【アイテムボックス】は便利

家を出る前になにか武器を持っていった方がいいかと思い家の倉庫から草刈り用の鎌を持ってきた。

………頼りないかもしれないがこればっかりはしょうがない。

包丁とかの方がよかったかもしれないが包丁は料理するのに必要だから使いたくなかったし、それ以外だとすぐには思い付かなかったんだから。

………なんとか上がったステータスで誤魔化しながら戦うしかないな………


「よし、行くぞ」


そして俺は意を決して家を出たのだった。





「ないな………」


あの後また自転車をこいで規制線が張られていた近くの路地裏から【飛翔】スキルを使って昨日ゴブリン達を倒した場所まで飛んできた。

【飛翔】スキルにはスキルを使っている本人を守る効果があったのか結構スピードを出していたのに風を一切感じなかった。

それで魔力切れになることもなく問題なく目的地である俺がゴブリンを倒した場所までやって来たのだが魔石がどこにもなかった。

場所が違うというわけでもなく、俺がゴブリンを倒すために【飛翔】スキルを使って上から撃った【ウインドアロー】の跡が地面に残っている。

この跡は直してもいいけど一応の目印として残しておこうと思う。

魔石はもしかしたらゴブリンが先に持って行ってしまった可能性もあるんだけどそれだと困る。

魔石がゴブリンにどんな影響を与えるか分からないから魔石を持っていかれるとまずいんだよな。

まぁその辺は行ってみないとわからないけどさ。


「うーん、とりあえず探すしかないよな」


まだ時間はあるはずだから少しだけ探してみるとしよう。

………まあ、一番は野生の動物が持っていってくれててゴブリンはあの5匹だけっていうのが一番良いんだけどな。

そう思って俺はもう一度【飛翔】スキルを使い空へと飛んだ。


「やっぱりいないな……」


それから1時間ほど飛び回ってみたけど結局見つからなかった。

どうやら本当にもういないようだ。

まぁ、これだけ探しても見つからないってことはそういうことなんだろう。

幸い飛んでる時に【飛翔】スキルのスキルレベルが上がったから消費魔力が減ってくれたおかげでまだ魔力に余裕はある。

それにこれ以上飛ぶと魔力切れも怖いからそろそろ切り上げようと思っていたところだった。

草からガサガサッという音と共に出てきた存在とばっちり目が合う。

そこには見覚えのある。

具体的には昨日倒した覚えのある存在。

そいつは身長140センチほどの緑色の肌をした醜悪な姿。

そう。

ゴブリンである。


「………」


「………」


お互い無言のまま数秒の時間が流れる。

……え?

