。
だって指輪を【錬金術】で作って【付与魔法】の【スキル付与】で俺の【魔力操作】を付与してそれを患者さん達に渡して使い方を教えたり、魔力暴走の患者さん達がちゃんと使えるように指導したり、魔力を体に馴染ませるために訓練をしたりしていたのだ。
まあ、そのかいあってか魔力暴走の患者さん達は俺がいなくても魔力暴走の治療が出きるようになっていた。
そうなると約1週間治療し続けたが、俺はお役御免ということで、もう大丈夫だろう。
だから俺は約1週間治療で離れていたモンスターを狩りに行くことにした。
さて、俺が1週間モンスターを狩りに行ってないけど、大丈夫かな?
そして、そんなこんなで俺は久々にモンスターを狩るために隔離されているダンジョン付近まで来たのだが……
「……モンスターいなくね?」
そうなのだ。
1週間前はあんなにモンスターがいたのに、今は全くいない。
こんな事ダンジョンが出てきてから初めてだ。
「うーん。なにかあったのかな?」
俺はそう呟きながらダンジョンのある方へと【飛翔】スキルを使って向かう。
まあ、モンスターはダンジョンから出てきているし、ダンジョンの周辺にはまだ残っているはずだ。
と、そんな事を考えている時期もありました。
「ここにもいねえのかよ……」
ダンジョン付近まで飛んできたのだが【気配感知】にモンスターの反応はなかった。
「どういうことだ?本当になにがあったんだ?」
俺は不思議に思いながらもとりあえずダンジョン内に入る。
……前にこのダンジョンの出入口を【鑑定】していく。
なるほど……【鑑定】結果は『◼️◼️◼️のダンジョン』……
◼️◼️◼️というところがなにかわからないが『ゴブリンキングの巣』みたいにこのダンジョンのボスの名前が入るんだろうけど……
◼️◼️◼️か……これはエルマの時と同じ状態……つまり、エルマと同格かそれ以上になるのか?
……だけどこればっかりは仕方がないか。
今日はモンスターを狩りに来たんだ、尚更モンスターを狩らなければいけない理由が出来た。
それにモンスターを狩れればレベルも上がってその内進化も出きるだろうし、【吸魂】スキルを使って新しいスキルを取得できたりするだろうしな。
モンスターがいないし、ボスが強そうなのは気がかりだが、俺はそのままダンジョンの中に入る。
こうしてダンジョンに入るのも『ゴブリンキングの巣』以来になるがその『ゴブリンキングの巣』とはまったく違ったような印象を受ける。
『ゴブリンキングの巣』は洞窟のような印象を受けたがこの『???のダンジョン』は床も壁も天井も人工的な石畳で出来ており、かなり広い通路になっている。
そして、明かりも壁にロウソクがかけられていてダンジョンという印象が強く感じる。
「とりあえず進んでみるか」
俺はそう言って歩き出す。
それからしばらく歩くが、特にこれといった変化はない。
俺には【マップ】があるし【気配感知】もある。
迷う心配はないしクリアドラコみたいなモンスターがいない限りは問題ない。
そう思ってたんだけど……
カチッ
「……カチッ?」
恐る恐る足元を見てみるとそこには石畳の床の一部、俺の足が踏んでいる場所が沈んでいる。
……あるぇ~?これはまさか……
俺は急いでその場から飛び退く。
すると、その瞬間、俺の立っていた場所に大きな穴が開く。
……やっぱり罠か!
「あぶねぇ……」
なんとかギリギリ回避できたが危なかった。
そろっと避けた落とし穴を覗いてみる。
落とし穴の中は真っ暗で底が見えず、ただ深い闇が広がっているだけだった。
もし、あの時、俺が飛び退いてなかったらどうなってたか……
……落ちてる途中で【飛翔】スキルを使って飛ぶだけか。
なんにも問題なかったわ。
だけど、罠か……
なんだかんだ言って『ゴブリンキングの巣』では最初は常に【看破の魔眼】を使って罠を警戒してたけど、罠がないってわかってから使うのを辞めちゃってたんだよな……
だけどここまでテンプレな罠に引っ掛かるなんて……
しばらくちゃんと罠を見分けられるまでは【看破の魔眼】を使って警戒しておかないとな。
俺はそう心の中で決めてからまた進み始める。
そして、その後も何度か落とし穴やら、毒矢やら、色々仕掛けられていたが全て【看破の魔眼】で見抜いて回避する。
……本格的にダンジョンって感じだな。
だが、もちろんそれだけじゃなくてここはダンジョン。
俺の今日の目的のモンスターもいる。
「おっ、やっとか」
俺は目の前にいる猪を見ながら言う。
「こいつは確か……ワイルドボアだったかな?」
ダンジョンが出現したあの日のモンスターの大群にもいたが、この個体が1番弱かった記憶がある。
俺はとりあえず倒そうと両手鎌を構えて近づく。
するとワイルドボアも俺に気づいたのかカッカッカッと背中の毛を逆立たせて音を出して俺を威嚇してくる。
それに後ろ足も踏み鳴らしていて突進する気満々といった感じだ。
「よし」
俺はそう言ってから近づいて両手鎌を振ろうとするが、その前にワイルドボアが突っ込んでくる。
それを見た瞬間、両手鎌をタイミング良く降るために構える。
そして、ワイルドボアは痺れを切らせて突っ込んでくる。
だが、俺の【看破の魔眼】は見えていた。
「あ、お前そこは」
ワイルドボアの進行方向のある一点の床が赤く光っていることに。
そしてその赤く光っている場所をワイルドボアが踏んだ瞬間、ワイルドボアの姿は消えた。
「あ~あ……まあ、そりゃそうなるよな」
ワイルドボアが消えたのはスキルでもなんでもない。
俺はワイルドボアが消えた所に近づく。
そして近づくとワイルドボアが消えた場所の床には落とし穴が……
まあ、ワイルドボアが消えたのは単純、ただ、落とし穴に引っ掛かっただけ。
……虚しいな……これがダンジョン内で初のエンカウントって……
ま、まあいいさ、とりあえずこのダンジョンにモンスターはちゃんといるってことがわかったのは大きい。
俺はそう思いながら【吸魂】を使って見たが俺の【吸魂】スキルの範囲外なのか全く反応しない。
まあ、いいか。
できれば良いなぁって思って使ってみただけだからな。
「とりあえず先に進もう」
俺はそう言ってまた歩き出す。
……次はできれば1週間分の戦闘勘を少しでも取り戻すために戦闘はしたいなぁ
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