始まりの日
それは突然の出来事だった。
雪菜ちゃんと玲奈ちゃんが帰った後病室のベットで寝てしまっていた俺だったがなぜか急に目が覚めた。
最初はただ目覚めただけだと思ったから。
でも、違った。
目を開けたらそこは見覚えのある部屋で俺が入院している病室だった。
そして同時にありえない事も起きている。
まず、普通に体を起こせる。
これは事故の時の大怪我のせいで動くだけでとてつもない痛みが体中を襲っていたのになぜか今は痛みが体を襲うことなく普通に体を起こせている。
次に俺の体だ。
体には包帯が巻かれて足は吊られて腕は固定されてたはずだ。
それが今は包帯なんてどこにも巻かれてないし、足は普通に動くし腕も動かせる。
「どういうことだ、これは…」
俺は自分の体を触りながら首を動かし周りを見渡した。
そこにはありえない者が映っていた。
…俺の後ろに俺がいた。
「はっ!?はぁぁぁぁあああ!?」
俺のいる病室に、少なくとも俺の寝ていたベッドの近くに鏡なんて物はない。
つまり、いま俺の目に映し出されているのは間違いなく鏡に映っている俺とかではなく現実の物だということだ。
それを表すかのように俺?はベッドの上で横になっていて体には包帯が巻かれていて足は吊られて、腕は固定されている。
まさしく寝てしまう前に見ていた俺の状態だ。
「ど、どういうことなんだよ!!」
取り乱してしまった俺は俺?に手を伸ばして俺?の体に触れようとする。
だけどその伸ばした手は俺?の体に触れることなくすり抜けてしまった。
「は!?なんでだよ!?なんで触れないんだよ!?」
俺は慌ててもう一度今度は両手で俺?の体に触れるように伸ばす。
しかし結果は同じだった。
いくら手を伸ばそうとしても俺の手は俺?の体に触れられずにそのまま通り過ぎてしまうのだ。
だが不思議な事に俺の腕や手に感触はある。
なのに俺の目に見える俺?の体は確かにそこにあるのになぜ触れることが出来ないのか…… 俺は必死になって俺?の体を触ろうとするが全く触れることが出来なかった。
「どういうことなんだよ!」
自暴自棄になってしまった俺は自分の体に体当たりをする。
するとどうだろう。
さっきまでは俺?の体が見えていたのに今度は違うものが見えた。
それは見覚えのある病室の天井だった。
「え?」
訳がわからなかった。
今目の前にあったはずの俺?の姿が消えて今度は病室の天井が見えるようになったからだ。
なんでかわからないけど、ただ一つ言えることはあれは夢なんかじゃないということだけだった。
「なんだった゛んだよ゛ざっぎのは………って゛、いだだだだだっ!」
つい、さっきみたいに体を動かそうとしたら
全身に強い激痛が走る。
そしてそれと同時に俺はさっきまでの動けていた謎の状態じゃなくて大怪我をしている状態に戻っていた。
そんな状態でまたさっきの用に動けるわけもなく、結局俺は再び眠りについてしまうしかなかった。
次に目が覚めた時にはさっきまでの不思議な出来事は全部忘れてないかなという淡い期待を抱きながら………
だけど残念なことにそんなことはあるはずもなく次に起きたときにはしっかりと覚えていた。
その後担当医の先生にも相談したが冗談を良く言う先生だったから最初は
…冗談だよね?
まあ、乗用車に引かれるような事があったんだから変な夢を見てもおかしくないって言われたんだけどね。
だけど、俺はハッキリと覚えてる。
あれは絶対に夢じゃないって言えるくらいリアリティがあったし、すり抜けてたのに感触があったのを忘れられない。
それにこれだけは言える。
あれは………あの時見えていた俺の体は確実に俺のものだった。
…あれは一体何だったんだろう…?
その事がわかるのはその日また寝てからだった。
「またか…」
また夜中に起きてしまった。
そしてまた俺の体が見えてますと……
「本当にどうなってんだよ…」
さすがに1日中考えたらこんな状況でも冷静にもなれる。
それで1日中考えてた結論だけど…多分幽体離脱に近いものだと思う。
まあ、わからないから幽体離脱(仮)と呼んでおこう。
だけど俺はこの幽体離脱(仮)の状態では通り抜ける事ができても空を自由に飛ぶことができない。
地面に触れないくらいに浮かぶくらいだ。
「……なんでこうなった……」
まあ、この幽体離脱(仮)について考えられる可能性は2つ。
1つは先生の話によると死にかけてたらしいからその時の影響。
こればっかりはどうしようもできない。
ワンチャン先生にいえば何か案を出してくれるかもしれないけど現時点では俺にできることはない。
そして、もう1つは神様的な存在の仕業。
……うん、我ながら厨二っぽい発想だな。
確かになろう系とかでよくあるトラック転生もどきはしたけどこうして俺は生きてるし神様にも会ったことなんてない。
だけどね、試してみたくなってしまうのが男の性というものなのだよ。
「スッテ~タスッ!………………へ?」
………なんか出た。
「うぉおおおお!!まじで出た!?」
いや、マジで出てきた。
まあ、一応確認しとこう。
まずは目を閉じて目頭をモミモミと。
それで確認…あるな。
次はほっぺをつねる。
あ、幽体離脱(仮)の時は痛みは感じないのかな?痛くない。
それでまたまた確認…あるね。
つまり、これは確定だ。
俺の今の幽体離脱(仮)をしてる状態は何らかのファンタジー的な力が働いてるってことだ。
まあ、これが現実だとわかったんで、お楽しみの俺のステータスを確認しましょうかい。
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名前:神山 空
性別:男
年齢:16歳
種族:人間Lv.16/レッサーレイスLv.1
職業:学生
体力:160/240 魔力:110/110
攻撃:26
防御:20
俊敏:36
器用:46
知力:79
幸運:46
所持SP100
魔法スキル:なし
取得スキル:【暗記Lv.4】【速読Lv.2】【柔術Lv.1】
種族スキル:【魔力操作Lv.1】【魔力増加Lv.1】【浮遊Lv.1】
職業スキル:【知力強化Lv.2】
固有スキル:【吸魂Lv.1】
称号なし
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これは…どういうことだ…
俺、人間だよな?なんでレッサーレイスなんてものになってんの?
…え?………ゑ?
《???side》
『適合体ガステータスヲ確認シマシタ』
『最適ト判断。適合体へアクション。メッセージヲオクリマス』
『………メッセージ送信完了』
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