策士策に溺れる <稀代の策士>

絶坊主

第1話

数か月前の出来事。


嫁さんが手術の為、10日間入院する事になった。その10日間シングルファーザー生活。


初日、二人の子供(18歳の男の子、15歳の女の子)に喜んでもらおうと、普段めったに買わないステーキ肉を買うことにした。子供たちは相変わらず部屋に籠り携帯をいじっている。


私自身料理が嫌いじゃないので、たまに作ったりしていた。1枚2千円くらいのステーキ肉だったので、そのまま焼いても十分おいしいだろう。しかし、少しでもおいしく食べてもらいたかった。




“肉を柔らかくする方法”




ネットで見ると、いくつか方法があった。その中の一つ。玉ねぎのすりおろしに肉を漬けるという方法。


私は冷蔵庫から一番大きな玉ねぎを選び、すりおろした。3枚のステーキ肉を漬ける容器がなかったので、10㎝くらいの等分切りにした。そして、大きなボールに肉と玉ねぎのすりおろしを投入。よく揉み込み、冷蔵庫でしばらく寝かす事に。時間にして一時間くらい漬けただろうか。


ただでさえ柔らかい肉を更に裏技を駆使して、もうなんやったら、口ん中入れた瞬間、溶けるんちゃうかと。子供たちの驚く顔が目に浮かぶ。


子供のようにワクワクしていた私。


大きめのフライパンにボールの中身を全て投入。大きな玉ねぎだったので、すりおろしは結構な量&汁気。そして等分に切った3枚分のステーキ肉。









ドボドボドボ~・・・









お、俺、作ろうとしてんのステーキよな?


ま、ま、ま~焼いてるうちに汁気も蒸発するやろうし、多少汁気が残っていてもソースとして使えばエエか。何とか自分を落ち着かせ強火で点火。








グツグツ・・・グツグツ・・







しばらくすると汁気たっぷりのすりおろし玉ねぎが温まってきた。


お、俺、作ろうとしてんのステーキよな?


一抹の不安がよぎる。









グツグツ・・・グツグツ・・








思いの外、すりおろし玉ねぎは蒸発しなかった。


お、お、俺、作ろうとしてんのステーキよな?


火はMAXで強火。








グツグツ・・・グツグツ・・







あ、アカン!これ、煮込み料理になってるやん!


業を煮やした私は、別のフライパンを出して油をひいた。菜箸で一切れ、二切れとステーキ肉を次々投入。なんとか焼き目を付けて皿に盛った。


付け合わせのポテトと、娘が作ってくれたアボカドサラダ。それと、ほぼ煮込んだステーキ肉を盛り付けた。素材が良かったからか、子供たちも喜んでステーキと思って食べてくれた。




『策士策に溺れる』




何事も程々にってか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

策士策に溺れる <稀代の策士> 絶坊主 @zetubouzu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