昭和のトンデモ先生
@MIO_na
第1話 自分の正義を押し付ける先生
こんにちは。昭和の伝道師、ミオナです。
昭和の時代は、良くも悪くも人のバリエーションが豊富でしたよね~。もちろん、学校の先生も例外ではありません、いやいや学校の先生こそバリエーションの宝庫だったかも…
昭和を伝道するその前に、少し自己紹介をさせてください。
私は昭和40年代生まれ、四国のいなかで生まれ育ったごく普通な女子でした。ただ、唯一普通でないところは、母が小学校1年生で、父が3年生で死んでしまったことです。うーん。アンラッキー人生…
それから私は父の母(ばあちゃん)に育ててもらうことになるんですけどね。まあその、決して美しい思い出とは言えない、大正おばあとの暮らしについては、また機会があればお話しするとして、今回の話は父が死んだところから始まります。
えー、父が病気で死にました。
なんなら3年前に母もシンデマス。
周りの大人たちから見れば、私は両親を亡くした不幸な小学生。
ただ、私の当時の記憶からすれば、そりゃもちろん悲しかったけど、父の入院はかなり長くて、小学生なりにそれなりの覚悟はできていたのです。それより周りからの特別扱いがつらいな…と感じていました。悲しいかな、母が死んだとき経験済みでしたんで。
そう、予感は的中です。
父が死んで1週間、私は学校を休みましたが、登校する前日に同じクラスのふみ子ちゃんから、衝撃の話を聞いてしまったのです
「昨日の学級会で、先生がね、“ミオナちゃんはお父さんが死んで、かわいそうだから、そのことを思い出させないようにしてあげましょう”って言うてたよ。それで、ミオナちゃんの前では”死ぬ“という言葉を使わないようにしましょうって、決まったよ」
え?なにそれ。なんなん?その決まり。
そんで、それ私に言うか?ふみ子ちゃんバカか?
私は途方に暮れちまいましたよ。
ああ学校に行きたくない
はい、次の日から地獄でした。
昭和の学校生活でも悪名高き「帰りの会」の”今日の悪かったこと“発表の時間でした。
クラスの女子が高々と手を挙げて発表してくれましたよ、
「はい!先生!!○○くんが、“行ってはいけない言葉”を使っていました。」
と。
“言ってはいけない言葉”って、おめーらヴォルデモートを恐れる魔法使いか!って今ならつっ込めるけど、当時はもちろんそうはいかない。
私は内容を知ってはいながら、ただへらへらとアホなふりしてやり過ごすしかないのです。
こっちは親死んでる上に明るくふるまっているのに、なんでこんなところで気を使わなきゃいけないんだろ。
でも、その時の私には、いやだと訴える選択肢はありませんでした。だって、みんな私のためだと信じていて、良いことをしてるって、めちゃくちゃ伝わってきたから。
善意の矛先って本当に恐ろしい。
次の日も、次の日も、帰りの会での地獄の時間はしばらく続きました。
「今日ぉ~、××くんがぁ、行ってはいけない言葉を使っていましたぁ~。反省してくださいぃ~」
と、お決まりの言い回しで。
「今日の昼休みに~、○○さんがぁ~、行ってはいけない言葉を言いましたぁ、謝ってください~」
え、誰に?誰に謝んの?
「△△くんがぁ~、死んだ…あっ、行ってはいけない言葉を言ってました~」
あっ!って…バレバレやん。
こんな茶番が続けられ、私は無になるしかありませんでした。
いつまで続くんだろう、いつになったらみんな飽きるんだろう。
私が半ば諦めかけたころ、終焉は突然やってきました。
父が死んで3か月ほど経ったある日のこと。いつものように帰りの会で、“言ってはいけない攻撃”が始まった時、先生は言いました。
「もうこれはやめましょう。もういいです。」
ざわつく教室…
そして、先生は言い放ったのです!
「ミオナちゃんも知ってるよね、”言ってはいけない言葉“」
おいっ!先生、気がついとったんかい!!
ていうか、そりゃそうよな。
先生は私の気持ちを知っていながらクラスの運営を優先してたんだなって、思いました。
クラスのみんなが一斉に私に注目します。私は力なく頷くしかありません。
私は父が死んだ悲しさよりも、この担任の仕打ちが、今でもトラウマとして残っています。
死や悲しみは“言ってはいけない“悪いことだって。
今、私は聞いてみたい。
先生はこれで満足でしたか?
「ミオナちゃん、お父さんが死んで悲しかったね。いつでもつらいって言っていいからね」と、言ってくれるだけで良かった案件なんですけど。
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