アルプトラムⅠ ―七色眼鏡―


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―……と……いと…


 どこか遠くで声がする。

 ぎちぎちと目蓋――カメラの保護シールドを無理やりこじ開ける。


「大丈夫、エイト?」

 カメラがピントを絞る。視界いっぱいにサナの心配げな顔がこちらを覗き込んでいた。

「サ、ナ……?」

「よかったぁ……」

「僕はどうし、たんだ?」

 その寝起きのような覇気のない言葉に、彼女はぷくりと頬をふくらませる。

「いきなりエイトが倒れたから、ほんっとに心配したのよ」


〘■■■■■■■ ■■■■■■■■■〙


 僕は、彼女に言わなければならない。

「君は……外の世界を見てみたい?」


「いきなりどうしたの?」

「いいから答えて」

 やんわりと彼女の答えをうながす。今ここで訊かなければ。

「………外には、何があるの?」

 透き通った瞳が問い返す。

 しかし僕は口をつぐんでしまう。やはりこれは……。


 彼女は目を伏せて、精一杯の言葉を絞り出す。

「きっと、外にはたくさん人がいるんでしょう? そのなかの誰かが本当のママとパパなら、私は………私のママとパパに会ってみたい」

「…………」

「わたしは、外の世界を見てみたい」

 無言の僕に、それでも彼女はきっぱりと告げた。それは彼女の"夢"だった。

 例えそれが、彼女を不幸にする夢だったとしても―――■■ ■


〘■■■■■■■■■■■■■〙


 僕はゆっくりと彼女の前にひざまづく。

「……じゃあ、目を閉じて」

 おもむろに彼女の額に手を当てる。


―――メラトニンの分泌を停止


 世界を包む闇が揺らぎ、ゆっくりと人間に計算し尽くされた夢がほどけていく。

 これですべてが終わる。もうこれで迷わな■。


「エイト……?」

 彼女の不安げな声が歪んだ世界でこだまする。

「大丈夫」

 僕は、震える小さな体を抱え込んだ。


「もう夢は見なくていい」


 君には夢があるのだから。


 君は■■■■■■■


 僕は彼女の瞼をそっと閉じ、自身の電源を落とした。

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