初めての魔法と異常事態?

「さてさて、それじゃあ今夜はどうするかな?」


あの後体に戻った俺は前回の失敗を犯さないためにも何もせず、何も言葉を発さず肉体的にも精神的にも二度寝に該当するであろう睡眠を貪った。

そして昼間は【鑑定】のスキルを使って部屋の物を延々と鑑定し続けたのだが、【鑑定】のスキルがLv.3から上がることはなかった。


「…それにしても自分の意思で抜けたらこんな状態になるのか…」


今夜は初めて自分の意思で自分の体から幽体離脱(仮)を行った。

その結果は成功。

無事に幽体離脱(仮)は成功して自分の大怪我をしている体からレッサーレイスとして出てきた。

そして俺の体は自分の意思で体から離れたからなのか、それとも意識がある内に体から離れたからなのか、半目になって起きてるのか起きてないのかわからない状態になってた。

…うん。まあ、大丈夫でしょ。

いつも幽体離脱(仮)をやっても何にも無いんだから大丈夫でしょ。


「今日は【鑑定】以外のスキルを試してみたいんだけど…」


ここで俺のスキルを思い出してみる。

そこで気づいた。

なんということだろう。

今の所俺が【鑑定】以外で試せるスキルが【魔力操作】、【浮遊】そして俺の固有スキルである【吸魂】だけなのである。

だけど【浮遊】は言葉に出さなくても常時発動するタイプのスキルみたいで俺がこの体になって浮いているのはこのスキルが理由だろう。

となると必然的にも【魔力操作】、【吸魂】の二択になるのだが【吸魂】はまあ、昨日も考えてたが魂が見たことないから却下。

となると必然的に【魔力操作】になる。

魔力があることはステータスで確認したから魔力があるのはわかるのだが、感じたことは一切ない。

小説とかでは体の血液の流れを感じたりして魔力の流れを感じているが、俺の体は現在はレッサーレイス。

幽霊に近い存在だから当然俺には血液なんてものはない。

だけどこの体になったから感じられるようになったのか本来心臓があるはずの場所に何か感じたことのないエネルギーのような物を感じる。

これが魔力だろうか?


「……ちょっと怖いけどやってみるか」


もしこれで魔力だったら今後魔法とかも使えるようになるかもしれないし、とりあえずはやってみよう。

そう思って俺はそのよくわからないエネルギーのようなものを左手の方へ動かすイメージをしてみた。

すると今まで特に変化がなかった左手が微かに光りだした。


「お、おお!す、すげえ!まじで魔力だったのかよ!」


心臓から手に向けて魔力だと思うエネルギーを動かしてみたら微かに光だしたからちょっと楽しくなっちゃったから左手から右手、右足から左足、さらにはまた左手へ魔力を流していく。


《【魔力操作】のスキルレベルが上がりました》


するとスキルのレベルアップのための経験値が貯まったのか【魔力操作】のスキルレベルが上がった。

ってことは心臓辺りの謎エネルギーが魔力ってことは確定か。

まあ、魔力を使うコツはわかった。そして、結論から言うとイメージは血液の流れで良かった。

なぜかと言うと今の俺は幽霊みたいな状態だけど普段は普通に生きている人間なんだから血液の流れをイメージするのは簡単だった。


「よしっ!次は魔法の練習でもするか!」


魔力を動かすことにも慣れたから魔力を使うであろう魔法を使えるか試して行こうと思う。

今度は風を出す練習をすることにする。

まずは掌を前に付き出してそよ風ぐらいの大きさの風をイメージして……


「……あれ?」


おかしいな。

頭の中では確かにそよ風ぐらいのイメージをしたはずなのに風が吹くことがなかった。


「…あっ魔力を流してなかった…」


風が起きなかったのはイメージすることに集中しすぎて魔力を流していなかった。

今度はしっかりと魔力を流して今度こそはちゃんとした風の魔法をイメージした。


「ウィンド!」


そう思い付いた言葉を唱えると掌から風がが吹き出てきた。

その風は病室のカーテンを揺らす。


『【風魔法Lv.1】を取得しました』


「うわぁー!!やべぇ!これ楽しいぃいいい!!!」


風の魔法は魔力の流れを止めることで風は止まった。

だけど俺は風魔法を取得したという通知すら気にならないぐらいテンションが上がってしまったからそのまま調子に乗ってとんでもないことを試してしまった。


「よっしゃあ!次は火の魔法だろ!」


そう言って俺は次に火をつけることにした。

しかしここで問題が発生する。

それは今の俺の体がレッサーレイスみたいになっていることだ。

俺の肉体は今そこに寝ていて今の体はレッサーレイスに近い幽霊になっている。

つまりレッサーレイスの特性に近くなっているということ。

俺の場合は幽霊とかのモンスターって人魂とかと一緒に登場するようなイメージがあった。

つまり明確にイメージしすぎたんだろう。

その結果…


「ファイア!」


俺の付き出した掌からはバスケットボールより一回り大きな炎の玉が出現した。


『【火魔法Lv.1】を取得しました』


「うおっ!?」


そして俺の浮遊していた位置も悪かったのだろう。

俺が浮遊していた位置は俺の体が寝ている所よりちょっと離れた部屋の中心辺り。

部屋の中心辺りの天井には火災報知器があった。

そして、風の魔法を使ったときにカーテンが揺れていたことから幽霊状態でも魔法は普通に影響する。

想像以上の大きさになった炎の玉は火災報知器の反応するぐらいの熱になってしまった。

すると何が起こるかと言うと…

ピーッ、ピーッ、ピーッ、という音が鳴り響き、火事が発生したことを告げていた。


「ヤバイヤバイヤバイ!!!」


直ぐに魔力を流すのをやめる。

すると魔力の供給が止まった炎の玉は消える。

そして俺には火災報知器を止めることはできない。

そう判断した俺はまた聞こえた通知を無視して直ぐに自分の体に戻る。


「はっ!」


そして体に戻り意識を取り戻すと部屋の外から誰かが走ってくる音が聞こえる。


「火災報知器がなっているのはここ!?」


「はい!ここです!ここから鳴っています!」


素早い夜勤であろう看護師さん達が消火器を持って俺の入院している病室に入ってくる。


「神山さんは!?」


確認の声が聞こえてくる。

そして仕切られてるカーテンを開けた病室に入ってきた看護師さんの内の一人と目が合う。


「大丈夫です!意識がありますしこっちに火元はありません!」


「火元は!?」


後から入ってきた看護師さん達が部屋を見ていくが火元はない。


「ありません!確認できません!」


「本当に!?」


「はい!確認できません!」


カーテンが開けられたから見れたが指示を出していた看護師のリーダーらしき人の困惑したような表情がみえる。


「………え?どういうことなの?」


その後、火元が確認できず誤報だと結論付けられたらしく誤報だったという放送が流れた後、俺は空いていた別の病室にベットに横になりながら運ばれ、なぜこんなことになったのか知らないか聞かれたが、本当のことを言うわけにもいかず寝ていたから気付かなくて火災報知器が鳴ってから起きたから何も知らないと嘘をついた。

俺が大怪我をしていたから動けるわけがないってことで俺の言っていることは直ぐに信じられ、新しく移された病室に来ていた看護師さんは直ぐに去っていった。


今回の出来事は対応した看護師さん達や病院にいる人達全員にとんでもない迷惑をかけてしまった…

………本当にすみませんでした………

とりあえず絶対に病院じゃ火やまだ使えるかわからないが水、光、雷とかの魔法が使えたら絶対に使わないと誓った。もう二度とあんな騒動を起こす訳にはいかないからね。

てか、本当に心が痛いです………

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