常呂町って?【カーリング】

 北海道の東部、道東と呼ばれるエリアに常呂ところと言う小さな町があります。現在は北見市に統合されて、北見市常呂町となっています。

 映画シムソンズの舞台になっていて、映画の中で、「なーんにもない!」、と言われた場所……


 ってどんな

 なーんてダジャレが出てきそうなですが、私にとっては、とても良いなのです。


 その理由・・・

 ひとつは北海道にある巨大な湖、サロマ湖周辺を舞台にして毎年開催されるサロマ湖100kmウルトラマラソン、その栄光のゴール地点が、この常呂町だから……

 この大会はウルトラマラソン(フルマラソンの距離を越えるマラソンの事、100kmという距離がメジャー)の日本代表選手を決める権威ある大会で、数あるウルトラマラソンの中でも国内最大規模(定員4000名)のビッグレースなのです。


 実は私、このサロマ湖100kmウルトラマラソンに合計17回出場、うち16回完走していまして、ゴールである常呂町は、長い長い旅路の果て、終着点になっているのです。

 身体はボロボロ、全身痛いところだらけで、どこが痛いのか分からないほど傷ついている選手を温かく迎えてくれる町、いわば天国、それが常呂町なのです。

常呂へ行こう! は、ランニング仲間たちの合言葉にもなっていました。


 ちなみに私は17回目の出場時にリタイヤして、ウルトラマラソンを引退しました。余談ですが、その時の物語は、「さよならサロマ、また逢う日まで」、というエッセイに綴られています。


 話を元に戻して、このサロマ湖100kmウルトラマラソンには10回完走するとサロマンブルーという称号が与えられるのですが、その特典のひとつが足型のレリーフ。サロマンブルー達成者の足型が、ゴール地点である常呂町スポーツセンターに永久展示されるのです。(まるでハリウッドのチャイニーズ・シアターみたい?)


 そして私の足型、展示されています。他に何もない私の唯一の自慢です。

 だから常呂町は、第二の故郷と言っても過言ではありません。こちらには常呂町民の手形もあるので、町民と肩を並べたと言えなくも無い???

 虎は死んで皮を残し、人は死んで名を残す、と言いますが、スケールは非常に小さいですけど一応、名を残しました(^-^;


 と、長い前置きは置いといて…… 本題です!

 この常呂町、実は日本カーリングの聖地なんて呼ばれたりしています。


 何故か?

 実は日本カーリング界のトップ選手の多くが、この常呂町出身なのです。

 人口が五千人にも満たない小さい町なのに……


 常呂町では体育の授業でカーリングを習うそうです。さらに国内最大級のカーリング場があります。常呂中学、常呂高校は逸材の宝庫でして、高校生のチームは実力がトップクラス、優勝候補に挙げられるチームを脅かす程の存在で、日本選手権では台風の目になったりもします。

 ボーリングをした事が無い人はいても、カーリングをした事がない人は居ない、と言われているとか、いないとか…… そんな町なのです。


 そして、ロコ・ソラーレです!

 ロコ・ソラーレは常呂町をホームとするクラブチームで、チーム名の「ロコ」は、は、「ローカル」と「常呂っ子」、それにイタリア語で太陽を意味する「ソラーレ」が由来だそうです。

