令和の銭形平次

絶坊主

第1話

ひそかに私の逆両替機と化しているスーパーのセルフレジ。どういう事かというと、私はアイスやらチョコやらのお菓子が好きで食後によく食べる。



で、勤め先付近のコンビニやスーパーでそれらを買っている。すると、消費税などで1円玉、5円玉、10円玉などがたまってくる。



それらを有人のレジ でチマチマ支払うのは恥ずかしい。なので、一旦、勤め先の自分の机の引き出しに無造作に貯めていた。そして、ある程度貯まったらポケットに1円玉、5円玉、10円玉をポケットに忍ばせセルフレジで支払うようにしている。ポケットにパンパンだった小銭が100円玉数枚で返却された時の爽快感ったらない。



その日も、ズボンがズリ落ちそうなくらいの小銭をポケットに忍ばせお買い物。アイス1点336円也をセルフレジで精算。



若干の恥ずかしさもあり、元ボクサーという特性をいかし、スピードアップして小銭を投入していく。さながら小刻みなジャブの如く。



私がここのセルフレジを気に入っているのは、他のセルフレジはだいたい自分で1枚1枚いちいち投入していかなければならない。しかし、この店のセルフレジは小銭の投入口が蟻地獄状、即ち、すり鉢状になっている為、握りしめた小銭をすり鉢状の投入口にガッサーーっと入れるだけ。



すると、おもしろいように投入口に吸い込まれていく。



その様を見ていると、えもいわれぬ爽快感を感じる。おまけにそれらが100円玉数枚で返却されようものなら一粒で2度おいしい的な多幸感を得られる。



そう言ってる間にも、どんどん吸い込まれている。ポケットの残が、あともう一握りとなったところで・・・異変が。



“係員をお呼び下さい”



レジの画面が今まで見た事もないまっかっかになり、くだんの文言が表示され点滅している。



「お客様。どうなされましたか?」



セルフレジ担当の店員さんが異変を察知し私の元に。



「あ、ちょっと小銭を入れていたら、詰まったみたいで・・・」



やましさ200%の私は、まさか大量の小銭を入れていたら・・とは言えず、ちょっとの小銭とか小ウソをついた。嫌な予感しかしなかった。



店員さんがマスターキーを使ってレジの内部を開ける。



チャリン、チャリン、チャリン~・・・



♪チャッチャラ~チャラ~お~と~こ~だったら~1つにか~け~る~♪



お前は銭形平次かってくらいの無数の1円玉、5円玉、10円玉たちが脱兎の如く散り散りに・・・



回りのお客さんも何事?みたいな顔をして私の方を見ていた。



店員さん、私、そして、この世に神はおわしまします、善意の塊のようなお客様。皆が私の持参した小銭たちを拾ってくれた。



やましさ200%から恥ずかしさ200%になった私の顔は真っ赤っか


なんとか全部回収し終わり、ほっとした私。



「お客様、9円お持ちじゃないですか?」



な、な、なんと、あれだけの小銭を入れときながら、9円足りない!



ポケットをゴソゴソしている私を、まだ持っとんのかい‼みたいな店員さんの視線が突き刺さる。私は、恥ずかしさのご神体と化して1円玉9枚を店員さんに手渡した。



何事もほどほどが一番‼

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令和の銭形平次 絶坊主 @zetubouzu

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