咄嗟の事でしばらく思考が止まってしまった。

だけどそんな俺とは違い、ゴブリンの方はすぐに行動に移した。


「ギギャアッ!」


「うぉぉぉぉお!危ねえ!!!」


ゴブリンは叫び声を上げながら手に持っていた棍棒を振り下ろす

だがそれは咄嗟のガードに使った腕に当たってしまった。


「グギャッ!!」


「痛っ!」


当たった瞬間鈍棍棒の重さと勢いに負けてそのまま背中から地面に叩きつけられてしまう。

腕がズキズキと痛む。


「グギャギャ!」


それを見たゴブリンはまた棍棒を振り下ろしてくる。

だが、俺はその振り下ろされてきた棍棒を両手で掴む。

すると棍棒を振ってきたゴブリンは驚いたような顔をして棍棒を動かそうとするが俺に捕まれていてピクリとも動かない。

それもそうだ。

突然俺に両手とはいえ止められたしそれだけではなくピクリとも動かせないのだから。

でも、こっちだって驚いている。

まさかここまで力の差があるとは思っていなかったからだ。

確かに昨日見たゴブリンのステータスとそこまで変わっていなかったら俺はゴブリンの攻撃のステータスと比べると約3倍になる。

まだステータスが幽体離脱(仮)をしていない状態でも適応されているか分からなかったがこれで分かった。

しっかりあのステータスは適応されてるって。

しかし、俺も襲われる可能性を考えていたけどまさかこんなにも早く、突然来るとは思っていなかった。


「あまり舐めるなよ!」


「グギャ!?」


両手で掴んだ棍棒を力任せに奪い取る。

そして奪った棍棒でゴブリンを思いっきりぶん殴った。

すると俺に殴られたゴブリンは2メートルほど吹っ飛んでいき、木に激突するとそのまま動かなくなった。

するとゴブリンの体が塵になっていき見覚えのある球体が落ちた。

魔石だ。


『種族レベルが上がりました。レイスLv.13になりました』

『スキルポイントを3獲得しました』

『職業レベルが上がりました。魔法使いLv.2になりました』

『スキルポイントを1獲得しました』

『職業レベルが上がりました。魔法使いLv.3になりました』

『スキルポイントを1獲得しました』


レベルアップの音声が聞こえてくる。

ってことは………


「……勝ったのか?」


俺はなんとか勝つことが出来たらしい。

しかし、今のは危なかった。

ゴブリンが不意打ち気味に襲ってきたからしっかり棍棒による攻撃を受けてしまった。

今回はたまたま問題はなかったが、頭に受けてたら危なかったかもしれない。

もし、俺が油断していなかったらステータス差を考えればゴブリンに全力で攻撃してきたら一撃で終わっていたと思う。

だけどそれは油断してなかったらだ。

今みたいに油断して不意打ち受けて終わりなんてのが一番ダメだ。

これは死んでもコンティニューできるゲームとかではなく現実の一回死んだら終わりだ。

コンティニューなんてものはない。

………うん?

だけど俺が死んだらどうなるんだ?

そのまま死ぬのか?

それともレイスとして生きることになるのか?

…わからん。

まあ、どちらにせよ今は生きてる。

それでいいか。

とりあえず魔石を拾いに行こう。


「さて、この棍棒どうしようかな……」


ゴブリンを倒してもまだ残っている棍棒を見て考える。

【棍棒術】のスキルは持っているから持っていても別に問題はない。

だけど棍棒はゴブリンに合わせて作られているからか俺からしたらかなり短く感じる。

それにゴブリンの持っていた棍棒だからなのか少し汚れているし正直使いたくないそ俺の持っているスキル【斬撃強化】のスキルがこれだと効果を発揮しないだろう。

なので棍棒は拾ってきた魔石と一緒に拾ってきたアイテムボックスに入れておくことにした。

そして代わりに草刈り用の鎌をアイテムボックスから取り出す。

これなら普通に使えるし【斬撃強化】スキルも効果が発揮されるだろう。


「………あっ忘れてた吸魂」


ゴブリンを倒したことで魂がこの辺を漂っているはずだからどこかに行く前に【吸魂】スキルを使っておこう。


「【吸魂】」


すると見えないが俺に吸い込まれていく感覚が起こる。


『ゴブリンの魂の吸収を確認。経験値を685、【棍棒術】のスキル経験値を獲得』

『種族レベルが上がりました。レイスLv.14になりました』

『スキルポイントを3獲得しました』

『職業レベルが上がりました。魔法使いLv.4になりました』

『スキルポイントを1獲得しました』

『職業レベルが上がりました。魔法使いLv.5になりました』

『【魔力消費減少Lv.1】を獲得しました』

『スキルポイントを1獲得しました』

『職業レベルが上がりました。魔法使いLv.6になりました』

『スキルポイントを1獲得しました』


ここで打ち止めか。

まあ、十分だろう。

それより早速新しいスキルを手に入れられた。

名前はまんまだけど多分これで魔力を使うとき消費が減るのかな?

効果は分からないけど使ってみれば分かることだろう。

だけど調べものをしてたからかもう日も落ちてきている。

暗くなってからさっきみたいに不意打ちを食らうのは勘弁してもらいたい。

………とりあえず今日はここまでにして帰るとするか。

鎌を出した意味よ………

その後は魔力が回復するまで待って【飛翔】スキルで家まで帰ってしまって自転車を忘れてしまったとさ。

………ちゃんと後で取りに行ったよ?

ほんとだよ?

関係ないけどアイテムボックスって便利だね。

あと【飛翔】スキルは自転車よりめちゃくちゃ早いね。

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