買い出しと修羅場の予感?

とりあえずエスカリアさんを部屋に送った。

そしたら直ぐにアーニャさんが来てエスカリアさんの服を着替えさせてくれた。

勿論俺はそのままエスカリアさんが着替えている間、部屋にいるわけはなく部屋から出ていって居間で待機していた。


「お待たせしました」


そう言って居間に戻ってきたのは俺が用意しておいた服に着替えたエスカリアさんだ。

さっきみたいな寝ぼけたような感じではなくてしっかりとした雰囲気に戻っていた。


「もう大丈夫ですか?」


「はい。すみませんでした。少し寝不足だったみたいで………でも、もう大丈夫です」


どうやら本当に大丈夫なようだ。

ならこれ以上は気にしても仕方ないか。


「じゃあほら、朝食食べちゃえば?ね?アーニャさん、お願いします!」


「はい。では準備致します」


俺は既に食べ終わっているので後は2人が食べるだけだ。

エスカリアさんが座ったところで早速アーニャさんが朝食の準備を始めてくれている。


まあ、俺と同じでサンドイッチを作ってるんだろう。

てかよく考えたらそんなちゃんとした料理が作れるくらいの食材はなかったと思うし。


その証拠にアーニャさんが出してきたものでテーブルにはサンドイッチと紅茶しかない。


今日買い出しに行っておかないとダメだろうなぁ。

それにエスカリアさんとアーニャさんの服も買いに行かないとだし。

お金はあるけど無駄遣いしないようにしないと。


「今日は何をしましょうか?」


朝食を食べながら今日の予定を話し合うことにした。


「そうですね……私は特にこれと言って用事はありませんからリク様についていきますわ」


「私も同じく」


2人とも特に何もないらしい。

まあ、そうだよな2人共こっちの世界に来たばっかりなんだから。


「わかったよ。それじゃまずは買い物に行こうか。食材を買いに行かなきゃだけどその前に2人の服とかを買いに行こうか」


「えっと………」


「私の分は別にいいですよ?この服だけで十分ですから」


遠慮しているのかアーニャさんが自分の服はいらないと言う。


だが、それは却下だ!


「ダメ。これから一緒に暮らすんだからいつまでも同じ服を着てるわけにもいかないじゃん」


「………わかりました………」


「はい。それでいいんです。あと、エスカリアさんもね」


「私は元々あまり着飾ったりしない方なのでこれで十分なのですが………それに言葉も通じませんし………」


あれ?


「アーニャさん、まだあれ渡してなかったの?」


「はい……」


さてはアーニャさん忘れてたな?


「ちょっと待ってください。今渡しますから」


そう言ってアーニャさんはポケットから俺が徹夜して作った【言語理解】のスキルが付与されている指輪を出す。

そしてアーニャさんはポケットから取り出したその指輪をエスカリアさんに渡す。


「これは?」


「【言語理解】のスキルが付与されてる指輪だよ。これをつけていれば言葉がわかるようになるはずだよ」


「ええ。テレビでニュースというものを拝見させていただきましたが言っていることが全て私達が使っている共通語に聞こえていました」


「………アーニャさん、いつの間に確認してたの?」


「?カミヤマ様が居間に帰ってくるまでに確認しておきましたが」


「そうですか……」


どうやらアーニャさんはあの朝ご飯を用意していたであろうあの時間でテレビを見て色々と情報を仕入れていたようだ。


しかもしっかりとそれを報告してくるあたりしっかり者なんだなぁと思う。


「そうでしたか。ありがとうございますカミヤマ様」


「いえいえ良いですよ。それよりつけてみて下さい」


俺は指輪を渡して付けてもらうように促す。

するとエスカリアさんは直ぐに左手の薬指に嵌めてくれた。


………っておい、ちょっと待てや。


「何で左の薬指なの!?」


「えっ?何かいけませんでしたか?」


キョトンとしている。

まさか天然なのか? いやいやまあ確かに日本では結婚指輪なんかは左手の薬指にする風習がある。

だが俺達は結婚していないんだ。

だから左手の薬指以外にでもするべきじゃないのか?

