キング・オブ・スキー【渡部暁斗 】

 連日の熱戦に湧く北京五輪も終盤戦……

 残っている種目がひとつひとつ減っていき、何となく寂しくなってきました。


 そろそろオリンピック以外のスポーツネタを探さなければ、と思い始めていたのですが、やってくれました!!


 ノルディック複合個人ラージヒル距離10キロ、銅メダル獲得、渡部暁斗選手!!


 この日は、女子ビッグエア村瀬心椛選手の銅メダルや、女子パシュート銀メダル、男子のビッグエアも大興奮の展開で、大いに盛り上がった一日でしたが、個人的にはやっぱり、渡部暁斗選手です!!


 何故か……

 実は彼と同じレースのスタートラインに立った事があるからなのです。


 と言っても、私がスキーのジャンプなんて出来る訳ありませんし、クロスカントリースキーをする訳でもありません。


 彼と同じレース……

 それはトレイルランニングと言う競技での話しです。


 今から何年か前、長野県で開催されたトレイルランニングのレースに招待選手として呼ばれていたのが、渡部暁斗選手でした。


 このレース、プロデューサーの方が、私のちょっとした知り合いでして、発足当初から、選手として、時にボランティアスタッフとして関わっていました。

 そんな思い入れのあるレースに招待選手として出場されたのが、渡部暁斗選手だったのです。


 トレイルランニングと言うのは、舗装されている道(ロード)ではなく不整地(トレイル)を走るランニングレースでして、殆どの場合、フィールドは山になります。

 昔は山岳マラソンなんて呼び方をされていました。要は山の中でマラソンをする、そんな感じです。(コースは登山道が使用されることが多いが、砂浜や沢、草原などがコースになる事もある)

 距離は10km程度の手頃なレースもあれば、長いレースになると100kmとか、500kmとか…… かなり過酷なものもあります。

 ちなみにチャンピオンディスタンスとされているのは100mile(160km)でして、日本ではUTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)と言う大会が有名です。富士山周辺の山々を、制限時間、約2日間で競うビッグレースで、海外の有力ランナーも多数出場します。


 ちなみに渡部暁斗選手が出場したのは10kmというショートカテゴリーでした。

 トレイルランニングの中では短い距離ですが、日頃からこの競技に取り組んでいる猛者達の中に割って入り、見事、優勝されていました。

 もちろん、私は彼の影すら踏む事ができません。

 私がクタクタでゴールしたとき、彼は既に着替えを済ませて、こざっぱりしていまして……


 やっぱりオリンピアンって凄い!!

 そんな事を思い知らされた出来事でした。


 そんな些細な関わりですが、やっぱり同じレースを走った選手が出場するとなると、応援にも俄然力が入る訳で……

 レース中盤、先頭を一人で引っ張っている時は、誰か代わってあげてよ…… と思わず声が出ましたし、ゴール直前のデッドヒートでは、言葉にならない呻き声がもれていたと思います。


 金メダルを目指していた中での銅メダルと言うのは、ご本人にとっては少し残念な結果なのかもしれませんが、今シーズンのW杯の成績からすると、最高の結果とも思える訳で、金と同じ価値がある銅メダルじゃないかと、私は思っています。

 金と同じ、と書いて銅、昔、誰かが言っていましたしね……


 ノルディック複合は、ジャンプという究極の瞬発力と、クロスカントリースキーと言う持久力、両方を兼ね備えていなければなりません。

 ヨーロッパではノルディック複合の王者を「キング・オブ・スキー」と呼ぶそうです。その持久力強化のために、渡部選手は日頃から山の中を走っていたのかもしれません。トレーニングの一環として走ったレースで優勝!? やっぱり凄いです。


 もしかしたら、また同じレースを走るチャンスがあるかも???

 そんな妄想を抱き、私もまたランニングを再開しようかなと思ったり、思わなかったり……


 そんな思い出を振り返りながら、観戦したノルディック複合でした。

 渡部選手には、団体戦がまだ残っているので、そちらも楽しみにしたいと思います。

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