プロローグ
冷たい
最初は
床にこぼれたスープを食べた
私の名はオリヴィア・ベル・アーヴァイン。
国王の
だがいまは国の宝である聖女を毒殺しようとした罪で
何度も
(どうして私がこんな目に
何の意味もない人生だった。利用されるがまま苦しみ続け、幸せなことなど何ひとつない
父は私の存在を最後まで無視していた。婚約者は私を捨てたうえ、罪人だと
友もいない、
(神よ──あなたを深く
孤独の中、最後まで苦痛ばかりを味わいながら、私は十六年の
〇 〇 〇
ふと気づいたときには、温かな場所にいた。
そして私の前には、見覚えのない少年が立っていた。
きれいな子だ。
「そう、僕はデミウル。君たち人間が言うところの、神だ」
少年の声は、言葉は、聖歌のように清らかで
デミウル。それは、この世界の創造神の
天地を
そこまで考え、ハッとした。どうして私は生きているのだろう。あの牢獄塔で、毒を盛られ死んだはずなのに。形容しがたいほどの苦しみを、私は
「そうだよ。君は死んだ」
思わず顔を上げると、少年──デミウルは
「……やはり、私は死んだのですね。では、ここは天の国でしょうか」
「いや。君は天には
デミウルの返答に、私は失望を
「そう、ですよね……。当然です。私のような罪人が、天になど行けるわけがありません」
「待って待って。君は天には行かないけど、地獄にも行かないよ。君はとても苦しんだんだろう? 僕を恨む声が届いたくらいだから、相当だったんだろうねぇ」
神にとっては、ただの人間ひとりの生き死になど
「だいたい、君が何をしたっていうんだろうね。確かに君は聖女のお茶に毒を入れたさ。でもそれは
「どうしてそれを……」
「それなのに苦しんで死んだうえ、誰にも悲しんでもらえないなんてあんまりじゃないか。いくら悪役
悪役令嬢とは、もしかしなくても私のことだろうか。
確かに聖女や彼女を守る人たちから見れば、
「誤解しないでほしいんだけど、別に僕が君を苦しめたわけじゃないんだよ。君の
それは……結局のところ、呼び寄せた神のせいなのではないだろうか。
私はそう思ったが、デミウルはその考えにはまるで至らない様子で続ける。
「僕のせいじゃないのに恨まれるのも気分が悪いし、やっぱり可哀想だし、君の魂を救うことにしたんだ」
「魂を、救う……?」
「僕は慈悲深い神だからね。君に幸せになる機会を
デミウルがあまりに
罪悪感の
恨みと
神に文句など言ったところでムダだ。それならば割り切るしかない。望みを
「では……私は二度と、毒で苦しんで死にたくはありません」
「うんうん。毒殺は苦しいよねぇ。いいよ。それから?」
「それから……」
自分を
なぜ、あんな仕打ちを受けなければならなかったのだろう。私はただ──。
「ただ……生きたいです。
「うん。いいよー」
あっさりと、それはもう実にあっさりとデミウルは
両手をパッと広げ、にこにこと微笑む創造神に、私は自分でお願いしたにもかかわらず「え。い、いいんですか?」と
「もちろんいいよ、それくらい。君はとても
「はあ……いえ、そんな。私など──」
「そんな君には、唯一無二の知識と力を与えよう。じゃあそういうことで!」
そういうことで? とは、どういうことで?
最後に見たデミウルは、とても
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