新技術と強敵
ファントムホークの卵を拾った翌日。
俺はまたダンジョンにいた。
ちなみに今日は俺だけではなくてユキもダンジョンについてきている。
正直あのままエルマが出るかも知れないというならそもそもダンジョンに入ることすらなかった。
だけどあいつは無理してきているって言っていたし呼び出されていたからダンジョンには来れないだろうという判断だ。
それに昨日の感じからするにもう出てくることはないような気がしていたからな。
………ていうかあんな化け物に何度も出会ってたまるか流石に連続は勘弁してほしい。
まあ、だからえは来れないという考えで俺は安心してダンジョンに潜っているわけなのだが………
「やっぱりなにかおかしいんだよな~………」
「ガウ?」
俺は今ユキと一緒にダンジョンを探索しているのだが、今回はほとんどユキに戦闘を任せてしまっている。
まあ、理由は俺にあるんだけどね。
「うまく魔力を纏わせられないな………」
「ガウー?」
そうなのだ。
あの時のようにうまく武器に魔力を纏わせる事ができない。
エルマとの戦闘で最後に出来たあの技術が使えればもっと楽に戦えるはずなのにな………
「はぁ……」
「グルァ」
ユキが落ち込んでいる俺を慰めようとしてくれているのか座り込んでしまった俺の顔を舐めてくれる。
「ふふっありがとな。慰めてくれてるのか」
ため息ばかりついていてもしょうがない。
こうなったら少しでも早く強くなってやるさ。
とにかく今は経験し続けよう。
「よし!行くぞ!ユキ!」
「ガルッ!!」
それからしばらくユキと共にダンジョンを歩き続けた。
途中何度か当然ながらモンスターと遭遇したが特に苦戦することなく倒せている。
ただ前までのような手応えを感じない。
これはあれか? レベルが上がってステータスが上がったせいでやりがいがなくなってるのか?
実際エルマを除いて1番強いはずであるゴブリンエリートですら一撃で終わる始末だ。
ゴブリン達なんか言うまでもない。
「うーん……これじゃだめだよな……」
「ガウゥ……」
「ん?」
「グウ」
「え?いやいやいやいやいやいや!!」
「ガウ?」
「え?何その『別にいいんじゃね?』みたいな顔!?」
そんな事を言いながらユキは首を傾げているが、本当にそれで良いと思っているんだろうか?
「よく考えてみろ?こんな弱いモンスターばっかり倒し続けてたらいつまで経っても強くならないじゃないか」
「ガウッ」
「え?」
するとユキはその場でくるりと一回転してこちらを向くと自信満々といった表情で吠えた。
「ガウガーオ」
「……」
俺はユキが何を言っているかわからないが、なぜか説得されている気分になる。
「……そうだよな。このままじゃダメだよな」
「ガウ」
「うっし!油断せずにしっかり安全に!そして無事に家に帰る!それで良いだろ?」
「ガウ」
「よっしゃ!そうと決まればいざ出発!!目指すは最下層だ!!!」
「ガウガウ!」
だからまずはこの階層で感じる気配、全部狩らせてもらうぜ!
ヒャッハー!俺とユキの経験値になってもらうぜぇ!
***
あの後また出来ていたゴブリンの集落の他に数体のゴブリンやゴブリンの進化種と思われる個体を発見したりしたが、全て問題なく倒すことが出来た。
その結果………
「だぁぁぁあっ出来ねぇー!!!」
「ガウ……ガォン」
俺は現在、自分の手に握られている両手鎌を見ながら叫んでいた。
結局あの後も俺は一度も魔力を纏わすことが出来なかったのだ。
「くそぉおおおなんで出来ないんだぁあああ!!!」
「ガフゥ」
俺の隣ではユキが俺を慰めるように頭を擦り付けてくる。
ありがとうユキ………
今はお前の優しさが心に染みる…… だがしかし……
「はぁ……どうすればできるようになるかな……」
そう呟きながら俺はその場に寝転ぶ。
「そもそも魔力ってどうやって纏わせればいいんだよ………」
魔力を流すことは簡単だった。
俺の両手鎌は魔力を通しやすい性質をしてたから魔力を通すことは簡単だった。
だけど魔力を流しても直ぐに魔力が霧散してしまい、武器に纏うことが出来ない。
ただ、オマケと言っていいかわからないが武器ではなく身体に魔力を流す事で身体能力が上がっている事がわかった。
なんで武器は流すだけじゃダメで身体に流すのは効果があるんだろう………
【魔力操作】のスキルレベルが足りないのかな………
「はぁ……」
俺はため息をつきながらも目を閉じる。
今まではただ単に流し込むだけだったから出来なかっただけかもしれない。
なら今度は………俺は目を閉じて意識を集中させる。
イメージするのは刃に薄く広く魔力を広げる感じ…… そのままゆっくりと広げていくように…… そうしていくうちにだんだんと俺の手の中にある武器に何かが集まっていくような感覚がする。
もう少しで………あと少しで出来る気がする………その時……
「ギャギャガァ!」
「っ!?なんだ?」
突然聞こえてきた声に慌てて飛び起きる。
辺りを見渡すとそこには5匹のゴブリンや進化種がいた。
「ちっまだいたのか邪魔しやがって!」
「グウ」
俺が集中するのを辞めて武器を構えようとするとユキが俺の前に立つ。
「グルルルル……ガアァアッ!!!」
次の瞬間にはゴブリン達が真っ二つになり地面に倒れ伏していた。
え?
「………え?今何が起きた?」
「ガウ」
「いや、うん。それはわかっているんだけどさ……」
今の一瞬でゴブリン達をユキが爪で切り裂いたのはわかる。
だけど爪でそんな真っ二つに出来るのか?