俺の感覚だとそうなんだけど違うんだろうか。


う~ん。

異世界ってこういうところはこういう弊害も出てくるのか………


「どうかされましたか?」


エスカリアさんが何も言わない俺を不思議に思ったのか聞いてくる。


「あーうん。なんで左手の薬指に嵌めたのかなって思ってさ」


「?なにかおかしいでしょうか?」


ああ。

やっぱりわかってなかっただけだったか。


「おかしくはないけど、俺達の国では左手の薬指にするのは結婚とか、婚約とかそういう意味があるんだけど………」


「そうだったのですか。でも私は気にしませんよ?」


そう言って笑顔で微笑んでくれる。俺的には少しというか結構困るんですけど………

まだ学生の身分だし、そもそもエスカリアさんと結婚する予定なんてものは無いんだし………それに恐れ多いし。


「いや、気にしてほしいんですけど………」


「いえ。だって結婚したらずっと一緒にいるんですよね?なら問題無いと思いますが?」


「いや、それとこれとは話が別じゃないかなぁと思うけど」


「ですけど私だけではないと思いますよ。ね。アーニャ」


「えっ!?そ、それは………」


いきなり話を振られたアーニャさんは顔を赤くして俯いてる。


え?どういうこと?


「アーニャ~私は見たわよ~あなたはどこに指輪を嵌めていたかしら?」


「えっと……その……」


「………アーニャさん?ちょ~っと教えてくれませんか?なんか今後のためにも知っておかないといけない予感しかしないんで」


俺は自分でもわかるくらいとても良い笑顔でアーニャさんに問い詰める。

俺に問い詰められているアーニャさんは一目でわかるくらい動揺している。


「えっと………そ、そんなことよりお嬢様、カミヤマ様、買い物に行きましょうか!そうしましょう!」


「………ええ。そうね」


「………アーニャさ~ん?エスカリアさ~ん?」


アーニャさんとエスカリアさんは俺が呼びかけても返答することはなく部屋を出ていってしまった。


「はぁ~………」


俺は財布を持って2人の後を追って玄関に向かうがそこには2人の靴はなかった。

どうやら先に外に出て行ってしまっているらしい。


はぁ……まあいいか。


その後、結局アーニャさんもエスカリアさんも俺の言葉に返事をしてくれなかったのでそのままその話題に触れること無く近くのショッピングモールに行き買い物を始めた。

まずは食材の買い出し。

3人分となったから量もかなり多い。

両手じゃ足りないくらいだ。

前までの俺だったらこれで家に帰っていたが、それらを全部人目のつかない所に入って【アイテムボックス】にしまい込む。


………本当に便利だな【アイテムボックス】。


それじゃあ………次は服かな?

女性用の下着とか買うわけにもいかないし、とりあえず自分の着るものを買ってもらおう………って思ったんだけどな~………


「カミヤマ様どうですか?」


「カミヤマ様どうでしょう?」


2人は今試着室の前で待っている状態なんだけど、正直な話、2人とも美人すぎて周りの視線がすごいことになっている。

俺は最初こそは店員さんに話しかけて2人を任せたあとなるべく人目に触れないようにしてもらっていたのだが、流石にずっと2人を任せるという訳には行かず、諦めた。

するとどうだろう。

何故か知らないけど周りからの目がさらに鋭くなった気がしたのだ。

しかも男どもからは殺意すら感じる。

これは早く選ばないと不味いなと思ってはいるのだがやっぱり2人は女の子。

見たことのないような服で選ぶのに時間がかかるようだ。

ちなみにこのやり取りは既に2桁を超えている。


「カミヤマ様?聞いてますか?」


「カミヤマ様?」


おっと。

いけないいけない。


今はエスカリアさん達に似合いそうな服を選ばないといけないんだった。


でもなぁ。

こんな彼女いない歴=年齢の俺に女性の服装のことなんてわからないぞ? もういっその事適当に決めちゃうか? いやでもそれは失礼過ぎるしなぁ………


「うん。2人共とても似合ってるよ。可愛いし綺麗だと思うよ」


結局無難な答えしか出なかった。

でも実際本心だし嘘じゃないからいいよね。


「ありがとうございます。カミヤマ様にそう言っていただけると嬉しいです」


「私も嬉しく思います」


よし。

なんとか機嫌を損ねることは回避できたみたいだ。

………あの返答ばっかりだけど良かったのかなぁ………?


その後も何件かハシゴをしてやっとのことで服は買い揃えられたらしい。

今の2人は買ってきた服の内の1着を着ている。

エスカリアさんは水色のワンピース。

アーニャさんは茶色のセーターに近いような服と紺色のロングスカートを履いている。


うん。

2人共服だけじゃなくて髪の色も相まってとても似合っている。


「次はえっと………下着ですね………」


「ええ。そうですね」


「……はい」


俺がそういうとアーニャさんは顔を赤くしてしまった。

勿論俺も顔が真っ赤だと思う。


だけどなんでエスカリアさんはそんなに気にしてなさそうなの?