 ロコ・ソラーレはマリリンの愛称で親しまれていた美人カーラー(カーリングの選手)本橋麻里さんが立ち上げたチームです。

 結成当初は試行錯誤の連続で、色々と苦労されたようですが、今やワールドクラスの実力を兼ね備えておりまして、平昌五輪での銅メダルは記憶に新しいところですね。


 当然、今回もメダル候補! なのですが……

 オリンピック代表チームになるまでの道のりは、大変、険しいものでした。

 日本代表チームを決める試合で、大ピンチに追い込まれていたのです。


 ロコ・ソラーレを窮地に追い込んだのは、北海道銀行。

 若い頃の中山美穂に似ているとも言われる、吉村紗也香選手率いる北海道銀行が、常勝チーム、ロコ・ソラーレの前に立ちはだかります。

 ちなみに吉村紗也香選手も、常呂町出身です。


 先に3勝した方が日本代表になると言う代表決定戦で、北海道銀行が強烈な先制パンチを見舞います。なんと、ロコ・ソラーレに2連勝したのです。

 どちらの試合も一点差、僅差での勝利でした。


 これでロコ・ソラーレは1つも負けられないという状況に追い込まれます。

 残された道は3連戦、3連勝のみ…… もはや絶体絶命の大ピンチです。

 さらに追い討ちをかけたのが、負け方でした。

 接戦を繰り広げながら、勝負どころでミスをして試合を落とすという、チームの雰囲気をもっとも悪くする負け方を、二試合続けてしまいます。

 本来ならば、ここぞ、と言うところで集中力を発揮する、その勝負強さが持ち味だった筈なのに……


 チームに漂う重たい雰囲気、もう負けられないという状況……

 ロコ・ソラーレファンの私は、仕事も手につかないほど心配でした。

 まずは1つ勝ってくれ、1つ勝てば何かが変わる、そう祈っていました。

 でも、その1つ勝つ事が、途轍もなく大変な事の様に思えました。

 ロコ・ソラーレの視線は国内ではなく、世界へ向いていた筈なのに。


 世界へ……

 もしかしたらこの言葉が、チームを苦しめていたのかもしれません。

 (これは私の推測ですが)


 2戦2敗、絶体絶命の状況に追い込まれたロコ・ソラーレは、この状況を打破するために話し合いました。2戦目と、3戦目の間、わずかな時間に……


 内容はそんなに悪く無いよね

 じゃぁ、何が悪いんだろう?

 なんか、私達らしくないよね

 格好つけようとしてない?

 感情を押し殺して、格好つけてるよね

 そうじゃなかったじゃん、今までの私達ってさ

 嬉しいときは思い切り喜んで、悔しいときは悔しさを表に出して……

 私達は、格好つけようとしても、格好つかないんだよ

 だからさ、思いっきりやろうよ!

 そうだよ、思いっきり感情を出していこう

 そだね、たくさん声を掛け合おう

 思っている事を伝え合って、小さな運を拾っていこうよ

 小さな運をたくさん集めていこう!


 実際、こう言う会話だったかどうかは分かりません

 試合後のインタビューから切り抜いて、勝手に想像しました(^_^;)


 そして迎えた3戦目・・・

 明らかにチームの様子が変わります。

 大きな声を出し、ミスをして悔しがる選手を、励まし、成功したら、思い切り喜びを分かち合う。どんな状況になっても笑顔が溢れていました。

 最初は少し無理して大げさに笑っているな、と思える場面もありました。でも次第にロコ・ソラーレらしい自然な笑顔に変わっていきます。

 しっかりとしたお膳立てをして、決めるべきところをきっちり決める!

 3戦目を大差で勝ったロコ・ソラーレは、4戦目も連勝してタイに持ち込みました。これで2勝2敗、最終の5戦目、勝ったほうが日本代表チームとなる天下分け目の大一番です。


 ここまで来ると完全に、ロコ・ソラーレ勝利のムードが漂っていました。

 リードの吉田夕梨花が得意のウィックショットを決め、セカンドの鈴木夕湖は、ショットだけでなく力強いスイープでも貢献します。サードの吉田知那美は、抜群の笑顔でチームに明るさをもたらし、精度の高いショットでスキップへバトンを繋ぐ。

 そしてスキップの藤澤五月……

 2連敗したとき、彼女の顔色は冴えないものでした。いつもなら当たり前の様に決めていたショットが決まらず、彼女の不調がチームに暗い影を落としているようにも見えました。

 でも、カーリングは四人でする競技、彼女がショットするまでのストーンの配置や、展開、雰囲気が重要な事は言うまでもありません。勝てなかった2戦は、そこまでの展開がいつもと違っていたのだと思うのです。

 藤澤五月は蘇りました。決めるべきところをキッチリ決め、針の穴を通すような難しいショットも成功させます。


 ロコ・ソラーレ 8 vs 6 北海道銀行

 

 ロコ・ソラーレ勝利!