「……すごいなユキ。まさかここまで強くなるなんて思ってなかったぞ」
「ガウ♪」
………ユキもこのまま戦えば人とモンスターの2つの利点を持ってる俺までとは言わないけど同じぐらいにはなってくれるかな?
………よし!決めた!
「やるぞ!ユキ!」
「ガウ?」
「もっと強いモンスターを倒してレベルを上げて、強くなってダンジョンを攻略しよう!!」
「ガウガーウ!!」
よし!そうと決まれば早速行こう!!
「行くぞユキ!!」
「ガルッ!!」
俺とユキは意気揚々とその場を後にした。
おら!殲滅じゃごらぁ!
***
「これは………でかすぎない?」
「ガウ………」
4階層を完全に殲滅し終わった俺とユキは5階層に続いている階段を見つけ、そのままの足で5階層に向かう。
5階層に着くとそこはまた1~3階層のような洞窟みたいな場所だった。
その奥に見えるのは大きな大きな扉。
………でかいなぁ………俺何人分だろう?
それになんだろうこれ?
「とりあえず入ってみるか」
「ガウッ」
そう言って俺とユキはその巨大な扉を開ける。
ギィイイ
わりと簡単に開くことが出来た。
中に入るとそこには……
「あれ?」
1匹のゴブリンしかいなかった。
でも普通のゴブリンじゃない。
俺よりも身長は高いし筋肉質だ。
そして1番の特徴は肌の色が黒いこと。
「なんか今までのゴブリンと比べて強そうだな」
「ガウ」
「まぁ関係無いんだけど」
俺はゴブリンに向かって油断せずに駆け出す。
それを見たゴブリンもこちらを向くと腰を落として両手剣を構えた。
「ふっ!!」
俺は勢いのままゴブリンの懐に入り込み、持っていた両手鎌を横に薙ぐ。
「ガウゥ!」
ユキも自慢の歯で噛みつくために飛びつく。
しかしゴブリンはそれを両手剣で受け止めた。
「嘘だろ!?」
「ガゥ!?」
そしてそのまま力任せに弾き飛ばされて俺とユキは距離を取らされる。
なんなんだあいつ………
「【鑑定】………」
------
名前:なし
性別:♂
種族:ゴブリンジェネラル(亜種)Lv:48
体力:9400/9400 魔力:480/480
攻撃:5050
防御:3800
俊敏:1900
器用:1700
知力:950
幸運:90
所持SP45
魔法スキル:無し
取得スキル:【剣術Lv8】【攻撃強化Lv3】
【身体強化Lv6】【気配探知Lv7】
固有スキル:【闘気Lv.3】
称号:小鬼将軍
------
え?強くない?
これを見た瞬間逃げようと思って入ってきた扉に手をかけたがびくともしない。
………戦うしかないのか………
ちなみにこれが今の俺のステータスだ。
------
名前:神山 空
性別:男
年齢:16歳
種族:ハイヒューマンLv.26
ゴースト(亜種)Lv.23
職業:処刑人Lv.32
魔導師Lv.32
体力:3500/3500 魔力:7856/7856
攻撃:3600
防御:1890
俊敏:2540
器用:1960
知力:6800
幸運:654
所持SP825
魔法スキル:【風魔法Lv.7】【火魔法Lv.6】【付与魔法Lv.5】【回復魔法Lv.3】【水魔法Lv.1】
取得スキル:【暗記Lv.4】【速読Lv.2】【柔術Lv.5】【鑑定Lv.5】【看破の魔眼Lv.3】【飛翔Lv.4】【怪力Lv.5】【跳躍Lv.1】【斬撃強化Lv.4】【頑強Lv.3】【吸収Lv.7】【棍棒術Lv.9】【アイテムボックスLv.5】【鎌術Lv.7】【錬金Lv.5】【鍛冶Lv.3】【絵画Lv.2】【マップ】【気配感知Lv.5】【拳術Lv.4】
種族スキル:【魔力操作Lv.7】【魔力増加Lv.5】【物理攻撃耐性Lv.3】
職業スキル:【知力強化Lv.7】【魔力消費減少Lv.3】【魔法威力上昇Lv.3】
【並列魔法Lv.1】【首狩りLv.2】
固有スキル:【吸魂Lv.4】【デスサイズLv.1】
称号:境界の管理者の協力者
------
こんな感じである。
いや、俺は弱くないよ。
少なくともこのゴブリンジェネラル以外のゴブリン達には無双出来るぐらいには。
でもこのゴブリンジェネラル強いよ?
俺とユキの攻撃を片手で防いだし。
しかも亜種ってことは通常の個体より強いってことだ。
………さてどうしよう…かな………まあ、少なくともユキは待機だな確実についてこれない。
「ユキ!お前は待機!」
「ガウ!?」
「いいから!」
「ガゥ……」
俺はゴブリンジェネラルに向かって駆け出す。
「はぁああ!!」
そしてそのまま両手鎌を振り下ろす。
「………ッ!!」
ゴブリンジェネラルはそれを両手剣で受け止める。
しかし俺はそのまま押し込んでいこうとするがびくともしない。
力強すぎだろこいつ!
「なら!」
俺はそのまま鍔迫り合いをわざと力を抜くようにして後ろに下がる。
「………」
ゴブリンジェネラルはそのまま両手剣を思いっきり振り下ろしてくる。
「【ウインドカッター】!」
それを横っ飛びで回避して立ち上がると同時に風の刃を放つ。
「グギャ!?」
それは見事命中するがあまりダメージはなさそうだ。
なんだ、!?硬いなこいつ!?
ユキのいる辺りまでひとまず戻る。
え~こいつ倒すのキツそうなんだけど勘弁してくれない?
ダメ?………はい、わかりましたやらせていただきます………
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