第9話 魔王躍進

「レーダーに感あり、魔王様転生者です」


闇の魔王はレーダーをそっと覗き込んだ。


「転生者は早めに潰しておかないとな」


王座の間に新たな魔族が入ってきた。

「魔王様、また新たな勇者現れました、東の都に3名です」


闇の魔王はゆっくりと王座から立ち上がり今入ってきた魔族の方を向き直り、質問をした。

「どの程度の勇者か?」


Lv60前後の者1名 他は50レベル代と30レベル代と思われます。東の都と言えば魔王城の手前のもとは人間たちの領土だった場所だ。

「もうじき魔王城までやってくるな。しかし、その程度のレベルで我を倒そうなどと愚かしいことよ」


しかしながら、やはりそこまではたどり着くだけの実力もあるのだろう。東の都に幹部を7名送る。最悪の場合には我が魔王城にて迎え撃つが、おそらくその必要もないだろう。


闇の魔王やその幹部を相手に勇者が三人、そのパーティーメンバーを入れても多く見積もっても20人程度だろう。

それらが、レベル100を軽く超える幹部たちにかなうとは到底思えない。

「しかしよほどの武器や勝てる算段があってのことかもしれない。決して油断はするな。幹部は勇者一人につき一人ずつ姿を現し、残りは闇に潜み戦いが始まってから陰から勇者たちを討つのだ」


「我は転生者の方へ行く」


「はっ、御意に」

指示を受けた魔王軍の幹部と思しき者たちはすぐさま行動を開始した。


「他の者はいつものようになわばりを守れ、そして人間を殺し、通りかかった勇者に勝てそうならどんどん殺せ、人類を駆逐するのだ」


「念のため魔王城の罠の数を2倍にしておけ」

闇の魔王はそういいながら王座の間から消え去り、転生者のいる村へと向かったのだった。


魔王単独でも強者、もちろん幹部も多く当然強い。しかしそれでもなお、油断はしない。人類にとってかなり厄介な強敵だ。


闇の魔王がいる世界の人間たちの領地の北側の辺境の村にやってきた魔王は、転生レーダーを使って早速、転生者を探した。


村の中でもさらに北側の小さな家から反応がある。魔王はその家へと浮遊して向かった。


ドアを開け家の中へと侵入した魔王は、

「きゃー」

不審な来訪者に驚き悲鳴を上げた母親らしき人物に爪を伸ばして一瞬でその心臓を貫いた。

ドサ、抱きかかえられていた赤子とともに地面に倒れ込んだ。


魔王はその赤子の片手をつかんで持ち上げると転生レーダーに照らし合わせて間違いがないことを確認した。


「ディスペル」

魔王は赤子に魔法解除の魔法を使った。もし赤子に何かの加護がかかっていればその魔法に反応してディスペルが発動したのだが、今回は何も起こらなかった。

この赤子の転生者には加護がかかっていない。赤子の転生者の中でも程度の低い者のようだ。


そして魔王は闇の力で赤子を取り囲むと、球体めいた力が赤子を宙に浮かせた。

「名も知らぬ転生者よ、死ぬがよい」

魔王は呪文を唱えた。


「地獄の炎よ」


ゴウッ


赤黒い炎が赤ん坊の体を包み一瞬で赤子を焼き殺した。

「今回は雑魚だったようだな」

赤子と言えど転生者は油断はできない。身の危険を感じて逃げ出そうとするものや、たまには戦い挑んでくるものもいる。もちろん、そいつらはその辺の冒険者よりもはるかに強いのだが、さすがに生まれたての赤ん坊はレベルが低い。場合によっては加護で魔法を跳ね返され痛手を負うこともあるかもしれない。闇の魔王は、油断なく転生者をしっかりと殺したのだった。


「魔王レーザー」

ドゥッ

魔王レーザーはすべてを貫き焼失させる。


赤ん坊んの亡骸に命中してその亡骸を完全に消滅させた。ついでに隣の部屋から異変を察知してやってきた父親も一緒に心臓から頭部へと魔王レーザーを食らって命を落とした。


「終わりだな」

魔王は一仕事を終えたが、それでもまだ油断はしない。双子だったり替え玉だったりする可能性を考慮して、これから村全体を焼くのだ。


魔王は家の屋根を突き破り、村全体が見える位置に浮遊した。


魔王が手をかざすと村の周囲に赤黒い炎が輪を作った。誰も逃がさないためだ。転生者の家が燃え盛っている。それを見て近所の人間たちが家から出てきて騒いでいる。


「業火よ」


魔王は村全体を包む炎の柱を発生させた。村人たちは全員あっと言う間に焼けて死んだ。


魔王はその様子を見て、まだ生きている者がいないかを確かめている。闇の魔王は誰も生き残りがいないことを確認すると、最後に転生レーダーをもう一度確認して姿を消した。


こうしてこの日、魔王は7の村を回り7人の転生者を死亡させた。


「魔王様、西の軍より報告です。本日は12名の勇者と、33名の勇者候補を始末しました。幹部の皆様もご健在のご様子。大勝です」


「西も大勝か、東も問題なく終わるだろう。こう、雑魚ばかりを相手にしていてはな」

魔王は当然だという顔をした。

「よい。城へと戻るぞ」


東の都までやってきていた勇者たちも、幹部たちの見事な連携によって、ほとんどなすすべなく死んでしまった。


最終的にこの日、闇の魔王軍によって死亡したのは転生者12名、勇者24名、勇者候補56名、その他3718人だった。


焼かれた村や町は102であった。闇の魔王軍はまた領土を広げた。こんなことが毎日起こるのだ。それがこの世界の魔王にとってそして人々にとっての日常なのだ。

恐怖と死の日々である。


「フハハハハ、人間どもよ、闇の力を前に恐れおののくがよい。人間の恐怖こそが我ら魔族の糧となるのだ、フハハハハ、フハハハハハハ、フハハハハハー」



「人間界の領土をだいぶ奪ったな、そろそろ、大規模な攻勢にでて、人類を滅亡させることを考え始めたほうがよいかもしれんな」

闇の魔王は転生レーダーだけでなく、転移レーダーなどがあれがもっと容易く人間を殺せるのにと思っていた。しかしないものは仕方がない。地道に人間たちを殺していくだけのこと。



「すべての魔人と幹部を集めよ。人間界蹂躙のための作戦会議を行う」



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