とりあえず2人を女性ものの下着を取り扱っている店に2人を案内する。

そしてそのまま2人を置いてその場を離れようとしたんだけど2人に腕を掴まれてしまった。


「え?あの………なんでしょうか?」


「カミヤマ様がいてくれた方が安心できるんです。一緒に来ていただけませんでしょうか?」


エスカリアさんは顔を赤くしたまま上目遣いで俺を見つめてくる。


「カミヤマ様お願いします」


アーニャさんも同じように俺のことを見つめてくる。


………… いや、でもなぁ。

さすがに恥ずかしいし、それに他のお客さんもいるし、店員さんも見てるし、俺がいたら邪魔になると思うし俺がいない方が良いと思うんだけど。


「ダメ……ですか?」


「……わかりました」


結局俺は2人の押しに負けて一緒に入ることになった。

エスカリアさん達は次は下着の物色に入る。

だけど俺は店内にいる他のお客さんや店員の人に見られている。


うぅ……居づらい。


でもまあ、ここで変なことしたらそれこそ大変なことになるし、我慢しよう。


「カミヤマ様。こっちとこっちではどちらが良いと思いますか?」


「ど、どうでしょうか?」


俺は2人が手に持っている下着を見せられる。…… いや、本当に勘弁してください! 俺にはこういうの無理だって!!︎ だから、俺は慌てて答える。

それが間違いだと知らずに。

なぜなら…… その結果、更に周りの視線が鋭くなり、俺は2人の下着選びに付き合わされることになってしまったからだ。


………どうしろと?


……………… その後、何とか2人が下着を選び終わるまで耐えきった俺は、会計を済ませ、エスカリアさん達と一緒に店を後にする。


………精神的に疲れた………


「申し訳ありませんカミヤマ様」


「カミヤマ様ごめんなさい」


2人は俺の顔を見るなり謝ってくる。


………うん。

別に2人が悪いわけじゃないんだ。

ただ、周りからの視線が痛かっただけだからね。


「大丈夫だよ。それより次はどこに「あれ?空さん?」うん?」


誰かに名前を呼ばれた気がして後ろを振り向くとそこには以前俺が入院中にお見舞いに来てくれた雪奈ちゃんと雪奈ちゃんの妹の玲奈ちゃんががいた。


「あっ。やっぱり空さんだ」


「………本当だ………こんにちは」


「おう、こんにちは。2人も買い物か?」


「………うん」


「はい。そうですよ」


「そうか。2人は仲良いな」


「ふふん♪当然です!」


「……うん……」


「………って違いますよ!なんで空さんがここにいるんですか!?入院中のはずでしょ!?」


「ああ。まあ、色々あってさ………」


「………その色々を知りたい」


「「……」」


相変わらずこの姉妹は反応が違うなぁ。

でもこれは言えないから仕方ないんだよなぁ。

てかエスカリアさんとオースターさん反応がなくて怖いんですけど………


「ところで空さん。そちらの方々は?」


「ああ。そっかまだ2人を紹介してなかったよね、

2人は俺の家に居候してる」


「えっ!?そうなんですか?」


「……本当に?……」


「うん」


2人とも驚いている。

まあ、そりゃそうだよなぁ。


「はじめまして。私はエスカリア・ウタリア・オースターです。カミヤマ様の婚約者です」


「同じく初めまして。アーニャと申します。オースター様とカミヤマ様のメイドです」


そうそう。

そうやってちゃんと自己紹介してね………え?


「え?え?え?えぇー!!!!!」


「………嘘………」


雪奈ちゃんも玲奈ちゃんも驚きの声を上げる。

それもそうだろ。

いきなりこんなことを言われたら誰だって驚く。


「ちょ、ちょっと待ってください!どういうことですか!?俺ら別に婚約者でもなんでもないしアーニャさんも俺のメイドじゃないでしょ!?」


そして俺の言葉に反応してか俺を4人共顔を向ける。


「「空さん(くん)?」」


「「カミヤマ様?」」


「「「「ちょっとそこでゆっくり話しましょうか」」」」


俺の発言にそれぞれ2人ずつ声を揃え、最後には4人で声を揃えてきた。

その声はとても恐ろしい声で俺は一瞬にして黙ってしまった。


それから俺は雪奈ちゃん達4人にショッピングモール内のカフェに連行されていったのだった。

他の男が端から見たらめちゃくちゃ羨ましい光景だろう。

だけどこの4人の雰囲気を感じたらそんな考えはどこかに吹き飛ぶだろう。

それぐらい雰囲気が怖い。


………俺生きて帰れるかなぁ………

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