愛し方も愛され方も知らない僕達は歪なこれを愛と呼んだ

ましろ。

第1話  煙たい夜

いびつ

否、これは愛だ。




暗いワンルームのベランダの戸を開け外に出る。

バイクと車の音が騒がしく鳴り続ける。


「どうしたの」


眠れずに煙草の煙を吐き出す僕の気配で起きたのか、その女性は声をかけてくる。


「何でもない、外が騒がしかったから」


「ふーん。そういう時あるよね

煙草、私にもちょうだい」


「ん。ライター中に入ってるから」


僕は2、3本しか入っていない煙草の箱をその女性に手渡す。


頭が痛い。

確か昨日は友人と居酒屋で飲んで、、

その後から記憶がない。

この女性はきっとそういうことなんだろう

誰ですか?なんてタブーはおかさない。



「ねぇ。」


「ん。」


「覚えてないでしょ?」


「何が?」


「何があったかとか」


「いや、半々ってところかな。」

正直全く覚えていないが

相当酔っていたのだろうから、全部覚えているというのも違和感というものだ。



「だと思った。

でも、貴方のことも別に嫌じゃない」


「奇遇だね。僕も君がいる空間は不思議と自然な気がしたんだ。」


「それ

他の人にも言ってるでしょ」


「そんなことない。

それは君の方こそだろう?」


「まぁどっちでもいいけど」


「まぁどっちでもいいね」


まるで淡々と決められたセリフを読んでいるかのように、その会話に感情は無かった。


「君は寂しいの?」


「そんなもの分からないわ。貴方こそ寂しさを埋めているの?」


「寂しい気持ちも確かにあるけど。

堕ちていく様が楽なんだよ。」


「なにそれ、変な人」


「それは多分お互い様。

変な人ついでに名前、聞かせて。」


かすみあまり気に入ってないの。

貴方は?」


響也きょうや

苗字は?」


「私達に苗字なんて必要?」


「それもそうか。」


無気力で煙たい夜がゆっくりと過ぎる。


身体を重ね合わせる。

何かになりたいわけではない

何かを否定するかのように



僕達2人の関係を運ぶかのように

夏の終わりの生ぬるい風が

ゆるりとシーツをなびかせた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る