強敵と敗北
「ふぅ………」
今、俺の視界には足元にダンジョン『ゴブリンキングの巣』の4階層に続く階段がある。
ここまでの道中は、特に苦もなく順調に進んでこれた。
勿論倒したはずのゴブリン達が復活していたが、それでも問題なく倒すことができたしな。
ただ1つだけ気になることがあるとすれば、昨日見たゴブリンライダーは1体も見なかった。
なんでゴブリンライダーが居ないかはわからないが居ないのは好都合だ。
何気にあいつら足が早いから面倒なことこの上ないんだよなぁ………
そういえばゴブリンライダーと言えばユキだが今ユキはここに居ない。
ユキは今日探索するのが4階層ということもあって初めての階層だったのでエスカリアさんとアーニャさんの護衛という形で一緒にいてもらっている。
「うっし!行くか!」
俺は気合いを入れ直して4階層への階段を降りて行った。
だが、4階層に降りると思考が止まってしまった。
そこは今までのような淡い光を放っている洞窟ような光景ではなかった。
さっきまでみたいな洞窟ではなく草原みたいだった。
しかもただの草原ではなく太陽がある。
………あれ?
ここダンジョンだよな?
「おいおいマジかよ……」
4階層へ降りる階段を降りた瞬間にいきなり景色が変わったことで唖然としてしまった。
こんなことってあるのか?
確かにダンジョンっていう常識の通用しない場所だけどいくらなんでもこれはないだろう……
でもまあそんなこと言ってても仕方ないしとりあえず進むしかないか。
「よし、じゃあ行こうかな……」
そして改めて歩き出そうとした時、突然背後から気配を感じた。
振り返ると同時に咄嵯に飛び退いた。
そこには全身ボロボロの黒色のローブを着た何かがいた。
腰には西洋剣が1本携えられていた。
見た目的には人型ではあるが顔はフードを被っていて見えない。
「………なんなんだお前?」
その黒いやつは口を開く。
「ふふっそうだね。何者だと思う?」
「………【鑑定】」
俺は前にいる黒いやつに気づかれないように【鑑定】を使う。
------
名前:◼️◼️◼️・◼️◼️◼️◼️◼️(◼️◼️◼️◼️・◼️タ◼️◼️・◼️◼️◼️◼️◼️)
性別:男
種族:◼️◼️Lv.◼️◼️
体力:◼️◼️◼️◼️◼️/◼️◼️◼️◼️◼️ 魔力:◼️◼️◼️◼️◼️/◼️◼️◼️◼️◼️
攻撃:◼️◼️◼️◼️
防御:◼️◼️◼️◼️
俊敏:◼️◼️◼️◼️
器用:◼️◼️◼️◼️
知力:◼️◼️◼️◼️
幸運:◼️◼️◼️◼️
所持SP21
魔法スキル:【闇◼️◼️Lv.◼️】【◼️◼️◼️Lv.◼️】
取得スキル:【◼️◼️Lv.◼️】【◼️◼️Lv.3】【◼️◼️Lv.◼️】【◼️◼️◼️◼️Lv.◼️】【◼️◼️◼️◼️Lv.◼️】【◼️◼️◼️Lv.◼️】
固有スキル:【◼️◼️◼️◼️Lv.◼️】
称号:◼️◼️◼️◼️◼️ 元◼️◼️
------
嘘だろ………っ!?
ステータスが、見えない………っ!?
だけどそれぞれのステータスの桁からして俺よりは強いはずだ。
こいつは一体何者だ?
ここにいるってことは少なくともこっちの世界の人間じゃなくて異世界から来ているはずだ。
「お前は何者だ?目的はなんだ?」
「あれ?見えなかった?さっき【鑑定】したんでしょ?」
………クソッ………バレてる。
「ああ、見たよ。けど見えなかった。それで答えは?」
「そうだな~しょうがない教えてあげよう!僕の名前はエルマ。魔王軍の幹部だよ」
…………え? 今なんて言ったんだ? いや、待て。落ち着け。
聞き間違いかもしれないしな。うん。
「……もう1回聞いてもいいか?」
「ん?だから僕は魔王軍の幹部だって言ってるじゃん」
………やっぱり聞き間違えじゃないっぽいな。
まず戦闘では勝てないだろうどうやって逃げるか………
「なんで魔王軍の幹部がここに居るんだよ……それにここはダンジョンの中だろうが!」
「なんでって言われてもねぇ~ただ、このダンジョンのボスが元部下だからかな」
「はぁ!?どういうことだ!?」
「言葉の通りだよ。僕の部下がここを管理してるの」
そう言いながら魔王軍の幹部であるエルマは指を指した。
指が向いている方向は下。
エルマが指を指している所にダンジョンマスターでありボスであるゴブリンキングがいるのだろう。
「そういうわけでちょっと倒される訳にはいかないからここから先へは行かせないよ!」
そう言うとエルマは腰にあった西洋剣を抜き放ち斬りかかってきた。
「チィッ!やるしかないか!」
俺は咄嵯に【看破の魔眼】を発動して持っていた両手鎌の柄で防御しようとした。
だが嫌な予感がしてバックステップをすると次の瞬間にはさっきまでいた場所に無数の斬撃の跡ができていた。
ヤバかったな今のは…… ギリギリ避けれたがもしあのまま突っ立っていたら間違いなく真っ二つどころじゃなかった。
「へぇ〜今のを避けれるんだ」
今度はさっきよりも速いスピードで向かってくる。
俺はそれを横に避転がるようにして回避する。
だが避けられることを読んでいたのか、横に移動していた俺に向かって剣を振り下ろしてきた。
「うおぉっ!?」
なんとかしゃがみこんで避けることができた。
そしてすぐに立ち上がりその場から飛び退くと地面が切り裂かれ砂煙が上がる。
「………!?あっぶねえ!」
さっきから攻撃が全く見えない。
感で避けることしかできない。
「ほらほらどうしたの?反撃しないと死んじゃうよ?」
「くそったれ!【ウィンドカッター】!【ファイアジャベリン】!【ウインドアロー】!」
1発でも当たれ! そんな願いを込めて魔法を放つ。
しかし、放った魔法は全て紙一重の差で全てかわされてしまう。
そしてまたもや一瞬にして距離を詰められ攻撃をしてくる。
「……ぐあっ!?」
何とか避けたり両手鎌で防御して致命傷は防いでいるもののどんどん追い詰められていく一方だ。
「ハァッハアッ……」
「ふぅーんまだ生きてるんだ」
ダメだ。
エルマとステータスが違いすぎる。
なんとか逃げないと死ぬぞこれ。
「あ、そうだいい事思いついちゃった」
エルマは何か思いついたのかニヤリと笑みを浮かべると右手を前に突き出す。
何をするつもりだ?
