真実の愛に目覚めたと第三王子に婚約解消された私を救ってくれたのは。

克全

第1章

第1話:婚約破棄追放

「アグネス、私は真実の愛に目覚めたのだ。

 だからこそ、アグネス、お前の悪辣な性格がよく分かった。

 王子である私の婚約者の立場を悪用して、多くの貴族に無理難題を言った。

 心優しいジェーンを虐め、心身を傷つけた。

 そのような悪辣非道な女を私の婚約者にはしていられない。

 婚約を破棄して徹底的に今まで犯してきた悪事を調べる。

 近衛騎士、この者を牢屋に放り込め」


 まだこの国の近衛騎士は腐りきっていないようです。

 王子の命令にもかかわらず、私を捕らえるのを躊躇しています。

 では牢屋に入れられるまでの間、今まで我慢してきた事を言わせてもらいます。


「殿下、ヘンリー殿下、それはあまりに酷い言い掛かりでございます。

 私には何を言われているのか全く分かりません。

 殿下の腕に縋りついているジェーン嬢を虐めた覚えなどありません。

 他家の貴族の方々の無理難題を言った覚えもありません。

 それに伯爵令嬢である私を牢屋に入れるなど非道過ぎます」


「黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、この悪女が。

 ここにいる貴族の全員がお前の悪事を証言しているのだ。

 お前のような悪女に伯爵令嬢の礼を守る必要などない」


「まさか、ここまで酷い扱いを受けるとは思っていませんでした。

 我がデヴォン伯爵家は、これまでヘンリー王子のために、伯爵家を傾けるほどの支援をしてきたのに、罪を捏造するとは酷過ぎます。

 確かに、領民を搾取するだけでなく、違法な行為までして金を稼ぐ、ジェーン嬢の実家程は支援できませんでした。

 婚前交渉も断固として拒否してきました」


「黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、そのような言い訳など聞かぬ。

 私はお前の家に支援してもらった覚えなど一切ない。

 さっさとこの悪女を捕らえて牢屋にぶち込め、近衛騎士。

 いう事を聞かなければ人質に取っている家族を殺すぞ、さっさとやれ」


 本当に腐り切った奴ですね。

 むしろこのような腐った男と結婚しなくてすんでよかったです。

  

「いいえ黙りません、ここまで恥をかかされた以上、今まで我慢してきた事を全て言わせていただきます、ヘンリー王子。

 これまでの事から、婚約解消される可能性は考えていました。

 婚約解消の賠償金を、評判の悪いヘンリー王子から貰えるとは思っていませんでしたが、少なくともこれまで支援してきたお金くらいは返してくれると思っていましたのに、そのお金を惜しんで私に罪を着せようなんて、酷過ぎます。

 兄君達を差し置いて王位に就こうとする王子が、このような不義不仁な行いをしてもいいと思っているのですか。

 それで真っ当な貴族や騎士が忠誠を尽くしてくれると思っているのですか」


「アグネス嬢、もう大人しくしてくださいませんか。

 自分達もやりたくてやっているわけではありませんが、家族を人質に取られていて仕方がないのです。

 余りに許し難い事が行われそうなら、自決用の短剣を差し入れします。

 どうか伯爵令嬢に相応しい態度をとってください」


「分かりました、もうどうしようもありませんね。

 恥をかかされる前に短剣を差し入れてくださいね」

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