 点差以上の強さを魅せてくれた試合でした。これで日本代表です。

 あとは世界最終予選で3位以内に入れば、オリンピック出場決定という状況に!

 

 世界最終予選も決して簡単な戦いではありませんでした。

 絶世の美女・ミュアヘッド率いるスコットランド、平昌五輪銀メダル、メガネ先輩率いる韓国が控えているわけですから。

 しかし危機を乗り越え、本来の力を取り戻したロコ・ソラーレはへこたれません。

 底力を発揮したロコ・ソラーレは、宿敵韓国に競り勝って2位で通過、みごと北京五輪出場を決めます。


 団体競技と言うのは大抵の場合、選抜メンバーを集めてスペシャルチームを編成します。例えば野球の侍ジャパンとか、サッカーのA代表とか・・・

 でも、カーリングという競技は他の団体種目とは違って、チーム単位で代表を競い合います。例えるなら、侍ジャパンではなく、日本シリーズに優勝したスワローズが日本代表になるみたいな感じ・・・


 それはカーリングと言う競技が、個の能力の集結よりも、結束力が重要視されるからではないかと思うのです。

 ロコ・ソラーレの選手は、誰をとっても超一流、常呂町が生んだスーパースター!です。個の能力については、折り紙つき。

 その四人組が、ちょっとした感情の変化で、ストロングポイントだった筈の結束力にやや乱れが生じ、代表決定戦で苦戦を強いられました。

 でも、もう大丈夫!

 個の能力に、もともと強みだった結束力が戻ってくれば、怖いものなしです。


 さぁ北京五輪!!

 オリンピックに出場してくるチームはどこも強豪ばかりで、どこがメダルを獲得しても不思議ではないほど実力は拮抗しています。

 簡単にメダル獲得、なんて言える状況ではありませんが、今のロコ・ソラーレならば、いい戦いを繰り広げ、必ずメダル争いに食い込んでくれると信じています。

 テレビの前に釘つけになって応援したいと思います。


 私はウイスキーを飲みながら、ああじゃない、こうじゃないと呟きながらカーリングを観るのが大好きで、テレビ中継された試合は録画してでも、観ないと気がすまないタイプです。


 ちなみにカーリングという競技……

 見た目はレクリエーションゲームのように見えるかもしれませんが、見るのと、やるのとでは大違い。私は一度、体験させて頂きました。

 カーリングのとんでもない難しさ、途轍もないキツさに驚愕した記憶があります。

 ちなみに場所は常呂町、その時にコーチして下さったのは、日本チャンピオン、コンサドーレのスキップ、松村さんでした。


 カーリングのシートは45メートルもあります。

 勿論、シートの上は氷です。その上を、より良く滑るシューズを履いて、足を大きく前後に開き重心を沈めて滑りながら、遥彼方にある円の中にストーンを止めるなんて神業です。

 さらにストーンの距離を伸ばす為のスイープという動作(氷の上をデッキブラシみたいなので擦る)、滅茶苦茶キツイです。体験したからこそ分かるトップカ-ラーの凄さ、心より尊敬申し上げます。


 特にスイープという動作、お風呂の床を全力で擦ったら、十秒ほどで息が上がると思うのですが、それを1試合で何十回も繰り返す訳ですから…… 体力、使います。

 実際のところ、男子選手は上半身ムキムキですしね。

 もっとも私は、スイープする以前に、氷の上を転ばないように歩くだけで精一杯でしたが……(ストーンを追いかけるだけで四苦八苦)


 選手の表情がアップで映されるカーリング、その表情から選手心理を読み解いてみるのも良いかもしれませんね。

 さぁ、どんなドラマが観られるのか……


 スポーツっていいですねー!


 今晩はいよいよ開会式、いよいよ本格的な幕開けとなります。

 カーリング女子、ロコ・ソラーレの初戦は2月10日、対戦相手は世界ランク1位のスウェーデンです。がんばれ!ロコ・ソラーレ

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