「【ダークアロー】」
黒い矢のようなものが無数に現れこちらに向けて放ってくる。
「おいマジかよっ!!」
魔法を放っている暇もないため、とにかく走り続ける。
「ほらまだまだ行くよ~【ダークアロー】」
「っ!!?」
走っている俺の横を矢が通り過ぎていき後ろの方から次々と爆発音が聞こえてくる。
「はぁっ、はあっ、クッソッ!!!」
「逃がさないよ」
「っ!?」
いつの間にか後ろに回り込まれてしまったようだ。
エルマは既に剣を振りかぶっているだろう。
マズイ!このままだと確実に殺される。
なら………っ!!
「【デスサイズ】!」
進化して新しく手に入れたスキル【デスサイズ】を使う。
このスキルは相手の魂に直接攻撃できるという固有スキルだが使わないでただ打ち合うよりはマシだろう。
そして【デスサイズ】を使った俺の両手鎌とエルマの西洋剣が激突する。
「グゥッ!!!」
重い一撃が両手に襲いかかり骨が砕けそうなほどの衝撃を受ける。
その隙を狙い、一旦距離を取りもう一度【デスサイズ】を発動させる。
「これで終わりだよ」
そう言いながらエルマは上段から斬りかかってくる。
だが、それはフェイントだったようで、本命は突きによる攻撃のようだった。
その攻撃は西洋剣に魔力が流されているようだった。
それを見た俺も瞬時に両手鎌に魔力を流して受け止める。
「なっ!?受け止められた!?」
エルマは驚きの声を上げる。
「オラアァァァ!!!」
そのまま力任せに押し返しエルマを吹き飛ばす。
だけど俺も無事じゃ済まなかった。
「ぐああぁぁぁ!!!」
両腕の骨が粉々になり激痛が走る。
痛みで意識が飛びそうになるが歯を食いしばり耐え抜く。
「はあ……はあっ……」
俺はその場に倒れ込み荒い息を繰り返す。
ヤバイ………もう体が動かない………
「まさか僕の攻撃を弾くなんてね。正直驚いたよ」
「そりゃどう……も……な……」
「あれ?君喋れるほど余裕あるんだ。意外とタフなんだね」
「……お前を倒すまでは死んでられないんでね……」
さっきエルマに攻撃できたお陰か少しだが【吸収】のスキルで体力が少し回復できたと思う。
だからあともう少しだけ頑張れる。
「そっか。でも君の負けだ」
「…………?」
「だけど僕の勝利でもない。引き分けだ」
エルマがそう言うと足元に魔方陣が出てくる。
「なっ!?」
「呼び出しだ。僕は魔王軍幹部、忙しいんだよ。ここにいるのもかなり無理をして来ているんだ」
エルマは言葉を続ける。
「だけど無理をしていた甲斐があった。気に入ったよ、君は面白い。魔王様には報告しておかないでおくよ」
「………なんでだ?報告すれば簡単に俺なんて潰せるだろ………」
「言っただろう?君を気に入った。他のやつになんて殺らせはしない。僕がぶっ倒すそれまでせいぜい生きているんだね」
腹立つ………!
でも………これが今の俺の実力だ。
エルマに逃がしてもらえてなかったら多分ここで殺られてた。
「………俺を生かした事後悔するぞ」
「面白い。君、名前は?」
「………神山、神山 空だ。お前は」
「僕かい?僕はエルマ、エルマ・ヴィレント君を殺す者だ」
「お前なんか負けるかよ………」
そんなことを言っているとエルマの足元の魔方陣が1層強く光だす。
「じゃあね。ソラ、次は殺す」
その一言と同時にエルマの姿は消える。
それを見た俺は背中から倒れる。
生きれた………
………初めて死ぬかと思った。
疲労感が半端じゃない。
ジャージだってボロボロだし血が滲んでいる場所もあるし【吸収】スキルで吸収して体力が回復しても回復しきれない傷だってある。
「引き分けって言ってたけどあれは俺の負けだ」
初めての負けだった。
今まで戦ってきたのが格下ばっかりだったのも油断の原因だったんだろう。
「次は負けない………」
誓う。
あいつにも他のやつにも絶対に負けない。
なんとしてでも勝つ。
とりあえず動けるようになったら感じてる気配を狩りに行こう。
そして俺は動けるようになった瞬間【気配感知】で感じ取っているゴブリン達の気配の元に行きそこにあったゴブリンの集落を潰してきた。
そして3、2、1階層のモンスターが消えたのはまた別の話。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます